第23話:魔族に圧勝する

「勇者パーティーを返してもらおうか」


俺はエビル・デーモンと向かい合っていた。

見るからに悪そうなツラをしている。

ニヤニヤしている目が、めっちゃ性格悪そうだ。

俺たちは【呪いの館】から、少し離れたところにいる。

屋敷にモンスターが向かっているが、大丈夫だろう。


『勇者パーティーって、これのこと?』


エビル・デーモンは、ぶら下げたセルフィッシュたちを掲げた。

彼らは気絶しているんだろう。

ピクリとも動かなかった。


「そうだ。お前にとっては、どうでもいいヤツらなんだろ?」

『その前に確認したいことがあるんだ。君がレイク・アスカーブかな?』

「だったらなんだよ」

『これまた弱そうな人間だ』


エビル・デーモンは、ケラケラ笑っている。


「なぁ、もう帰ってくれ。ここにはお前らが欲しいようなものは、何もないだろうがよ」

『君は魔界でね、結構有名なんだよ』

「なに? どういうことだ」


そんなこと初めて聞いたぞ。

なんで、魔界なんかで俺が有名なんだよ。

しかし、エビル・デーモンはニヤニヤ笑っているだけで、何も言おうとしない。


『呪われた即死アイテムを自在に扱える、レイク・アスカーブ。まさか、こんなしょぼい人間だったなんてね。もしかして、その鎧とか剣も呪われた即死アイテム? 趣味が悪いなぁ』

「おい、こら」


これのどこが悪趣味なんじゃ。

まったく、美意識のかけらもないヤツだな。


『まぁ、勇者クンたちはどうでもいいや。返してあげるよ。もう用なしのゴミだからね』


エビル・デーモンはセルフィッシュたちを、ポイッと投げてきた。

俺は急いで受け取る。


「っと、あぶねえ!」

「「うっ……」」


どうやら、セルフィッシュたちは生きてはいるようだ。


『まぁ、こんなヤツに負けるなんて想像もつかないけど、念のため本気でやらせてもらうよ?』


そう言うと、エビル・デーモンは魔力を溜め始めた。

ヤツの周りの空間が歪むほどだ。

やっぱり、こいつは魔族なんだな。

でも、どうせ呪われた即死アイテムには勝てないんだろう。


「お取込み中悪いんだが、俺には勝てないと思うぞ?」

『ふん、バカにしないでよね。君はここで死ぬんだよ』


しかし、エビル・デーモンは取り合ってくれなかった。

俺を殺す気マンマンだ。


『さあ、君の実力を見させてもらおうか!』


エビル・デーモンの全身から、とてつもない稲妻が飛んできた。

こりゃあ、すごい攻撃だ。

これを防げるヤツなんて、そうそういないんじゃないか?

しかし、どうやって倒そうかな。

【悪霊の剣】は、ニチャアァしているが……。

う~ん、【怨念の鎧】で適当に反射させるか。

めんどくせえし。

稲妻は俺に勢い良くあたっ……。


『うわああああああああ!!!』


たかと思うと、666倍に増えてエビル・デーモンを襲う。

稲妻が激しくて、体の輪郭が見えないくらいだった。

マジで痛そうだ。

というか、眩しくてしかたないんだが?

そして、エビル・デーモンはズシーン! と落ちてしまった。

消し炭だ。


「あっけないなぁ」


【悪霊の剣】は、少し残念そうだった。


〔ダーーリーン!〕

「「レイクさんー!」」


そのうち、【呪いの館】から、住民や冒険者たちが走ってきた。

もちろん、ミウも一緒だ。

みんな、とても嬉しそうだ。


「レイクさん、やったんですね! 屋敷の中から見てましたよ! めっちゃすごかったです!」

「あのエビル・デーモンですら、一撃なんて!」

「レイクさんに勝てるヤツなんて、どこにもいないですよ!」


やがて、魔族の城も消えていった。

知らないうちに、モンスターは全滅したようだ。

たぶん、【呪いの館】に殺されたんだろう。


「レイク! お前はグランドビールの救世主だ! 本当によくやってくれた!」

〔さすがは、私のダーリンね! 本当にカッコよかったわ!〕


マギスドールさんとミウが、俺をぎゅっと抱きしめる。

何はともあれ、大きな被害がなくて良かったな。

そのうち、セルフィッシュたちが目を覚ました。


「「ぐっ……ここは」」

「おい、大丈夫か?」


セルフィッシュたちは、ぼんやりしていた。

だが、少しずつ状況がわかってきたみたいだ。


「あの、エビル・デーモンはどうしたんですか?」

〔ダーリンが瞬殺したわ〕

「ヤツは俺が倒した。ほら、あれを見ろ」


俺はエビル・デーモンだった、どデカイ消し炭を指さす。

風が吹くと、どこかに飛んで行ってしまった。

その瞬間、セルフィッシュたちがすがりついてくる。

す、すごい勢いだ。

俺の足に、ベタベタまとわりついてくる。


「こ、こら、離れろ」

「うっうっ……ありがとうございます! 僕たちを助けてくれたんですね!」

「アンタは命の恩人だ!」

「なんとお礼を言ったらよいのでしょう! 本当にありがとうございます!」

「一生、あなたについていくわ!」


セルフィッシュたちは、俺にすがりついている。

なんであんなに嫌っていた俺にくっついてくるんだ。

あっ、そうか。

【怨念の鎧】を着ているから、俺だとわからないのか。

顔面鼻水まみれで、見るも無残な格好だ。

こいつら、ほんとに勇者パーティーか?


「お前らのせいで、俺たちがどんなに怖い思いをしたか、わかってんのか!?」

「ふざけんじゃねえ!」

「もはや勇者パーティーですらねえ! お前らなんか、殺されちまえば良かったんだ!」


住民や冒険者たちは、口々にセルフィッシュたちを責める。

みんな怒り狂っていた。


「「そ、それは……」」


セルフィッシュたちはうつむくばかりで、何も言えない。

まったく、困ったヤツらだな。

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