第7話:散々な目に遭う(Side:ガイチュー①)
「まったく、あのゴミ虫には迷惑したぜ! ブヒャヒャヒャヒャ!」
「ガイチュー様のおっしゃる通りですわ!」
「人はみな、これを英断という」
「さすが、我らがガイチュー様! バンザイ!」
あのクソ無能を追放して、俺は最高の気分だ。
さーって、今日も大活躍といくか。
「解呪しかできないくせに、偉そうだったよな!」
「私たちも、ほんとに困りましたわ」
「これで安心してクエストに行ける」
「良かった、良かった」
「よし、いくぞお前ら!」
「「はい!」」
□□□
ということで、俺たちはAランクダンジョンに来た。
<呪い迷宮>のクエストは終わったので、ちょっとした息抜きだ。
ボスモンスターを倒す、単純なクエストだった。
「ボスちゃんはどこにいるのかなぁ? まぁ、最強の俺たちなら楽勝だろうがな! ブヒャヒャヒャヒャ!」
「でも、Aランクモンスターのサタンが出ているってウワサもありますよ?」
「厄介、少しだけ」
「遭遇しなければいいが」
サタンはいたずらに、色んなダンジョンをうろつくモンスターだ。
冒険者に呪いをかけては、苦しむ様を見て喜んでいるのだ。
「別に大したことねえよ。大丈夫だろ。何と言っても、こっちには<聖騎士のネックレス>があるからな」
「そうでしたね」
「気にすることはない」
「こんな激レアアイテムあれば、平気なはずだ」
そのとき、暗がりからモンスターが出てきた。
「おっ、なんだ!?」
『ケッケッケ!』
さっそく、サタンのお出ましだ。
「ガイチュー様!?」
「なに、慌てんな」
Aランクではあるが、ビビることはない。
サタンは面倒な呪いをかけるのが、趣味みたいなヤツだ。
人間を殺すような真似はしない。
というか、こいつもぶちのめせば、追加報酬も貰えそうだな。
「へっ! ちょうどいいじゃねえか! おい、クソサタン! 逃げるなよ!」
俺はずかずかと進んでいく。
「あっ、ガイチュー様!? 危険ですわ! もし、呪いにかかったらどうするんですか!?」
「何言ってんだよ、こっちには<聖騎士のネックレス>があるんだぞ」
『クケケケケケ!』
サタンが赤い光線を飛ばしてきた。
しかし、俺に当たると弾かれてしまった。
アイテムの力で打ち消したのだ。
「ほら見ろ、こんなヤツ敵じゃねえんだよ」
俺はサタンに、<聖騎士のネックレス>を見せつける。
しかし、アイテムの様子がおかしい。
ブルブル震えていた。
「な、なんだ?」
その直後、パキーン! と砕けた。
「は!? なに壊れてんだよ!」
「きっと、サタンの呪い魔法に耐えられなかったんですわ!」
「もう守る物がない!」
「逃げましょう、ガイチュー様!」
『ケケケ!』
パシューン! と赤い光線が俺に当たった。
しかし、何も起こらない。
「なんだよ、驚かすんじゃねえよ。このクソモンス……」
と思ったら、俺の体が猛烈にかゆくなった。
ものすごいかゆみで、気絶しそうだ。
「うぎゃああああ!!!」
「「ガイチュー様!? 大丈夫ですか!?」」
俺は体中をかきむしる。
しかも、それだけじゃない。
全身を虫が這いずり回っている感じで、気持ち悪くてしょうがない。
「なんだよ、これええええ! お前らどうにかしろ!」
「こ、これはサタンの呪い魔法ですわ。私たちにはどうにもできません」
「おい、ツイシン! さっさと呪いを解除しろ!」
「そんなこと言ったって、私は呪いなんて解除したことない!」
「ふざけんな! お前は回復役の白魔導士だろうがよ!」
「だから、ケガを治せたりはできても、呪いは無理!」
「と、とりあえず、ギルドに帰ろう!」
俺は耳を疑った。
「帰るだと!? クエスト中断ってことかよ!」
そんなの、初心者丸出しパーティーがやることだ。
しかも、俺の体がかゆいから撤退したってことか?
ふざけんな! バカにされるに決まってんだろ。
「ダメだ! 絶対に撤退はしない……ぐあああ! 体がかゆいいいいい!」
「このままじゃ、クエストどころじゃありませんわ!」
「今モンスターに襲われたら、大変!」
「帰るしかない!」
「ぐっ……クソおおおお!」
俺たちは必死の思いで、ギルドに帰ってきた。
体がかゆくてしょうがないので、俺はクネクネしている。
ぞぞぞぞっと、イヤな感触がしてしょうがない。
冒険者たちが、俺の様子を見て笑っていた。
「おーい、ここはダンス会場じゃないぞー」
「誰に求愛してんだー?」
「気持ち悪いだけだからなー」
「うるせえ! おい! 早く治療師を呼べ!」
俺はめちゃくちゃに怒鳴り散らす。
ちょうど、各地を転々としている治療師団が来ているはずだ。
騒いでいると、白いローブを来たヤツらがやってきた。
「はい、何でしょうか」
「この呪いを解けってんだよ!」
「おっかない人ですねぇ」
「早くしろ!」
治療師は、俺の体を触っていく。
ヤツらの手は、ぼんやり光っていた。
状態を分析しているらしい。
「ふむ、質の悪い呪いみたいですね。サタンにやられたんでしょう。注意情報を聞いていなかったんですか?」
「黙れ! さっさと治せ!」
「いや、治しますけどね。仕事ですから。でも、ちゃんとお金払えますか? 解呪するには、1000万ゼニ-かかりますけど」
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