第36話:帰ってきてくれて良かった(Side:セレン①)
「どうも、セレンさん」
あの日、死んだと思っていたレイクさんが帰ってきました。
最初見たときは、信じられなかったです。
だって、Sランクダンジョンの<呪い迷宮>に行っていたのだから。
でも、ただ帰ってきただけではなかったですね。
「ダンジョンで会った子で、ミウって言います」
ミウさんという、とってもキレイなお嬢さんを連れて来ていました。
ダンジョンで会ったと言っていましたけど、そんなことありますかね。
「ほんとだ。何というか……前衛的な結婚指輪ですね。まさか、レイクさんがこんなに手が早い人だったとは……」
しかも、すでに結婚されているなんて……。
さすがの私も驚きましたよ。
レイクさんは、意外とやり手だったんですね。
「あとセレンさん。俺を傭兵として登録してくれませんか?」
レイクさんは、傭兵になりたかったんですか?
冒険者としても、十分に活躍できると思いますが。
私はレイクさんが傭兵になれるか心配でした。
かなりの実力がないと、なかなかなれませんから。
でも、それはムダな心配でしたね。
レイクさんは、驚くほど強くなっていたのです。
「じゃあ、セレンさん。このクエストお願いします」
いきなりマジックドラゴンのクエストを出してきたときは、ビックリしてしまいました。
「このクエストは、何人も失敗しています! 魔石鉱山だって、そもそも行くのが大変なんですよ! 二度と帰ってこれない、死の入り口なんて言われています!」
大声をあげたりして、すみませんでした。
ですが、わかってくださいね。
そのときは、レイクさんの実力を知らなかったのですから。
「これが俺の言ってる呪われた即死アイテムですよ。めっちゃカッコいいでしょう?」
<呪い迷宮>でゲットしたんですかね?
レイクさんは嬉しそうに、アイテムを見せてくれました。
どれもこれも、見たこともない物でした。
カッコいいというか、ちょっと怖い感じではありましたが。
全身が真っ黒で、不気味なオーラが出ていましたから。
「じゃあ、魔石鉱山への地図を渡します」
「いや、それには及びません」
それは地図を渡そうとしたときでした。
レイクさんは姿をいきなり消して、どこかに行ってしまいました。
ミウさんと一緒に。
たぶん転送魔法なんでしょうけど、ビックリしましたよ。
だって、魔法陣も書いてないし、呪文も詠唱してなかったじゃないですか。
最初は、ただのいたずらだと思ってしまいました。
転送魔法みたいな高度なものは、準備が大変ですから。
「セレンさん、マジックドラゴン倒してきました」
どうやら、レイクさんは想像以上に強くなっていたようです。
マジックドラゴンは、Aランクのとても強いモンスターなのに瞬殺なんて……。
長年受付嬢をやっていますが、そんな人は初めて見ました。
「まずは火を消さないと。【闇の魔導書】に何かないか!?」
〔そうね。雨降らしの魔法とかないかしら〕
ネオサラマンダーの封印が解かれたときは、もうダメかと思いました。
街が火の海に飲み込まれました。
名だたる冒険者たちが消火しようとしても、全く消えない。
これが地獄なのかと思ってました。
だけど、レイクさんは不思議な雨で、あっという間に鎮火してしまいました。
そして、あのネオサラマンダーを、一刀両断にしてしまうなんて……。
知らない間に、ものすごく強くなっていたんですね。
レイクさん、あなたは街の救世主です。
「みなさん、これから俺の家に避難していただきます! あそこの丘に見える家です!」
ネオサラマンダーの次は、魔族が攻めてきました。
防御結界も解けてしまい、私は死を覚悟しました。
でも、レイクさんがご自宅に避難させてくれました。
中に入って驚きましたよ、ものすごく広いんですから。
そして、インテリアはなかなかに……独特なセンスをしていましたね。
お屋敷の中から、私はレイクさんが戦っているのを見ていました。
あれは特殊な鎧なんでしょうか?
エビル・デーモンの稲妻がレイクさんに当たると、ものすごい数に増えて反射していましたから。
「レイクさんこそが、勇者になるべき人なのです」
そして、レイクさんは、勇者にまで選ばれたんですよね。
私も嬉しかったですが、驚きはしませんでした。
だって、一番ふさわしい人だと思っていましたから。
私も、レイクさんこそが勇者になるべきだと思っています。
これからもきっと、レイクさんはみんなの大切な存在になっていくと思います。
レイクさん、あなたが帰ってきてくれて、本当に良かったです。
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