第5話:呪われた即死アイテムをたくさんゲットした②
「よし、この調子でジャンジャンいくぞ!」
〔それでこそ、ダーリンよ!〕
強いアイテムがあるんなら、さっさとゲットした方がいいだろ。
もったいぶる必要は、どこにもないからな。
「次はこの扉だ!」
〔ポーションみたいな絵が描いてあるわ〕
「今度はどんなアイテムだろうな。よっと、《解呪》!」
またもや奥の方に、2つの小ビンが浮かんでいた。
蓋にエグイ悪魔の彫刻が彫られている。
そして、お決まりのどす黒いオーラだ。
「……うっ!」
いったい、何度俺を過呼吸にすれば気がすむんだ?
下手したら死んじまうぞ?
ひ、ひとつずつ見ていこう。
【悪魔のポーション】
ランク:SSS
能力:身体能力、魔力を666倍にする
呪い:飲むと体内の血が沸騰して死ぬ
いや、体内の血が沸騰て、どんな死に方だ。
ここまでくると、呪いのことなんか気にならなくなってきた。
かなりキツイ内容だが、俺には効かないのだから。
〔ふ~ん、結構よさげな能力じゃない〕
「というか、666倍にパワーアップなんて、常識破れも甚だしいだろ」
どうやら、呪われた即死アイテムは、全部SSSランクっぽい。
〔しょぼい倍率より、ずっと良いでしょうよ〕
「まぁ、そうだな。じゃあ、とりあえず飲んでみるか」
待てよ? ……と俺はあることに気が付いた。
もしかして……めっちゃまずいんじゃね?
だって、666倍だぞ。
何も美味くなくていいんだ、人が飲める程度の味であれば。
呪いは消せても、味は変えられないぞ。
まさか、まずくて死ぬなんてことはないよな?
俺はちょっと怖くなってきた。
〔ダーリン、どうしたの?〕
「いや、ちょっと……」
ミウは不思議そうな顔で見ている。
ええい! ここまで来て、今さら何を怖がってんだ!
「よ、よし、飲むぞ!」
〔いっけー、ダーリン!〕
何がいっけー! だかわからんが、俺は覚悟を決めた。
ゴクゴクと一気に飲み干してやる。
その瞬間、俺はすごい衝撃を受けた。
「い……!」
〔どうしたの、ダーリン!? 大丈夫!?〕
「意外とうめえな……」
〔もう、心配させないでよ〕
【悪魔のポーション】はしゅわしゅわしていて、なかなかに美味だった。
たしかに、力が溢れてくる感じがする。
そして、予想以上の嬉しいことが起きた。
「おおお、なんだ!? どす黒いオーラが、俺の体にまとわりついているぞ!?」
〔ダーリン!〕
俺はめちゃくちゃ嬉しくなった。
黒いオーラを漂わせた男……なんて、カッコイイじゃないかよ。
しかし、少しすると、うっすら見えるくらいになってしまった。
「なんだよ、もう終わりかよ」
〔ダーリンはそのままでも素敵だわ〕
「そうじゃなくてだな」
さて、と俺は空容器をしまう。
〔入れ物は捨てないの? 全部飲んじゃったんでしょ?〕
「捨てないに決まってるだろ。絶対に持って帰る」
こんなカッコいいのに、捨てるなんてもったいない。
これは大切に保管するんだ。
ぶっちゃけ、俺にとっては中身より入れ物の方が大事だった。
〔なんだか、ダーリンの趣味がわかってきた気がするわ〕
「よし、次はこっちだ」
2つ目のポーションには、イフリートっぽい地獄の門番的な彫刻がされている。
中の液体は真っ赤で、飲むのがもったいないくらいだ。
これもどす黒いオーラが漂っていた。
呪われた即死アイテムは、みんなこういう感じなんだろう。
何から何まで、俺好みだ。
ここは天国かもしれん。
【地獄のポーション】
ランク:SSS
能力:あらゆる怪我や病気を永続的に治癒する
呪い:飲むと内臓が燃えて死ぬ
内臓が燃える……。
これまたキツイ死に方だな。
つまり、ケガとか病気を無限に治せるってことだよな? 不死身かよ。
たぶん、これも美味いのかな?
