禁忌解呪の最強装備使い~呪いしか解けない無能と追放されたが、即死アイテムをノーリスクで使い放題~
青空あかな
第1章:【呪われた即死アイテム】編
第1話:なんか追放された
「レイク・アスカーブ! お前は今日で追放だ! 解呪しかできない無能ヤロー! 今すぐ失せろ! 消えてなくなれ! このゴミ虫が! ブヒャヒャヒャヒャ!」
「いや、ちょっと待ってくれ。いきなり追放ってなんだよ」
パーティーリーダーの、ガイチューが突然言ってきた。
ツンツンした真っ赤な髪に、牛がつけるようなドでかい鼻ピアスまでしている。
冒険者とは思えない、ヒャッハーな見た目だ。
俺はずっと聞きたかったのだが、それはオシャレなのか?
「だから、何度も言ってるだろ! 解呪しかできないヤツに用はないんだ! 万年Fランクの、素人冒険者様にはわからないだろうがな!」
「そんなこと言ったってさ、呪いにかかったら困るだろうよ」
ここはSランクダンジョン、<呪い迷宮>の最下層だ。
そして、俺たちは大都市グランドビールの冒険者パーティー、<クール・ブリーズ>。
涼風って意味なんだが、リーダーが完全に名前負けしている。
最近、Aランクになったブイブイ言わせているパーティーだ。
「いくら呪いが解けても、モンスターを倒せなかったら意味ないだろうが! ブヒャヒャヒャヒャ!」
「だけどさ、呪いは厄介な魔法なんだ。それくらいわかってるだろ? 普通なら、解除には大がかりな準備が必要なんだぞ」
「そんなわけないだろ! お前はいつも触るだけで無効化できてるだろうが! ウソ吐いてんじゃねえ!」
「いや、それは俺のスキルであってだな」
呪いはトラップみたいな魔法で、色んなダンジョンにある。
これが結構めんどうで、解除するには特殊なアイテムやらが必要だ。
なんでも、俺たちが使っている魔法とは、違うもので作られているらしい。
しかし、なぜか俺は、触れるだけで無力化できた。
まぁ、たしかに戦闘はできないが、そのぶん解呪をがんばっていた。
必死に努力したおかげで、今では遠くの呪いも無効化できるようになったのだ。
「たった今、お前は用無しになったんだよ! この<聖騎士のネックレス>がゲットできたからな!」
「あっ、それは」
そう言うと、ガイチューはドヤ顔でアイテムを掲げた。
俺がさっき見つけたヤツだ。
無理やり、ぶんどられてしまったのだ。
<聖騎士のネックレス>
ランク:A
能力:呪いを打ち消す
金色の鎖に、小さい盾みたいな紋章がくっついている。
そして、そこには騎士の兜が刻まれていた。
アイテムとか冒険者の色んなランクは、最高がSで最低がFだ。
つまり、これは超激レアアイテム。
「ほら、どうだぁ? お前の1億倍使えるアイテムだ。この大マヌケめ」
「お、俺にもくれるのか?」
俺はそおっと手を伸ばしていく。
が、ガイチューはひょいっとひっこめた。
「やるわけねーだろ、バーカ! お前にこんなレアアイテム渡すかよ!」
「なんだ、くれねえのか……」
解呪スキルがある俺は、こんなアイテムあっても意味ない。
ぶっちゃけ、デザインが気に入ったんだ。
俺はカッコいいアイテムが欲しくて、わざわざ冒険者をやっている。
騎士とか悪魔とか骸骨とかだ。
女なんかより、アイテムの方が大事って感じだな。
「おらよ! このポンコツが!」
「がはっ……なにを……!」
すると、ガイチューに思いっきり腹を蹴られた。
めちゃくちゃ痛くて、俺はしゃがみ込んだ。
ふつー、仲間を蹴るか?
ありえないだろ。
こいつはマジでヤバい。
「いい気味ね、レイク。戦闘力のないアンタには、ピッタリの仕打ちだわ」
女剣士のヒレツが楽しそうに言った。
「ガイチュー様を恨まないで。恨むべきは、自分の無力さ」
魔法使いのロカモーノが笑う。
「君は本当に弱いな。見ているこっちが恥ずかしくなるほどだ」
ヒーラーのツイシンまでバカにしてきた。
取り巻き女たちは、キャッキャッキャッキャッしている。
そろってガイチューにまとわりついていた。
おいおいおい、お前らはこんなヤバイヤツが好きなのか?
