第8話:クッソ高額な治療費(Side:ガイチュー②)

「はあ!? なんでそんなに高いんだよ! お前ら、ヤブ治療師だろ!」


なんだよ、1000万ゼニーって。

こいつらは、ぼったくりに違いない。


「ヤブって、ずいぶんと失礼ですね。これでも私たちは、カタライズ王国直属の治療師団なんですが」


よく見ると、ローブの胸に紋章がついている。

王国のシンボル、オリーブの枝が描かれていた。

たしかに、こいつらはヤブじゃなさそうだ。


「ぐっ……だからといって、いくらなんでも高すぎるだろ! 払えるわけないだろうがよ!」

「ですから、これはAランクの呪いですよね?」

「あ、ああ、そうだが。それがどうした!? さっさと解除しろよ!」

「どうしたって……あなた、本当に冒険者ですか? 呪いを解くのって、かなり大変なことなんですよ。腕利きの白魔導士が何人も必要なんですから」

「ふざけんな! 呪いなんて、手で触れれば解けるんだろ!?」

「ふざけているのは、そちらですよ。触っただけで呪いが解けるなんて、ありえないじゃないですか」


な、なんだ? こいつらはいったい、何を言っている?

あの無能は、何でも簡単に解呪していたぞ。

しかし、そうこうしているうちにも、俺の体は悲鳴をあげている。


「ガイチュー様、ここはレイクに頼んだ方が……」

「はあ!? なんで、あいつの名前が出てくるんだ!」


レイクに頼るなんて、死んでもごめんだ!


「お取込み中悪いんですが、支払いの方はどうなんですか? 私たちにも生活がありますからね。これ以上安くはできませんよ」


ぐっ、どうすればいい。

そうだ。


「おい、お前らも支払いに協力するよな?」


俺はメンバーにも払わせることにした。

4人で分割すれば、一人頭250万ゼニーだ。

これなら高ランククエストを、何回かクリアすればまかなえる。


「「え……」」


しかし、こいつらは気乗りしない感じだった。


「おい、なんでイヤそうな顔してんだ」

「そ、そんな大金ありませんわ……」

「せっかく貯めたのに、ガイチュー様のために使うのはちょっと……」

「なんで私たちまで……」

「知るか! 誰のおかげでここまでこれたと思ってんだ! 有り金全部出しやがれ!」

「「ひいいいい!」」


メンバーから、全ての財産を奪い取る。

そのまま、治療師団に渡した。


「う~ん、まだ足りません。これでは治療できませんよ」

「な、なんだと……それなら、アイテムで払う! それならいいだろ!」

「はぁ、しょうがないですね」


俺は身に着けているものを、全部渡す。


「お前らもアイテム出せ! 装備もだよ!」

「「そ、そんな……」」


メンバーからむしり取ると、それも渡した。


「まぁ、ギリギリってところですかね」


この野郎。


「早く解け」

「じゃあ、こちらに来てください。専用の部屋に案内しますから」

「おい、ここで解いてくれねえのかよ。体中かゆくてしょうがねえんだ」

「魔法陣もなしに、解呪できるわけないじゃないですか。冗談は言わないでくださいよ」

「はあ?」


治療師は、さっさと歩いていく。

しかたがないので、俺もついて行った。

かゆみを我慢しすぎて、へとへとに疲れてきた。


「はあはあ……」


部屋に入ると、治療師たちが魔法陣を描いていた。

グロいモンスターの頭とか、おどろおどろしいアイテムを並べていく。

な、なんだか、怖くなってきたぞ。


「おい、どうしてこんなに大がかりなんだよ。もっとスマートにやれないのか」

「無茶なこと言わないでくださいよ。呪いは闇魔法でできているんですから、これくらいの準備でも足りないくらいです」

「は? 闇魔法? 呪いが?」

「え、そんなことも知らないんですか? 常識ですよ。さっきも聞きましたけど、あなたほんとに冒険者なんですか?」

「なんだと、この……」

「まぁ、さっさと座ってください」


もしかして、レイクは結構すごいヤツだったのか?

いや、そんなことがあるはずないだろ。


「じゃあ、始めますよ」


そう言うと、治療師たちは呪文を詠唱しだした。

やたらと長い呪文だ。

よかった、これでかゆみから解放され……。


「ぐあああああ!!!」

「ほら、頑張ってください。まだまだかかりますよ」


呪いを解除する儀式は、死ぬほど苦しかった。


「なんでこんなに痛いんだよ! わざとやってんのか……うぎゃああああ!」

「闇魔法を解除するわけですから、痛いに決まってるじゃないですか。暴れると、さらに時間かかりますよ」

「高い金払ってんだから、もっと優しく……あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!」


何回か失神しては、痛みで意識が戻る。

地獄のような時間だった。



□□□



「……ゲホッ」

「ガイチュー様、大丈夫ですか……?」


ようやく部屋から出れた。

俺の体はボロボロだ。


「ガイチューのヤツ、体がかゆくて逃げ帰って来たんだってよ」

「なんだよ、その撤退理由。情けないなぁ」

「マヌケ」


冒険者どもが、俺のことを笑っていた。

今すぐぶちのめしたかったが、そんな元気はなかった。

俺はぐったりしながら、ギルドから出ていく。

そして、メンバーは別の意味でぐったりしていた。


「うっうっ……せっかく新しいドレスを買おうと思ってたのに」

「私の愛用の杖が取られちゃった……高かったのに」

「頑張って貯めたお金が……」

「う、うるせえ! また稼げばいいだろ!」


女どもは、いつまでもブツブツ言っていた。

クソッ、俺たちは一文無しになっちまったぞ。

ちくしょう! こうなったのも、全部レイクのせいだ!

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