第二話 本当の恋
白い天井が私の瞳に映りこむ。頭の中から白いモヤを振り払い、何が起きたのか思考する。記憶の断片を必死にかき集めて蘇ったモノとは……。
「はっ、私は確か、龍二なる男に告白されて……。いえ、あれは、夢よね。うん、悪夢に決まってますもの。だって私は……」
「おはよう、ハニー。お姫様のお目覚めだねっ」
「い、い、いやぁぁぁぁぁぁ」
私の悪夢はまだ続いていた。今まで、二度目も同じ人から告白されたことなどない。一度捨ててしまえば、その男はゴミのように活力を失うのだ。
それなのに……この男は二度目の告白してくる。しかも、あんな大勢の前で堂々と。こんな異常事態だから、私の心音はこんなにも激しくなっているのよ。
「落ち着いてくれよ、ハニー。僕だよ、キミの恋人、神城龍二だからねっ」
「お、落ち着いてますわよっ。それに、誰が恋人ですって。そもそも、私はアナタの告白なんて受け入れてませんわ」
「ふっ、神楽耶は照れ屋さんだなぁ」
このポジティブ全開男に私の心は乱れっぱなし。
もう少し強めに言わないと、龍二には伝わらないようね。それでしたら……。
「べ、別に照れてなんてませんわよ。ただ、その……ちょっとビックリしただけ、なんですから。か、勘違いしないでよねっ、私はアナタが……龍二となら少し付き合ってもいいかなって」
な、なんでよ。どうして、思ってるのと違うことを言ってしまうのよ。でも、そうね、確かに心の底ではそう思っていたのかもしれない。違う、そうではなくて、問題なのは私の力が効かないってことなのよ。
運命という言葉が、頭の片隅に浮かび上がる。魔性の力が効かない男、神城龍二。私は彼が何者なのか知りたくなっていた。
「やっと本音がでたね、ハニー。では、一緒に帰ろうか。ちゃんと家まで送るよ」
「う、うん……。お願い、します」
龍二の瞳を見た途端、私は言葉が浮かばなくなる。理由はまったく分からないし、当然、今までこんなことはなかった。
体全体が火照りだし、鼓動は激しさを増していく。
差し出された手を掴むと、私はエスコートされるように学校をあとにする。
「ハニーって不思議な人だよね。なんだか、一緒にいると安心するというか。ひょっとして、運命の人……かな。な〜んてねっ」
「わ、私はその、ううん、私も初めてでしたのよ? 二度も私に告白する人は、初めて見たのです」
「そうだったんだね。それじゃ、お互い運命に導かれたのかもね〜」
帰り道の会話はそれほど多くなかった。言い換えるなら、私があまり話せなかったのだ。
最初に会ったときはただの男。
二度目に見たときはよく分からない男。
三度目には……龍二のことが気になってしまった。
そして私はやっと理解したのだ。
理由は今のところ分からない。でも、魔性の力が効かないこの龍二という男に興味があり、しかも……恋に落ちたのだと。
「り、龍二、今日は送ってくれてありがとう。た、頼んだわけじゃないけど、その、嬉しかった、よ」
「ハニーのためなら、僕はどこへでも送るし、迎えにも行くからね。では、また明日迎えに来るから」
「お、お願いしま、す」
龍二の後ろ姿を眺めると、私の中で寂しさが支配し始める。心が締め付けられ苦しくなり、彼の姿が消えてもその方角をずっと眺めていた。
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