推し活動していたネットアイドルが幼なじみだったのですが
花月夜れん
第1話
僕は二宮春樹、高校2年生。ゲームが得意です。
「ねぇ、はる君。このゲームしたことある?」
小学生からずっとゲームしてたけど、この時ほどやってて良かったと思ったことはない。
眼鏡をかけているがすごく可愛い女の子から、ゲームを教えて欲しいなんて言われる日がくるなんて。
話しかけてくれた彼女は幼なじみの中井由実。
「あります! それ得意です」
嘘です。彼女が見せてきたのは女の子向けゲームだった。だけど、僕はうんと力強く頷いた。あれ、でもこれは女の子向けゲームをする僕って事になってしまうのでは?
「良かった。教えてくれる? どうしてもこの人とくっつきたいんだ」
「え、どれ?」
彼女が指さしたのはなんだかキラキラした男キャラ達の中に一人いる、他とは真逆の暗そうな男キャラだった。
「これ?」
僕が聞くと、由実はこくんと頷いた。
あ、やっぱり似てるな。
僕の大好きなネットアイドル、
今ならネットを調べればルート選択はすぐに出てくるだろうけど、僕はその事を言えなかった。
望結ちゃんに似てる彼女ともう少しだけ話したかったから。
◇
ネットアイドル二年目、私は待ち時間の暇潰しにスマホゲームをしていた。
「あ、何だか似てる」
幼なじみの男の子。二宮春樹。
昔から、ゲームばかりしている。私はゲームしてなかったから一緒に遊ぼうって誘っても全然相手にしてくれなかったっけ。でも、――。
「忘れ物したの?」
「大丈夫? 先生呼んできてあげる」
「ゆみちゃん、大好き」
小学校低学年の頃はなにかとかまってくれてたっけ。
遊んでくれてたらもっと仲良く出来てたのかな。
アイドルになって、恋愛しちゃ駄目って言われてる。
だけど、高校二年生。もうそろそろ引退だろう。
「恋愛、しちゃおうかな」
◆
僕の一日は望結ちゃんのSNSをチェックして始まり、彼女の配信を見て、彼女におやすみのコメントをして終わりを迎える。
「引退します!!」
……え?
なのに、今日は本当の終わりを迎えた。僕は推しの引退宣言を聞かされたのだ。
「来月、引退パーティーをネット配信するから見にきてね。望結は皆といつでも一緒だよ」
望結ちゃんはそう言うとすぱっと落ちていった。
推し活が足りなかった?
もっともっと頑張ってあげてたら続けてくれたのかな。僕は凹みながら、今まで集めた望結ちゃんグッズを(永久保存版ではない方を)愛でる。
そっか、僕も卒業しないとか。
「はる君」
学校で由実に話しかけられる。声も似てるから、僕は我慢してた涙が急にどばっと流れ出した。
「うわわ、どうしたの?」
「ご、ごめん。ちょっと」
中庭。女の子がよくお昼ごはんを食べてる場所。男は基本食堂だ。今日は少し肌寒いのか人は少ない。
「はー、そっか。好きだったアイドルが卒業しちゃうんだ」
「うん」
僕は女の子に何を話しているんだろう。気持ち悪くないのかな。僕がアイドルオタクだって。
「推し、私に変えてみない?」
「え?」
「はる君だけのアイドルにならなってあげてもいいけど」
「え?」
由実はじーっとこちらを見てくる。
「望結は皆といつでも一緒だよ」
「そのセリフ」
「だけど、一人の男の子に恋をしちゃったんだ」
◇
「今日も推しが尊いです。ありがとうございます」
「だから、それはやめてよー」
「あ、ごめんなさい」
春樹はそう言って笑いながら頭を下げる。
「はる君が私の推しなんだから」
「いやいや、由実ちゃんが僕の推しで」
うーん、推しはどっちだ論争はいつまで続くんだろう。
私は彼のほっぺたをむにっとつついた。
それから、キスした。
推し活動していたネットアイドルが幼なじみだったのですが 花月夜れん @kumizurenka
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