第4話:呪われた即死アイテムをたくさんゲットした①

「じゃあ、行くよ、ミウ」

〔やっちゃえ、ダーリン!〕


翌日、何事もなく目覚めた俺たちは、ひとつの扉の前にいた。

見れば見るほど、この呪いを使った封印魔法は高度だった。

たぶん、大賢者や大聖女レベルでも解除できないだろう。

だが、しょせんは呪い。

俺のスキルで、無効化できるはずだ。


「《解呪》!」


俺が触ると、魔法陣は一瞬で消え去った。


「よ、よし、開けるぞ」

〔せーのっ!〕


ミウと一緒に、扉を開ける。

と、奥の方に剣が浮かんでいた。


「…………す、素晴らしすぎるだろ」


ククリみたいな形で、刀身に悪霊の絵が刻まれている。

しかも、オオオ……と動いているのがすごい。

これまた、どす黒いオーラが出ていた。

俺のテンションが爆上がりする。



【悪霊の剣】

ランク:SSS

能力:斬りつけた存在を即死させる



「ランクSSS!? しかも、即死だって!? つ、強すぎんだろ……」

〔呪われた即死アイテムは、破格の強さを持っているのよ〕


相手を即死させるアイテムなんて、見たことも聞いたこともない。

俺は手を伸ばしていく。

カッコいい上に、これまた最強のアイテムだ。

何より、デザインが素晴らしい。

帰ったら、ゆっくり眺めよう。

握ろうとした瞬間、残りの説明書きが目に入った。



呪い:身に着けると、体が真っ二つに引き裂かれて死ぬ



「どわあ! あぶねえ!」


俺は慌てて、手をひっこめた。

勢い良く、【悪霊の剣】から離れる。

あ、危うく死ぬところだったぞ。


〔もう、何やってるのよ。平気だって、ダーリンには呪い効かないんだから〕

「お、おう、それはわかっているのだが……」


たぶん、ミウのときと同じだと思う。

しかし、どうしても身構えるだろ。


〔ほら、早く〕

「お、おい、押すなって」


結局、ミウにぐいぐいと押され、【悪霊の剣】の前に来た。

頼む……!

俺は目をつぶり、えいやっと握りしめた。

体を引き裂かれる感覚が……ない。

俺は慌てて体をまさぐるが、大丈夫だった。

真っ二つになっていない。


「ぶはぁ……よかったぁ……」

〔だから、大丈夫って言ってるのに〕

「そうは言ってもなぁ、結構緊張するんだぞ」

〔ねえ、気に入った?〕

「ああ、もちろんだ。さて、試し斬りしてみたいな」


俺はさっそく、【悪霊の剣】を使いたくなった。

昔から新しい武器をゲットすると、ワクワクするんだ。

何より、能力をチェックしたい。

本当に相手を即死させられるのか?


