ある勇者の秘密
正義は勝つ。
私の人生を語るのならば、この言葉が1番だろう。
この世界は正しいことで回っている。
そうでなければならないのである。
ドラゴンよ、お前はどれだけの人間を今まで殺してきたのだ?
どれだけの人々が、お前によって痛めつけられたと思っているのだ?
そんなお前が、子供を産み育てることなど、できるわけがなかろう!
お前の子供など、お前と同じか、もっと凶暴なモンスターでしかないのだ。
殺してはならぬ理由が、どこにある?
お前たちがいることでこの先、もっと死人が出るのだからな!
私が一人森に入った時、中はしんとしていた。ドラゴンがどこかに隠れているのだろうと思い、斧を思いきり地面に振り下ろした。地震のような音が響き、鳥がギャアギャアと喚いた。
するとどこからか、生き物の鳴き声のようなものが聞こえた。
私は途方もない満足感を抱え、その場所へ向かった。
子供のドラゴンを殺した。
すると母親らしき、巨大なドラゴンが飛んできたのだ。奴は私を襲おうとした。
死闘の末何とか勝利を果たした私は、ドラゴンの肝臓を国に持って帰った。
国民は皆大喜びで、大泣きする者もいた。女性達が私の腕を取り、酒場は私の名前で溢れた。
私は次に「ヒッデーナ国」の魔王を倒し、より多くの人々を救うと決めた。
人々はそんな私にまた涙するのだった。
そして今、私は「ヒッデーナ国」の城の前に辿り着いた。
閑散としたこの国に、通行人は誰一人いなかった。こんなに国を寂れさせるだなんて、どんな神経をしているのだろう。
民に働かせておいて自分はうまい飯を食っているのだろう。畜生の類だ。
私は斧を持ち上げる。
「我が正義はここにあり!!!」
腹の底から叫ぶ。城の空気を揺さぶる気持ちで。
私の正義が、私の名前が、この先永遠にこの世界に残ることを祈る。
私もゆくゆくは、王になる男だ。
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