「ああ、そうだ。この辺りはモンスターが多いからな。気をつけないと死んじまうぞ。まぁ、お得意の解呪スキルで何とかしろや。ブヒャヒャヒャヒャ!」
「私たちに助けを求めようとしないでね」
「モンスターに食われろ」
「さようなら、レイク君。せいぜい頑張りたまえ」
そのまま、ガイチューと女どもは帰っちまった。
「ク、クソッ……あいつら」
しかし、そんなことを考えているヒマはない。
騒ぎを聞きつけて、モンスターが集まっていた。
Bランクモンスターの、ハイオークたちだ。
動きはゆっくりしているが、とにかく力が強い。
体も頑丈なので、かなり強い相手だ。
まだ離れているが、こっちに来ていた。
しかも2、3匹いる。
「うぐっ……まずは逃げないと……」
俺はとにかく走りだす。
だが、すぐに行き止まりになった。
目の前には壁、後ろにはハイオーク。
「ウソだろ、俺はここで死んじまうのかよ。まだカッコいいアイテムを、全然集めていないぞ」
そのとき、壁がおかしいことに気づいた。
うっすらと魔法陣が浮かんでいる。
呪いの魔法だ。
封印式が見えるので、呪いで作られている封印っぽい。
もしかしたら、俺のスキルで解除できるかもしれないぞ。
「《解呪》!」
俺が触ると、魔法陣は一瞬で消えた。
やっぱり、呪いだったようだ。
そして、壁がなくなって部屋みたいなスペースが出てきた。
な、なかなかに不気味だ。
「だが、今はここに入るしかねえ!」
中はがらんとして、少し広い部屋だった。
「武器はないか、武器はないか、武器はないか!?」
俺は血眼になって探し回る。
Sランクダンジョンなら、強い武器があるはずだ。
ひとつもなかった。
「出口、出口、出口!?」
隠し通路的な逃げ道があるかもしれない。
ひとつもなかった。
どうする、どうする、どうする!?
と思ったら、奥の方に何か浮かんでいた。
なんだ、あれ?
近づいて見ると、指輪のようだ。
しかしそれを見たとたん、俺は言葉を失い神に感謝した。
「な…………なんてカッコいいんだ」
蹴られた痛みとか<聖騎士のネックレス>とか、もはやどうでもよくなった。
骨みたいな銀色の輪っかに、グロイ骸骨の飾りがついていた。
全てのデザインが、俺の好みにつき刺さる。
しかも、どす黒いオーラまで出ていた。
……最高だ。
この指輪だけは、死んでも持って帰るぞ。
とそのとき、アイテムの前に、ぼんやりと説明書きみたいのが見えた。
原理はよくわからんが、まぁそういう感じだ。
【呪い魔神の指輪】
ランク:SSS
能力:一息で世界を焦土にする魔神と契約する
「ランクSSS!? そんなの聞いたことねえぞ!?」
伝説の聖剣ですら、ランクSだぞ。
SSSなんて、規格外もいいところだ。
の、能力もすごそうじゃないか。
一息で世界を焦土にする魔神……。
俺は想像を膨らます。
どんなヤツだろう……角とか生えてる悪魔みたいなんだろうな。
カッコいい上に、めっちゃ強いアイテムときた。
これはもう、俺の勝ちだと言っていいな。
しかし、まだ続きがあった。
呪い:出てきた魔神に焼かれて死ぬ
「はあ!? それじゃ使えねーだろ! なんだ、この矛盾だらけのアイテムは!」
いくら魔神が強かろうが、俺が死んだら意味ねーっての。
『ガアアアア!』 『ググググ!』
しかし、少しずつハイオークが近づいていた。
「あー! なんでこうなっちまったんだー!」
俺は頭を抱え、天を仰ぐ。
いや、正確に言うと天井なんだが。
ちょっと待て、呪い……?
そのとき、俺はあることに気づいた。
俺の解呪で、呪いだけ無効化できるんじゃないか?
「でも、SSSランクの呪いだぞ?」
俺はちょっと不安になった。
こんなレベルの高い呪いなんて、見たこともない。
だが……さっきの魔法陣だって、相当レベルが高いはずだ。
そして、俺が今まで無効化できなかった呪いは、ひとつもなかった。
「ほ、本当にいけるのか……?」
ハイオークはすぐそこに迫っている。
覚悟を決めるしかない。
「もうどうにでもなりやがれ!」
思い切って、俺は指輪をはめる。
すると、いきなり輝いたので、思わず目をつぶった。
「な、なんだ!?」
目を開けると、銀髪美少女が立っていた。
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