おまけ7 目指せ運動不足解消その2
「ねぇ、何で42.195なのよ。」
「知らん。決めたのは確かに俺だが、考えたのは俺じゃない。」
「何よそれ、どういう事よ。」
俺や俺の家族の運動不足を解消するために、国中を巻き込んだマラソン大会が開催される事となった。
今回設けられた枠組みは3km、7km、10km、20km、フルマラソンA、フルマラソンBの6つで、連邦国民はそれぞれ希望を出し、定員ごと抽選によって出場選手が決められた。フルマラソンについては、希望者が多かったためAとBの2つのコースが用意され、Aコースはシュヴェリーンをぐるりと一周するコース、そしてBコースはハーンブルク鉄道に沿ってミドールからシュヴェリーンまで走るコースだ。審議の結果、体力に自信のある俺、イレーナ、クレア、フィーナはフルマラソンに参加することとなり、お母様を含めた残りのメンバーは10kmを選択した。
ちなみに予算については、俺とお母様タッグを組んだ結果、見事レンを頷かせることに成功し、全額国が負担することとなった。レンには悪いことをしたなと思うが、国を巻き込んだことは、後々必ずプラスに働くので、今回は勘弁して欲しい。
「雨が降ったらどうしようと思っていたけど、晴れて良かったですね。」
「あぁ、ちょうどいい天気だな。」
軽くストレッチをしつつ、身体を温めて準備を整える。
この日のために、俺は自身へのトレーニングを入念に行なってきた。前世も含めて、フルマラソンなんか走ったことがなかった俺は、アイのアドバイスを聞きつつ、整えた。
「てっきり俺は、フィーナは10キロ組に加わると思ったが、意外と体力に自信があるんだな。」
「はい、実は私たち吸血鬼は人間よりも体力がありまして、走り続けることは得意なんですよ。」
「初耳なんだが・・・・・・」
「聞かれませんでしたので。」
夫婦になって、既に10年以上経っていたが、吸血鬼にそんな特徴があるなんて初めて知った。前々から、吸血鬼という種族名なのに、血よりも普通のご飯の方を好んで食べる変な種族だなとは思っていたが、そんな隠し要素があったなんて知らなかった。
今になって考えてみれば、色々と伏線となるエピソードは多かったような気がする。例えば、夫婦の営みとか・・・・・・
【変なことを考えていないで、最後の仕上げをして下さい、レオルド様。貴方がいないと、マラソンが始まりません。】
りょーかい。
フィーナたち3人にひと言声をかけた後、俺は台に登った。そしてマイクを受け取ると、国民に向けての演説を行った。
「おはよう諸君、私だ。今日は記念すべき第一回シュヴェリーンマラソンに参加してくれてありがとう。私は、諸君らが自らの意思でこのイベントに参加してくれたことを嬉しく思う。中には何らかの理由で強制的に参加する羽目になってしまった者もいるかもしれないが、その者たちにはおめでとうと言っておこう。このイベントは、きっと諸君らの人生に良い影響を与えるだろう。」
これは風の噂で聞いた話だが、旧SHS内でマラソン出場者を決めるくじ引きが行われたらしい。約1割のメンバーが強制参加となったと聞いている。
「さて、マラソンをスタートする前に、私から1つ、諸君らにアドバイスしたいことがある。それは、マラソンは他人との戦いではなく自分との戦いであるということだ。誰かよりも早く走れたとしても、何も偉く無い。大事なのは、自分に打ち勝つこと、克己することだ。そのことを頭に入れて、本競技に望んで欲しいと思う。」
たくさんの拍手を浴びながら、俺は元の位置へと戻った。選手宣誓を聞きつつ、今か今かとスタートの合図を待つ。
ちなみに、スタートの合図役は、俺の息子であり現国王でもあるレンが務めることとなっている。レンはもちろん今回のマラソンには参加せず、代わりにアイの分身体と共に裏方を担ってもらうことになっている。まぁ、俺やお母様といった主要メンバーのほとんどが選手として出場しているために、この規模のイベントを取りまとめる事ができる上で、手の空いている人物がレンぐらいしかいないので、仕方のない人選ではあったが・・・・・・
「では・・・・・・レディ、ゴーっ!」
スタートの合図とともに、俺たちは一斉にスタートした。Aコースの定員は1万人なので、1万人の選手が一斉にスタートしたことになる。
ちなみに、Bコースの方の定員は1万5000人、10kmは5000人、7kmと3kmはそれぞれ2500人の合計3万5000人が、定員となっている。
最初は定員に達するかどうか、微妙なところだなと予想していたが、蓋を開けてみればどの種目も応募数は3倍以上大盛況で、抽選を勝ち抜いた運の良い者たちだけが参加を許された。
俺たちが走るAコースは、世界の中心都市であるシュヴェリーンの街並みを見ながらぐるりと一周するコース。スタートであるバビロン宮殿前から、シュヴェリーンの都心や副都心を回って再びバビロン宮殿前へと戻って来るコースで、最も抽選倍率が高いコースであった。
「実際に走ってみると、色々な発見があるものだな〜」
「はい、普段の移動は、鉄道か自動車なので、新鮮です。」
「確かにな。」
それなりの重要人物である俺たちが、公共の道を歩いたり走ったりする機会は、ほぼ0に等しい。お父様から家督を譲られる前は、そんなことは気にせず好き放題していたが、国王となってからは、こういうことは控えるようになった。成長したというべきか、冒険心を失ったというべきか、あの時からこうして自由にのんびりする機会は大きく減った気がする。ひさびさの羽を伸ばせる出来事、心が躍った。
「楽しめていますか、レオルド様」
「あぁ、もちろんだとも。」
その後、俺はそれなりのタイムで完走することに成功した。マラソンイベントの方も無事成功し、最高のイベントととなった。
*
「何というか、終わって振り返ってみると、呆気なかったな〜」
「それで?肝心の運動不足の件は解消できたの?」
「半々かな。」
「どーゆーことよ、それ。」
「運動不足解消はできたけど、正直なところ全盛期からは程遠い。真に運動不足解消をしたいなら、毎日コツコツトレーニングをして習慣をつけるに限るなと思ってな。」
「なるほどね、関しては同意するわ。」
「というわけで、3ヶ月後に開催されることになったテラトスタマラソンに参加しようかな。今度はゲストとして。」
「仕方がないから、私も参加してあげるわ。」
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どうでもいい話
というわけで、皆さんも運動をする習慣をつけましょ〜
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