第14話:ギルドから表彰される

「レイク・アスカーブ! 貴殿をグランドビールの英雄として、ここに称える!」

「あ、ありがとうございます」

「「わあああ! レイク! レイク! レイク!」」


ネオサラマンダーの討伐が終わり、ギルドで俺の表彰式が開かれていた。

俺は街の救世主ということらしい。

傭兵としてのんびり生きるつもりだったので、ちょっと分不相応な感じがするな。

そして、ガイチューたちは、無事にワーストプリズン島に送られたらしい。


「レイク殿ー! こっちを向いてくだされー!」

「救世主さまー! 街を救ってくださってありがとうございますー!」

「あなたは、最高の冒険者です! 死ぬまで称え続けます!」


街中の人が集まっていて、中はぎゅうぎゅうだ。

みんな、俺のことを一目見ようと来ていた。


〔ダーリン! 素敵よー!〕

「レイクさーん!」


ミウやセレンさんが、手を振っていた。

俺もアハハ、と手を振り返す。

残念ながら、こんなに褒められるのは慣れていない。

俺は恐縮しっぱなしだった。


「レイク、お前はギルドで一番の冒険者だ。これを受け取ってくれ。エースの証だ」

「ありがとうございます。まさか、俺が貰えるなんて、思ってもいませんでした」


マギスドールさんから、豪華な盾をもらった。

もちろん、戦闘用ではなくて飾る用だ。

金色に輝いていて、とても眩しい。

各ギルドでは、エースにこの盾を贈るのが習わしだ。


「やったー! 新しいエースの誕生だー!」

「これでグランドビールは、一生安泰だな!」

「何と言っても、エースが二人いるんだからな!」


グランドビールでは、俺の他に勇者くらいしかいないはずだ。

つまり、俺は勇者と肩を並べるまでになった、ということか。


こんなに強くなれるなんて……。


俺は感慨深かった。

これも、ミウのおかげだろうな。

彼女に出会ったから、今の俺があるんだ。

俺はこっそりミウを見る。

バッチリ目が合った。


「あと、これはグランドビールから心ばかりのお礼だ。レイク、受け取ってくれ」


マギスドールさんは、大きな箱を渡してきた。

なんだろう、とてもずっしりしているぞ。

中を開けてみると、金貨や宝石がてんこ盛りだった。


〔わぁ、すごいわねぇ! キレイな物がいっぱい!〕

「あの、マギスドールさん。なんか高そうな物がいっぱいありますけど……」

「全部で、だいたい1憶ゼニーある」

「い、いち億!? そんな大金貰えませんって!」


俺は慌てて、箱をマギスドールさんに返す。

いくら街を救ったからって、さすがに貰いすぎだろう。


「いや、受け取ってくれ。お前が倒してくれたネオサラマンダーの死体が、かなり高く売れてな。ほとんどは素材を売った金なんだ。もちろん、ギルドや住民からのお礼も入っているぞ。みんな、お前に感謝しているんだよ」


ネオサラマンダーは、結局素材として売却したのだ。

マギスドールさんに全部任せていたが、上手く売ってくれたらしい。


「あ、ありがとうございます! 俺、めちゃくちゃ嬉しいです!」


何より、死人が出なかったことが本当に良かった。

あれだけのモンスターだ。

大暴れしたら、死者は一人や二人どころではない。


「Fランクから一気にエースにまでなったのは、お前が初めてだぞ! たぶん、冒険者始まって以来じゃないか?」


たしかに、普通ならSランクになって、そこからようやくエースになれるもんな。

色々規格外すぎるようだ。


「じゃあ、さっそく宴といこうか!」

「「おおおー!」」


マギスドールさんの一声で、宴が始まった。

ギルドの酒場も、豪勢に飾りつけられている。

陽気な音楽が流れ、踊り子たちが踊り始めた。


「じゃあ、座ろうか、ミウ」

〔ええ、それにしても立派なイスね〕


俺たちは、用意された席に座る。

王様が座るような、めっちゃ豪華なイスだ。

すると、いっせいに人が集まってきた。


「まさか、レイクがこんな力を隠していたなんてな!」

「お前のおかげで街は救われたよ! ありがとう!」

「あなたがいてくれれば、この先もずっと大丈夫ね!」


みんな、口々にお礼を言ってくれる。

やっぱり、他人に感謝されるのは良いもんだな。

いくら強かろうが、力を振るうだけじゃ、モンスターと変わらないもんな。


「さ、レイク殿! うちで作った最高品質のワインでございます!」

「こちらは最高級の牛肉で焼いたステーキです!」

「これは異国から取り寄せた、希少な果物ですよ!」


住民たちが、どんどん物を持ってくる。

俺の周りに、次々と食い物や飲み物が置かれていく。

どれもこれも、アイテムでいうとSランクの代物だ。


「いや、俺は自分にできることをしただけですから……。それに、ミウや他の人たちも助けてくれたので」


ネオサラマンダーは俺一人で倒したわけだが、手柄をひとり占めするつもりはなかった。


「レイクさんは素晴らしい! 謙遜なさるなんて!」

「もっと偉そうにして良いんですよ!」

「あなた様が一番強いですね!」


みんな、とても嬉しそうに笑い合っている。

こちらまで嬉しくなるほどだ。


「さあ! 今日はレイク様のご健康とご活躍をお祈りして、踊り明かすぞ!」

「「よっしゃー!」」


結局、その日はずっと、どんちゃん騒ぎが開かれていた。

俺たちが宿屋についたのは、日付が変わったくらいだ。


「今日は楽しかったな、ミウ」

〔ええ、私がこんな風に過ごせるのも、ダーリンのおかげよ。ありがとね〕


ミウは俺の手を、ぎゅっと握ってくる。

俺はずっと、ミウと過ごしたいなと思った。


「朝起きたら、引っ越し先でも探すか。早い方がいいからな」

〔私たちの愛の巣探し、ってことね!〕

「う、う~ん、そうなのか?」

〔ついでに買い物も行きましょう。新居で暮らすんなら、家具とか必要だわ〕

「それもそうだな。なら、買い出しもするか」


金も入ったことだし、色々買えそうだ。

だとすると、部屋のレイアウトも考えないとな、テーマカラーとか。

俺は考えをめぐらす。

やっぱり、ここは黒だろ。

黒いカーテンに、黒い家具に……よし、あの休憩室をマネしよう。

だとすると、ロウソクも買わんとな。

明日は忙しくなりそうだ。

あれこれ考えているうちに、俺は眠っていた。

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