第26話:大賢者からの手紙

「俺に手紙? いったい、なんだろう」

〔晩餐会とかの招待状かしら?〕

「あいにくですが、私はお手紙の内容については知らされておりません」


たしかに、それもそうか。


「では、私はこれにて失礼します」


メッセンは、さっさと帰っていった。


「じゃあ、さっそく……」

「レイク、お取込み中悪いんだが、そろそろ宴が始まりそうなんだ」

「みなさんに、挨拶をお願いできますか?」


手紙を見ようとしたら、マギスドールさんとセインティーナさんがやってきた。


〔中身を見るのは、宴が終わってからにしましょうかしらね〕

「うん、そうするかな」

「レイクさーん! こっちで飲みましょう!」

「今日も最高級の食材を用意してますよ!」

「またレイクさんのお話を聞かせてください!」


奥のテーブルでは、たくさんの人が俺を待っていた。

ということで、その日はまたどんちゃん騒ぎだった。



□□□



宴が終わって、俺たちは【呪いの館】に帰ってきた。

さっそく、封を開けていく。


「さて、どんな手紙だろうな」

〔きっと、ダーリンを称えるお手紙よ〕


しかし、真っ白な紙が1枚入っているだけだった。


「あれ、何も書いてないぞ」

〔裏も真っ白だわ〕


何かのいたずらかな?

すると、手紙から小さな人間が浮かび上がってきた。

魔法使いのローブみたいな服を着ている。


「君がレイク・アスカーブかね?」

「うおっ、なんだこれは」

〔ただの映像よ、ダーリン。たぶん、遠隔魔法かなにかね〕


たしかに、触ってみると実体がない。

俺は感心する。

今どきの手紙は発達しているなぁ。


「私は大賢者、ダウンルックだ。もちろん、知っているだろうね? カタライズ王国始まって以来の、超大天才だ。君と違って、出自や才能全てに恵まれているのさ」

「は、はぁ……」


えっと、俺たちは初対面だよな?

なんか、すげえ上から目線なんだが。


「聞いたぞ。ネオサラマンダーや、エビル・デーモンを討伐したそうだな。無論、私なら10分と経たずに倒せてしまえるがね」

「そ、それで何の用だ?」

「ぜひとも、君の実力を見たいのさ。近頃、魔族の目撃情報が増えているからね。我々としても、国の有力な冒険者は把握しておきたいわけだ。君はこんなこともわからないのか。まったく、バカを相手にするのは疲れるな」

「お、おお……」


ミニダウンルックは、やれやれといった感じで首を振っている。

な、なんなんだ、こいつは。


「まぁ、私は君の実力など信じないが……国王陛下が君に会いたいようでね。私より強い人間はいないというのに」


どうやら、相当な自信家らしい。

もしかして俺は、こういうヤツらを引き寄せちまうのか?

今度セインティーナさんに、お清めしてもらおうかな。

そのとき、ミニダウンルックは虚空を見つめ始めた。

こ、今度はなんだ?


「う、美しいお人だ……」


と思ったら、ミウを見つめていた。

俺は天を仰ぐ。

おいおいおい……またかよ。


「そ、そなたは何という名前かね? 教えなさい。言っておくが、私が興味を惹かれる人間など、二人といないぞ」

「別に名乗らなくていいぞ、ミウ」


俺はコッソリ伝えた。

また面倒な輩に絡まれるのはイヤだ。


〔いえ、ダーリン。私たちの関係を教えてあげた方が早いわ〕

「それもそうか」

〔私はミウ。ダーリンの妻でーす!〕


ミウは例のイケてる指輪を見せた。

そのまま、俺の左手も見せられる。

まぁ、今回はこれを着けてて良かったな。

ハッタリでも効果的……。

しかし、ミニダウンルックはプルプル震えている。

少しずつ、その顔が赤くなってきた。


「な、なんだと! 貴様、よくも私の運命の人を奪いおったな! 許さん!」

「は? ど、どうした」


こ、こいつは何を言い出すんだ。

おまけに、いきなりキレ始めたぞ。


「いいか!? 絶対に王都に来るんだ! これは国王陛下のご命令でもあるからな! 逃げようとするんじゃないぞ! もし来なかったら、そのときは……わかるだろうな?」


すまん、全然わからん。

と言うとめんどくさそうなので、黙っておいた。


「まぁ、迎えはよこさないから、勝手に頑張って来てくれ」


ブツン! と大きな音をたてて、ミニダウンルックは消えてしまった。


「何だったんだ、いったい」

〔変な人ね〕


まさか……こいつもやらかしマンじゃないだろうな。

これまでの経験から、俺は不安になってきた。

いや、待て。

まぁ、問題ないだろ。

だって、大賢者だぞ?

賢者なんて、賢いヤツの代表じゃないか。

いったい、なにをやらかすんだよ。


「どうしようかなぁ」

〔まぁ、行ってあげたら? だって、レイクに会いたいんでしょ? ダウンルックって人と、王様は。それに、私も王都を見てみたいわ〕


たしかに、こんなときじゃないと、王都なんて一生行かないかもしれん。

俺も行ったことないし。

そもそも、王様に会う機会なんてめったにないものだ。


「じゃあ、明日さっそく行くか。王様も俺に会いたいみたいだしな」

〔いえーい!〕


そういうわけで、俺たちは王都に向かうことになった。

ダウンルックの件は、別にたいしたことないと思う。

それより、王都ってどんなところだろう。

カッコいいアイテムがあるといいな。

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