第76話:種を超えた架け橋(Side:ユーノ①)

 ――レイク・アスカーブ。


 初めて見たのは、たしかエビル・デーモンとの戦闘だ。

 私は幹部の一人として、魔界で映像を見ていた。

 当時も穏健派の意見を何度も伝えていたが、魔王の考えを改めることはできず、とうとう侵略が始まったのだ。

 悔しい気持ちで見ていたのを覚えている。

 レイクさんは何をするでもなく、佇んでいるだけで勝利してしまった。

 一目見てわかった。


 ――彼に勝てる者はいない。


 穏健派の仲間たちは理解していたが、魔王や過激派は愚かにも最後まで気づかなかった。

 全面的な戦いが起これば、人間と魔族双方に多大な犠牲が出かねない。

 しかも、人間側にはレイクさんがいる。

 下手したら我々は全滅するだろう。

 そう思った私は、さらに魔王の説得に乗り出した。

 その後も、レイクさんは過激派の魔族を何度も退けてくれた。



 彼の強さは桁違いだ。

 魔族が大掛かりな戦闘を仕掛ければ、今度こそ我々は全滅してしまう。

 和解どころか、魔王は三大魔卿を派遣した。

 このままではまずい。

 人間界に追放されたのを良い機会と捉え、私はレイクさんとの接触を試みた。

 依頼の予約をし、時を待った。

 順番が来るまでに魔王が本格的な侵略をしないか気が気でなかったが、魔王は三大魔卿の派遣を継続した。

 そして、全てレイクさんに倒された。



 実際に話してみてわかったことがある。

 レイクさんは強いだけではなく、大変に視野の広い方だった。

 たとえ私が魔族であっても、最後まできちんと話を聞いてくれた。

 魔界へ向かう方法を伝えると、転送魔法で行けると返された。

 そんなの無理だと思っていたが、レイクさんに不可能などないのだ。

 わずか一秒足らずで魔界へ到着。

 愚かな魔王の攻撃はまったく聞かず、あろうことか跳ね返される始末だった。

 たった一撃で再起不能にする。

 世界最強という言葉がピッタリのお方だ。


 ――人類も魔族も、願うは平和な世界……。


 種族を超えた和平。

 レイクさんと一緒なら、それは夢物語ではない。

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