第3話:俺のスキルはすごいらしい

「じゃあ、さっさと地上に戻るとするか」


俺は追放されちまったわけだが、まずはギルドに帰ろうと思う。

ガイチューには消えてなくなれ、なんて言われたが、消えるわけないだろ。

こんなところで人生を終えるのは、まっぴらごめんだっつーの。

とりあえず、ここから脱出した方がよさそうだ。

のんびりしてると、またモンスターが来るかもしれんし。


〔ちょっと待って。落ち着いて聞いてね、ダーリン〕

「な、なんだ?」


ミウは俺のことを、真剣に見ている。

何を言われるのか、俺はゴクッと唾を飲んだ。


〔一言でいうと、ダーリンのスキルはすごいのよ。選ばれし者ってことね〕

「お、おお」


何がどうすごいのか全然わからんが、俺のスキルはすごいらしい。


〔呪いは、闇魔法で作られているって知ってた?〕

「え、そうなの?」


闇魔法はとうの昔に廃れてしまった、めっちゃ強い魔法だ。

モンスターでさえ、Sランクなどの超上級魔族しか使えないはずだ。

大賢者たちが復興させようしている、なんてウワサもある。


〔どういうわけか、呪いだけあちこちに残っているんだけどね。そして、呪われた即死アイテムは、他にもたくさんあるわ〕

「マジか!? まだあんの!?」


こんなにカッコいいアイテムが、他にもあるのかよ。

なんて、素晴らしいんだ……。


「それで、どこにあるんだ!?」

〔ここにはなくて、亜空間に保管されているわ〕

「亜空間? どうやって行くんだ?」

〔奥の壁に、この指輪をはめる窪みがあるはずよ〕


ミウに言われて探してみると、確かにあった。

ちょうど、指輪の骸骨が収まりそうな凹みだ。


「ほお、これか」

〔そこに指輪を入れてみて〕


カコッと軽い感触がして、指輪がはまった。

すると、壁が消えて、奥へと続く道が出てきた。


「この先にアイテムがあるのか?」

〔ええ、行ってみましょう、ダーリン〕


俺たちは静かに歩いていく。

少し進むと、真っ黒な空間にでた。

ロウソクでぼんやりと照らされていて、ナイスな感じだ。

できれば、ここを俺の部屋にしたい。


「すげえ、なんだこれは」

〔ここの裏ダンジョンよ〕


まさか、<呪い迷宮>にこんな隠しルートがあるなんてな。

たぶん、あの魔法陣を誰も解除できなかったんだ。

だから、手つかずで残っていたんだろう。

俺は結構、ラッキーなヤツかもしれん。


「特別な場所って感じだな」

〔選ばれし者だけが入れる空間よ〕

「おっ、いくつか扉があるぞ」


空間の壁には、これまた頑丈そうな扉があった。

どれもどっしりしていて、魔法陣が貼ってあった。

近くで見ると、呪い魔法で作られている封印だ。

ここに来たときの壁と同じだった。


「なあ、ミウよ。この封印魔法はかなり高度じゃないか?」


どれも、王国の大金庫以上に複雑で鉄壁だ。


〔ダーリンなら一発で解除できるわ。呪いなんだから〕

「そうかなぁ」

〔ここの中に、呪われた即死アイテムは納められているわ〕

「どうしてミウは、そんなことまで知っているんだ?」

〔どうしてって……〕


ミウはぽかんとしている。


〔呪い魔神だからよ〕

「ああ、そうか」


何をもってああそうかなのか全くわからんが、そういうことらしい。

自信を持って言われると、なんとなく納得してしまう。


〔とりあえず、今日は休みましょうか。もう寝ましょうよ、ダーリン〕

「そうだな、色々あって疲れたよ……って、どこに泊まるんじゃい」


当たり前だが、ダンジョンの中に宿屋なんてない。

モンスターだって、たくさんいるんだ。

いくらミウが強くても、やっぱり彼女の身が心配だ。


〔ダーリン、後ろを見てごらんなさいな〕

「後ろ?」


振り返ると、入口に結界が張られてあった。

どす黒いオーラが出ていて、見るからにヤバそうだ。


〔あれはSSSランクの呪い魔法だから、ダーリン以外が触れると死ぬわ〕

「お、おお」


マジの呪いは容赦ないらしいな。


「しかし、どこで休むんだ?」


最悪、ここで寝てもいいが、さすがに地面が固い。

一晩寝ると、身体がビッキビキになりそうだ。


〔大丈夫よ。選ばれし者のために、休憩室があるわ〕

「休憩室?」


ミウが指さした方に、小さな扉があった。

そこだけ、魔法陣が張られていない。

入ってみると、大きなベッドが置いてあった。

優しい光に包まれて、ムーディな感じだ。

そして、部屋の隅には小さな箱が置いてあった。


「なんだろう、これ。何か入っているのかな?」

〔開けてみましょう〕

「うおっ、ヒンヤリしているぞ」


ありがたいことに、食い物とか飲み物が入っている。

おかげで、俺たちは軽い食事ができた。


「ずいぶんと手厚い歓迎だな。これならゆっくり眠れそうだ」

〔さっそく寝ましょうか〕

「よし」


となったわけだが……。


〔ねえ、ダーリン。どうしてそんな端っこにいるの?〕


俺はベッドのギリッギリにいた。


「あ、いや、ちょっと……」

〔私のこと嫌いなの?〕

「そうじゃなくてだな」


いくらミウが呪い魔神と言えど、うら若き乙女だ。

健全男子として、手を出すわけにはいかんだろうが。

ましてや、まだ出会って数時間も経ってないぞ。

それなのに、一晩同じ屋根の下で過ごすというのはどうなんだ?

いや、嬉しくないわけではなくてだな、世の中には順序というものが……。


〔もう、契約しているんだからいいでしょ〕


結局、ミウに押しきられ、抱きしめられてしまった。

お、おお……。

背中に柔らかくも、主張の激しいふくらみが当たる。

気にせず、ミウはどんどんくっついてきた。

俺の理性が、音を立てて崩れ去る。


も、もうダメだ……いや! が、頑張れ、レイク! いたすにはまだ早すぎるだろうがよ!


と思ったら、ミウはすうすうと寝てしまった。

なんとなく寂しい気もする……って、いつからお前はそんなに不健全になったんだ!


「お、落ち着け、レイク」


俺は眠かったが、部屋の中を少し探ることにする。

不健全な考えを振り払……ゲフン! もしかしたら、カッコいいアイテムがあるかもしれんからな。

ちょうど、小さな棚があった。


「何か入ってないかな?」


開けてみると、どす黒い衣服が一式そろっていた。

骸骨が描かれた服や、フード付きの長いコートとかだった。


「うーむ、服だけか」


もちろん持って帰るが、できればアイテムが良かったな。

着替えしかないらしい。

特に収穫なしか、残念だな。

いや、ちょっと待て。


「なんだ、これ? 見たことないアイテムだな。キノコか?」


引き出しの中に、不思議なアイテムがあった。

だが、全然カッコよくない。

なんか固いしブルブル震えているし、喰えるわけでもなさそうだ。

何より不健全そうなので、奥の方にしまっておいた。

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