第一話 告白は突然に
入学式も無事終わり、私は自分の教室へと戻っていく。体育館にいくまで、着いてから、終わってからと、くだらない男たちから告白されたのは言うまでもない。
やっと終わったというのに、クラスの男子どもの視線といったら……醜すぎるわよ。まるで飢えたブタのように見えるわ。
「入学式、お疲れ様ですぅ〜。この一年間、担任をする宮原佳奈といいます。よろしくねぇ〜」
田舎だからなのか、教師の言葉に重みがない。まるで友だち感覚に思える。でも、肩が凝らなくていいと私はポジティブに考えた。
──ガラガラ。
「はぁ、はぁ、神城龍二、なんとか間に合いましたっ!」
「あのぉ〜、残念ながら……完全に遅刻なんですよぉ」
「甘いですよ、先生。この教室の時計は……時差で狂っているのです」
ドヤ顔を決める龍二に私は目が点となった。いや、驚いたのはそこではない。運命のように彼と同じクラスだったことだ。
よく分からない感情が全身を巡り、私の視線を龍二から逸らしてしまう。こんなことは、生まれて初めての経験。どうしていいのか、分からなかった。
「もぅ、そんなバカなこと言ってないで、自分の席に座ってくださぃ」
「わっかりました〜。って、僕の席はっと……」
私は机に伏せ龍二の視線から逃げようとする。
なぜ、逃げるのか。なぜ……だって私には魔性の力があり、男なんて道具程度の存在だったのに。
分からない、全然、分からない。考え込んでいると、龍二らしき足音が聞こえてくる。一歩、また一歩と……。このまま私の席を通過して欲しい。そう願いを込めたのに。
「あれ……。キミはひょっとして、神楽耶さん、ですよね? その艶やかな黒い髪、このような美しい人は他にいはいませんから」
「ひ、人違いです。私は月姫神楽耶なる人ではございません」
どうして嘘をついたんだろ。分からない、分からないけど、この男は私をおかしくする存在。だって、今の私は……心がこんなにも激しい音を奏でてるのよ。
決めたわ、そうよ、私はこの男と関わらないようにする。そうでないと私は……。
「か〜ぐやさんっ」
「ひゃっ!? な、何をするんですかっ」
いきなり耳元で囁くのは反則です。思わず顔をあげてしまいましたよ。
「やっぱり、神楽耶さんじゃないですか〜。同じクラスだったんですねっ」
「むぅ……。私はアナタなんて、知りま……」
えっ、何、いきなり私の両肩を掴むだなんて。しかも、なんなのよ、そんの真剣な眼差しは……。だめ、収まってよ私の心音、これ以上大きくならないでよ。
「え〜、コホン。神楽耶さん、ひとめぼれです。僕とお付き合いしてください。お願いします」
「は、はい……」
私は今なんて言いましたか。まさか、『はい』だなんて言うわけが……。違う、違うのよ、この龍二が真剣に頭を下げるから、つい、同調だけなのよ。
落ち着きなさい神楽耶。いつものように、男どもをゴミ扱いするのと同じ対応をするのよ。私にとって男など道端に生える雑草と同じなんだから。
「あ、これはそうではなくて、その、あの……」
「ありがとうございますっ。この龍二、命を賭けて神楽耶さんに尽くしますので」
ずるい、ずるいですわ。私の両手をいきなりつから強く掴んで……。これじゃ、もう、私どうしたらいいのか、分からないよ。
何かの爆発音が聞こえたのは覚えてる。床が目の前に近づいて、そこから私の記憶は完全に失われてしまった。
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