第3話
真っ白い鴉は僕に言った。
言ったという表現が適切かは不明だが、僕はそれを確かに聞いたのだ。
「何かしらの飛び道具を用いて、墓守を殺した人間がいる」
「それは墓地を荒らすものと同等のことだ」
「人間の遊びで使う何かを使っているようだ」
「犯人を探さなくてもいい」
「墓地に向けて何かしらの悪行を成した痕跡を人間の目で見つけてくれないか」
「人間の法に照らして考えなくて良い」
「それを探して欲しい」
「相手を特定しなくてもいい」
「お前が不利になることはしないでいい」
「見つからなければそれでいい」
「頼まれてくれるか」
「見返りは何も無い」
「墓場を荒らした人間がいたのか知りたい」
何というか、単語を繋いだ様な言葉で真っ白い鴉は僕に告げた。
つまりは「墓地に向かって何かしらの悪戯をしている者がいるかもしれない。墓守の鴉がそれにより絶命している。その事実があったのか無かったのか、墓地に痕跡があるかどうか見てもらえないか」と言うことだと、僕は結論付けた。
僕は「わかった。いいよ」と答えた、と思う。
その後に目を覚ました時は猫と共に布団の中に居た。
ただ、僕の足の裏と寝巻きに来ていた服の尻の辺りに土と細かな石が着いていたのだ。
だから僕は、いつかの猫を探してもらったお返しに、引っ越す前に頼まれたことを実行しようと思った。まず、忘れない様に、すぐに手帳に書き留めた。現実か夢かはこの際、どうでも良いことで、ただ僕はあの日、どれだけ感謝をしたのかと言う思いを引っ越す前に、行動として返したいと思っていた。
◇続
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