「よし、飲むぞ!」
〔いっけー、ぶちかませー!〕
「ゴクゴク……かああー! うめえ!」
一気に飲んでやった。
今度もまた、喉ごし最高だ。
〔入れ物はとっておくのよね?〕
「もちろんだ」
容器が消えてしまわなくて、本当に良かった。
中身を飲んだらなくなるのかと不安だったんだ。
そのまま、最後の部屋に向かう。
「さて、ここでラストだ」
〔これは何かの本みたいな絵ね〕
「魔導書的なアイテムかな? それ、《解呪》!」
新たな部屋に入ったとたん、そのカッコよさに気絶しそうになった。
年季の入った、めっちゃ分厚い本が浮いている。
表紙には、暗黒の魔導師みたいな絵が描いてあった。
そして、極めつけにどす黒いオーラ。
「…………生きてて良かった」
【闇の魔導書】
ランク:SSS
能力:闇魔法が自由に扱える
呪い:闇魔法を使うと、全身から出血して死ぬ
呪われた即死アイテムはデメリットがエグイ代わりに、めちゃくちゃに強いらしい。
〔ひとしきり、こんなところかしらね〕
「そうだな、扉は全部開けたからな」
【闇の魔導書】はいずれ使うとして、そろそろ地上へ戻ってもいいだろう。
〔私もダーリンと、色んなところに行きたいな〕
そうか、ミウはずっとここに一人でいたのか。
だったら、早く行った方がいいかもな。
と言いたいのだが……。
「結構アイテムが集まったな。でも、持って帰るのが、少し大変かもしれんぞ」
〔大丈夫よ、ダーリン。呪われた即死アイテムには、おまけ能力がついているの。使わない時は、亜空間にしまっておけるわ〕
「へえ~、おまけ能力かぁ」
いや、なんでそこだけかわいい感じなんだ。
呪いはエグイのに。
〔私はしまわないでね〕
「わかってるって。そうだ、闇魔法ってどんなのだ?」
〔ちょっと見てましょう〕
俺は【闇の魔導書】を、適当にパラパラめくる。
当たり前だが、闇の魔法なんて、今まで見たことがなかった。
しかし、本には魔法名と、簡単な説明しか書いていない。
〔ずいぶんと、あっさりしているわね〕
「俺はあまり詳しくないが、魔法って呪文とか言わないのかな? そんなの書いてないけど」
ロカモーノが魔法を使うとき、いつも何か唱えていた。
大地の精霊よ……みたいなヤツだ。
そして、強い魔法のときほど長かった。
「テレポート的な魔法はないか?」
〔せっかくだから、歩いて行きましょうよ。あっさり帰ったらつまんないわ〕
「う~ん、そうだな。アイテムも試したいし」
色んな強いアイテムをゲットしたのだ。
極めるまではいかなくても、とりあえずちょっと使ってみたい。
〔モンスターを倒しながら、外に出ましょう。アイテムも、使ってるうちに慣れてくるわ〕
「よし、そうするか。いやぁ、しかし、素晴らしい日々だったな」
俺は最高のアイテムたちをゲットして、ほっくほくだ。
いくら我慢しようとしても、自然と笑みがこぼれる。
だが、ミウはしょんぼりしていた。
「どうしたんだ、ミウ。具合でも悪いのかぁ?」
〔なんか、ダーリン……私と契約したときより嬉しそう……〕
ミウはぐすぐすしていた。
俺はめちゃくちゃに焦る。
「そ、そうじゃなくてだな! これは……」
〔私なんてどうでもいいんだ……〕
「違う違う! 違うっての!」
俺はミウを必死になだめながら、地上へ歩いていく。
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