王都アズハールにて・13

「何を言う? この御方はもとより、我がアズハールの──」


 赤い光が、消えた。

 目で追いきれないほどの速度で左右の壁を交互に屈折し、気づいた時には顎に一撃が入っていた。視界が激しく揺れ、脳震盪を起こしてその場に倒れる。


「次は、あなた」


 亡霊のように立つその少女を、ライラは興味深そうに下から上へと眺めた。


「分が悪いようだ」


 床にアリーシャを降ろし、二、三歩さがる。両手を軽く振り、言わずともこれ以上抵抗するつもりはないとアピールした。

 少女はゆらゆらと近寄り、旅人と、姫を両肩に軽々と担いで──フッと消えた。


「行ってらっしゃいませ」


 ライラが恭しく礼をすると、視界の端で翠色の髪がぴくりと揺れる。置いていかれたのか、忘れられたのか。いずれにせよ、啖呵を切ったわりに哀れな賊だ。これでは格好もつかない。


 ライラは口角を上げた。


「さて、と──」

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