〔じゃあ、一度外に出ましょうかしら〕

「ちょ、ちょっと待ってくれ。ここには強いモンスターしかいないよな」


ここはSランクダンジョン<呪い迷宮>だ。

しかも最下層なので、SとかAランクモンスターがうようよしている。

あのハイオークだって、よそのダンジョンだったらボスクラスだ。

そして、俺は剣が得意なわけじゃない。

いくらアイテムが強くても、返り討ちにされるんじゃなかろうか。


〔大丈夫よ、私が半殺しにしておくから。とりあえず、やってみましょう〕

「そ、そうか」


ということで、俺たちは呪いの結界を抜けて、ダンジョンに戻ってきた。

すっかり忘れていたが、ジメジメしていて不快なところだ。

亜空間は、意外にも過ごしやすかったようだ。


つい昨日、ここで追放されたんだよなぁ。


だが、今は全然違う景色に見える。

俺の隣に、ミウがいるからだ。


『ゴゴゴゴゴ!』

「な、なんだ!?」

〔モンスターみたいね〕


ちょうど向こうから、ディフェンド・ゴーレムがやってきた。

名前の通り、守り特化のBランクモンスターだ。

生半可な剣技なんかは、簡単に弾かれちまうな。

対魔法石で作られているので、魔法攻撃にも強い。


「こ、これまた厄介なヤツが来たな」

〔あんなに動きが遅かったら、あいつの攻撃なんか当たらないわよ〕

「う~ん、それもそうか。でも、ゴーレムに即死能力が効くのかな?」


動いてはいるが、あいつらは生き物じゃない。

岩だとか石に、魔法が宿ったヤツらだ。

力がこもった核を壊すのが、ベストな倒し方だ。


〔効くに決まってるじゃないの。SSSランクなんだから。それに、その剣も戦いたがっているみたいよ〕


相変わらず、【悪霊の剣】はオオオ……と唸っている。

と思ったが、確かになんとなく笑っているような。


「よし、いっちょやってみるか!」

〔何かあったら、私がすぐにサポートするわ〕


俺は慎重に近づいていく。


『ゴゴガ!』


ディフェンド・ゴーレムは、右腕を振り下ろしてきた。

これくらいなら、俺でも避けれるぞ。


「い、いくぞ! くらいやがれ!」


俺は思いっきり、【悪霊の剣】で斬りかかる。

ゴーレムの腕に刺さった。

こんなところに、核なんかあるわけが……。


『ゴギャアアアアアアアアア!!!』

「うおおおおお!」


と、とんでもない断末魔の叫びだ。

ディフェンド・ゴーレムの体が、真っ二つにさけちまった。

そして、もう二度と動かなくなった。


〔やったね、ダーリン! すごいわ、一撃で倒しちゃうなんて!〕

「お、おお……」


ミウが走ってきて、俺にむぎゅむちっとくっついた。

核がどうとか、そういう次元じゃない。

ガチのマジで即死させるんだ……なんてヤバイアイテムだ。

いや、待てよ? 《解呪》がなかったら、俺もああなっていたってことか……お、恐ろしいな。


〔その剣も嬉しそうね〕

「え?」


描かれた悪霊が、ニチャアァ……と笑っている。

もしかして、命を吸い取ったりしているのだろうか?

アイテムや魔法の強さとかは、ランクの高さで決まる。

上から下には効いても、その逆は基本的にない。

そして、呪われた即死アイテムはSSSランク。


ということはだな。

これは世界最強のアイテムなんじゃないか?


だんだん、欲が出てきた。

最初はアイテムがゲットできれば、それで良かった。

だけど、やっぱり戦って見たい。

ずっと戦闘は避けていたけど、やっぱり俺も戦いたかったんだな。

さっそく、亜空間に戻ってきた。


〔さぁ、呪われた即死アイテムはまだまだあるわ。次はどれにしましょうか〕

「そうだなぁ……あれ? なんか絵が描かれてないか?」

〔あら、ほんとね〕


よく見ると、それぞれの扉にはうっすらと絵が描かれていた。

こいつは、鎧っぽい絵だ。

たぶん、というか絶対鎧系のアイテムだろう。

ディフェンド・ゴーレムは、守り特化モンスターだから何とかなった。

だが、素早いヤツとかが来たら、さきに俺が死んじまうかもしれん。


「今の俺にピッタリだな。これにしよう。≪解呪≫!」


案の定、鎧が置いてあった。


「………はぁはぁ」


あまりのカッコよさに、俺は過呼吸になった。

闇に溶け込むような、漆黒の鎧だ。

全体に、紫のイカツイ模様が刻まれているぞ。

そして、例のどす黒いオーラときた。

これはもうたまらんだろう。



【怨念の鎧】

ランク:SSS

能力:あらゆる物理攻撃や魔法攻撃を、666倍にして跳ね返す

呪い:身に着けると、全身の骨が粉々に砕けて死ぬ



「666倍!? つ、強すぎる……」


Sランクの反射魔法でさえ、せいぜい10倍がやっとだ。

強すぎて、意味不明だ。


〔さっそく、試しましょう〕

「あっ、ちょっと待てよ?」

〔どうしたの、ダーリン〕

「呪われた即死アイテムが、盗まれたらどうしよう」


そうなのだ。

いくら強くても、盗まれたらおしまいだ。


〔大丈夫よ。ダーリン以外が持つと、呪いを受けるわ〕

「ど、どういうことだ?」

〔実際に見た方が早いわ〕

「あっ、ちょっと」


またもや、ミウに押し切られる形で、ダンジョンに戻ってきた。


〔あいつにしましょう〕


奥の方から、グレムリンがやってきた。

こいつはBランクだ。


〔さあ、ダーリン。兜をあいつに渡すのよ〕

「な、何を言ってるんだ、ミウ!? そんなことしたら、あいつに取られるって」

〔大丈夫だって〕

「いや、グレムリンがパワーアップしちまうぞ」

〔いいから〕

「じゃ、じゃあ、いくぞ! どうなっても知らんからな!」


なんか、ミウの尻にひかれている気がするんだが……気のせいだよな?

俺はグレムリンに、兜を放り投げた。


『キキキキキ!』


ああ、もうダメだ。

グレムリンは嬉しそうに兜を被って……。


『ブギャアアアアアアアア!!!』

「うおおおおおお!」


ものすごい悲鳴を上げた。

かと思うと、ヤツの体がバキバキのグシャグシャになっていく。


〔さあ、近づいてみましょう〕

「こ、これは……体がすごいことになってるぞ」

〔ダーリンが持っている間だけ、呪いは無効化されてるのよ〕


グレムリンは、体中ボロボロになっている。

ミウの言う通り、呪われた即死アイテムは俺しか使えないらしい。

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