第77話:最近、人間が面白い(三人称視点)

⦅おお、やはりあの人間が勝ったぞ! この賭けは私の勝ちだな!⦆

⦅仕方がない……もくろみが外れたか⦆

⦅まさか、魔王ですら負けるとは非常に興味深い人間だ⦆


 煌びやかな神殿の中に、数人の男女の声が響く。

 みな、己の賭けの結果に一喜一憂していた。


 ――天界。


 かつて、人間界を想像した神々が住んでいる世界。

 曇ることのない空が広がり、気温は常に温かい。

 人間の想像する天国のイメージにピッタリの世界がここだった。


⦅そういえば、あいつも天界の出身だったか⦆


 黒髪の男神が言う。

 戦いの神――アレス。

 人間で例えると、スラリとしているが筋肉質の優男だ。

 彼の言葉を聞くと、他の神々も思い出したように話し出した。


⦅ああ、そういえばそうか。すっかり忘れていた。元神が人間に無双するなんて情けない⦆

⦅追放されたのはずいぶんと前だったよな。三百年か……四百年か……⦆

⦅今はムノーと名乗っていたらしい。変な名前だと思ったが、あいつのセンスならおかしくないな⦆


 魔王もまた、天界の出身だった。

 過去に色々とやらかした結果、神々が作った牢獄の世界に追放された。

 そこで魔族を作り、自らを魔王と名乗っていた。

 仮にも、元神を破った人間。

 神々はレイク・アスカーブという人間に、強い興味を抱いていた。


⦅ねえ、ちょっかいを出してみましょうよ⦆


 ロングのブロンドヘアをなびかせながら告げたのは、同じく戦いの女神――アテナ。

 頭に乗せた冠が、陽光にキラリと輝いていた。

 彼女の言葉に、神々たちは各々の意見を出す。


⦅おっ、良い案だね。あれほど強い人間は他にいないよ。試しに遊んでみたいな⦆

⦅こら、人間界に干渉しないという掟を忘れたのか。俺たちはただ見守っているだけでいいんだ⦆

⦅とはいっても、やっぱり暇だわ。たまには息抜きもいいじゃないの⦆


 長らく暇を持て余してきた彼らにとって、レイクの存在は興味を惹きつけられてならなかった。

 神々が人間に興味を持つなど、長い歴史でも初めてのことだ。

 レイクは知らず知らずのうちに、新たな渦の中心になるのであった。

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