おまけ8 暇な時こそ行動すべし。

「そろそろ、アレを解禁するべき時が来たか・・・・・・」


【私はまだ時期尚早だと判断致します。確かに、目下の交通問題を考えれば改善は必要だと思いますが、まずは下準備を行うべきかと。】


「下準備、というと?」


【具体的には、存在や危険性といった情報を、国民だけでなく世界中に認知させる必要性があると思います。】


「なるほど、一理あるな・・・・・・」


 アイにアドバイスを貰って、俺はそれをどうすればより多くの人に伝える事ができるかを考えた。より面白く、より楽しく、そして何より派手に、存在そのものを認知させるだけでなく、できれば多くの国民に興味を持ってもらいたい。

 となれば、俺がやるべき事は一つしかない。


「よし、サーキットを作って、カーレースを開催しよう。」


「「「は?」」」

「ちょっとレオルド、勝手に話を進めないでくれる?これじゃあ何もわからないわ。」


 意見をまとめた俺は、早速その日の夕食でヘレナやイレーナといったいるメンバーに計画を提案することにした。


「あぁ、すまんすまん。まずは今ウチの国、特に大都市で起こっている問題の一つで、通勤ラッシュ時に公共交通機関が頭がおかしくなるほど混雑した結果、様々な問題が発生しているのは知っていると思うが、俺はその解決策として自動車の個人所有を認めようと思う。」


「「「っ!!!」」」


 ほぼ地球の歴史と同じように技術の発展をしてきたハーンブルク連邦ではあるが、唯一自家用車の技術だけは地球の歴史と大きく異なる。というのも、俺はトラックやダンプカーのような企業が人や物を輸送する手段として自動車を国から借りる事は許可したが、自動車の個人及び企業の所有については意図的にストップをかけ、禁止していた。

 もちろん、バスやトラック、タクシーなんかは普通にハーンブルク連邦の道路を走っているし、自家用車を作る技術ももちろんがあるが、俺はあえて作っていなかった。というのも、仮に個人所有を認めた場合、それがこの世界にどのような影響を与えるかわからなかったからだ。確かにハーンブルク連邦は地球と同じような技術の発展を辿ってきたが、それはハーンブルク連邦と一部の国だけであり、世界の半分近くが未だに電気を一切使わない生活を送っていた。言うならば、ハーンブルク連邦とその他の国の間にはそれだけの技術力の差が存在し、とてもじゃないが世界基準を作れる状況ではなかった。

 グローバルスタンダードという言葉はかっこいいが、レベルが低い相手に合わせることほど間抜けな話はない。

 そんなわけで、俺は自動車の個人所有を認めず、企業が自動車を使いたい時も貸し出しという形にとった。今もまだ、全面解禁の方はアイと同じで時期尚早だと考えているが、最近は規制緩和ぐらいならしてもいいんじゃないかと思えるようになった。


「と、いうわけで、俺は国民や世界に自動車の存在を広く知らしめるためにも、俺たちは計画を実行に移す必要があると思う。」


「話は理解したわ。でも、現状の問題が交通網の麻痺だけなら、わざわざ自動車問題を解決しようとしなくてもいいんじゃないかしら。携帯電話の個人所有を認めなかった時もそうだけど、ハーンブルク連邦の国民ならともかく他国は政府も国民も絶対についていけなくなるわ。今急ぐ必要は何処にも無いんじゃないかしら。」


 イレーナの指摘は正しい。だがそれは、言うなれば問題の先送りであり、妥協案でしかない。

 そしてもちろん、行動を決断したのにはとある理由があった。


「急ぐ理由ならちゃんとあるぞ。」


「いったい何よ。」


「それは、最近は比較的暇な人が多く、大きな計画を実行に移すまたとない好機だからだ。どうせいつかはやらなきゃいけないことだ。ならば、今片付けてしまうのは賢い選択だと俺は思う。」


「・・・・・・一理あるわね。」


 俺やイレーナはもちろんのこと、他のお嫁さんたちや子供たちは、立場上忙しい事がほとんどであり、こうやってゆっくり紅茶を飲める機会はほとんどない。そんなわけで、俺としてはこうして余裕のある内に問題を片付けたいと思った。

 もちろん、ただ単にカーレースがやりたいわけではない。

 俺は本気だ。


「場所と予算はどうするのよ。」


「場所は未定だが、人が少なくてアクセスがいいところがいいな。予算は・・・・・・レンが何とかしてくれるはずだ。」


「ちょっと父さん!聞いてないですよ!」


「今言ったぞ?」


「そういう問題じゃないですよ!」


 すまんな、レンよ。今回もありがたく王国の金庫から金を強奪、じゃなくて拝借させていただこう。もちろん、返すつもりはいっさいないがな。


「また、無理を為さるのですか?レオルド様」


「大丈夫だ、安心しろヘレナ。危なくはない・・・・・・はずだ。」


「はず?!」


「安心しな、ヘレナ。流石のレオルドも、今回は無理はしないはずよ。」


「イレーナ・・・・・・」


 イレーナは、ヘレナを宥めると同時にこちらを睨んだ。どうやら、サーキットを作ること自体はオッケーなようだが、レーサーになることは自粛した方がいいのかも

 しれない。

 俺は、一人でそんな事を考えた。


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どうでもいい話

なんだかんだで毎週更新している気がする

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