第2話:呪い魔神は銀髪美少女

「だ、誰だ、お前は!?」


なんか、ものすごい美少女が出てきたぞ。

銀色の長い髪に、スラリとした体形、不自然に張り出した胸……ゲフン!

そして、最高にカッコいい骸骨の髪飾りをつけていた。

いいなぁ、俺もめっちゃ欲しい。


〔いや、誰って、呪い魔神ですが?〕

「……」


ですが? って、フレンドリーすぎないか?

世界を焦土にするとか書いてあったよな?

確かに、この娘は指輪から出てきたっぽい。

しかし、俺には信じられなかった。

だって本当に、ただの女の子にしか見えないんだよ。


「ほ、ほんとに魔神なのか? 魔神感ゼロなんだが?」

〔だから、そう言ってるのに〕


『ガガガガ!』 『ググギガ!』 『ゲッゲッゲ!』


とうとう、ハイオークが部屋に入ってきちまった。

全部で3匹もいる。

俺たちを見て、舌なめずりしていた。

もう逃げ場はない、まさしく絶体絶命だ。


「ちくしょー! 俺の人生もここまでかー!」

〔もう、ご主人様と話してるってのに。黙りなさいよね〕


そう言うと、銀髪少女はふぅぅっと息を吐いた。


『『アギャアアアアアアアアアアアア!!!』』

「うおおおお!」


その直後、ハイオークたちはどす黒い炎に包まれる。

あっという間に、燃え尽きてしまった。

灰や臭いすら残らなかった。


「す、すげえ……」


ハイオークはBランクだぞ。

しかも、あの数を秒で倒しちまうなんて。

ガイチューたちでさえ、全力で戦わないと返り討ちにあうレベルだ。


〔呪い魔神のミウ〕

「え?」


いきなり、魔神は右手を出してきた。

そのとき、俺は呪いのことを思い出した。



呪い:出てきた魔神に焼かれて死ぬ



ヤバイヤバイヤバイ、まだ危機は去ってないじゃねえかよ!

どっと冷や汗をかく。


「お、俺を殺す気か!? 頼む、見逃してくれ! まだアイテムを全然集めていないんだよ! え、ダメだ? クソっ、それなら、せめて、その髪飾りを俺に……!」

〔だから、私はミウって名前なんですが?〕

「そ、そうか…………すまん、取り乱したな。俺はレイク・アスカーブだ」


俺たちは、固い握手を交わす。

なんだ、これは。


〔これで私が、呪い魔神だって信じてもらえたかしら〕

「いや、それはもちろん信じるのだが……」


あんな格の違いを見せつけられたら、イヤでも信じるしかないだろう。

しかし、俺にはどうしても理解できないことがあった。


〔どうしたの?〕

「ひ、ひとつだけ聞いていいか?」

〔なんでしょう〕


ミウはきょとんとしている。

こうしてみると、普通の女の子だ。


「どうして、そんな見た目なんだ」

〔どうしてって、生まれたときからこのままよ。う~ん……困ったわね。ご主人様の質問には答えたいのだけど、本当にそれ以上、説明しようがないわ〕

「そうじゃなくてだな」


なんか、想像と全然違うぞ。

もっとこう……エグい悪魔とか血だらけの死神みたいなヤツじゃないのか?

でも、あの実力はSSSランクで間違いないだろう。


〔しっかし、ご主人様って顔に似合わず、積極的なのねぇ。いくら契約でも、結婚してくれとまでは言っていないのに。まったく、困ったご主人様〕

「結婚? な、何を言ってるんだ?」


ミウは恥ずかしそうに、顔を赤らめている。

そして、なんだかとても嬉しだそうだ。


〔もうヤダぁ、照れちゃって! ほら、これ!〕


ミウは自慢げに左手を見せてきた。

薬指に、あの指輪がついている。


「そ、それがどうした?」

〔だから、ご主人様も指輪つけてるでしょ? 照れてるフリはしなくていいのよ〕

「え?」


俺は自分の手を見る。

なんてこった。

よりによって、左手の薬指にハメちまったぞ。

こ、これのことか。

俺たちの世界では、永遠の伴侶になることを意味する。

しかもペアルックかよ。


ぐぐぐ……。


「おい、取れねーぞ、これ! どうなってんだ!」

〔取れるわけないじゃん、契約なんだから。もう、わかってるくせにぃ! じゃ、そういうことで末永くよろしく、ダーリン!〕


何はともあれ、仲間ができたのは素直に嬉しい。

俺はずっと天涯孤独だったから、ミウがそばにいてくれたら、それは毎日が幸せだろうよ。

しかし……。


「ダ、ダーリンって、おま」

〔いいじゃん! 細かいことは気にしないの!〕


ミウがむぎゅっとくっついてきた。

マジか、俺の妻はもう決まっちまったのかよ。

いや、確かにミウはかわいいのだが、そうじゃなくてだな。


男女の距離というものは、もっとゆっくり縮めていくものだろ?

最初はあいさつから初めて、知り合いになって、友達になって、デートして、手をつないで、それから……。

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