おまけ5 おもちゃのテストその2

 比較的飛び地の多いハーンブルクの中で、最も人口が多い地域は何処かと聞かれれば、まず間違いなくファルティオン州と答えるだろう。

 旧ファルティオン王国の王都、フォルテを中心に湾岸部と都市部を切り抜いた部分であるファルティオン州は、元々の人口とハーンブルクの卓越した技術力が合わさった結果、世界有数の大都市圏が形成されていた。

 さて、そのファルティオン州の中心、フォルテから南東方向におよそ1000km地点に、今回の遠征の標的となる海賊のアジトを発見した。

 この場所は小さな島々が点々と存在しており、波が複雑かつ急だったり、座礁の危険性があったりで近隣諸国による調査が十分に行き届いていなかった。そのことに目をつけた俺が、改めて詳しく調査してみたところ、案の定だった。

 さて、そんなわけで俺は自慢のおもちゃを率いて大海原へとやって来た。


「いかがでしょうか、レオルド様、我ら第8艦隊は。」


「快適だよ。あとは、ハーンブルク軍一の大金食らいなところさえ直れば完璧だな。」


「これは手厳しい。」


 現在ハーンブルク海軍には、第一から第八までの8つの艦隊が存在している。それぞれが担当の海を監視しており、今も世界の警察としての役割を担っている。

 まぁ今回、比較的大規模な海賊の発生を許してしまったわけだが・・・・・・


「まもなく、目標の地点まで20kmほどの地点でございます、レオルド様。」


「わかった。じゃあ予定通り、この辺りで艦隊を止めてくれ。作戦を始める。」


「了解致しました。推力を停止します。」


 俺は艦長に指示を出すと、命令はすぐに艦隊全体に伝わり、速度を落とした。今日俺が連れて来た第八艦隊は、ハーンブルク軍の8つの艦隊の中で唯一2つの空母が所属している艦隊で、航空機の積載数が世界一となっていた。主にファルティオン州周辺の海を防衛する事がことが担当であり、膨大な海を見るためにそれ相応の装備が備わっていた。


「よし、じゃあ俺はそろそろいってくる。」


「はっ!艦隊は我らにお任せ下さいっ!」


「あぁ、頼んだぞ。くれぐれも、慌てるなよ。」


「肝に銘じます。」


 飛行甲板へと向かうことにした。そこにはもちろん、シュヴェリーンから持って来た俺のおもちゃが8機積まれており、既に、いつでも出撃できる状態となっていた。

 俺が甲板に顔を出すと、パイロットたちはそれぞれ持ち場へと向かった。俺も、そのうちの一機へと乗り込んだ。いつでも出撃ができるように、俺は戻らずにコックピットから指示を出すことにした。


「作戦成功の知らせはまだ来ないのか?」


『はい、まだ何も・・・・・・』


「そうか。では、引き続き頼む。」


『了解っ。』


 まずは作戦の第一段階、敵の船を寝ぐらから引っ張り出す。岩かげに隠れた船が相手では、航空機による攻撃はできないので、そのための策を打つ。具体的には、ひと足先に飛ばした爆撃機部隊で敵のアジトの爆撃を行う。

 できるだけ、敵の船にダメージを与えずに敵のアジトを焼く。そして敵が、アジトを放棄して船で脱出をするように誘導した。

 実はこの海賊、調査の結果2つ目のアジトを持っている事が発覚した。1つ目のアジトから、複雑に海流に乗ってずっと進むことによって到達することができる小さな島にあり、宝物庫としての役割を担うと同時に緊急避難用のアジトとしての役割を持っている。

 そんなわけで、第一段階の方は案外楽に成功した。


『レオルド様、偵察機より作戦の第一段階は成功したとの通達が入りました。作戦通りにお願いします。』


「わかった。んじゃ、そっちも焼け跡の調査を頼む。もちろん、残っている人間がいるかもしれないから、くれぐれも慎重にな。」


『了解!』


 さて次は、作戦の第二段階。

 敵がアジトを捨てて第二の基地へと向かっているところを、俺の乗るジェット戦闘機で叩く。敵は今現在、おそらく全力で退避中であろう。その横っ腹に魚雷をぶち込んで沈める。


「準備はできているかな?」


【システムオールグリーン、いつでも飛べます。】


「よし、それはけっこう。」


【ではまいりましょうか、レオルド様】


「あぁ。」


 準備が整った俺は、無線を使って他のパイロットへと確認を取った。そして、エンジンに火をつけた。

 既に、パイロット全員との作戦の共有を終えており、あとは飛ぶだけという状況であった。

 そして・・・・・・


「take offだ。全機行くぞ。」



 *



 その後、海賊狩りは呆気なく片付いた。

 敵は、船5隻全てに魚雷が撃ち込まれると、すぐに白旗をあげて降伏を示した。

 まぁ、追い詰められた彼らには、降伏するか、海の藻屑になるかしか道は残っていなかったので、仕方の無い選択肢ではあった。

 結局、海賊は全員拘束され、ファルティオン州の法律によって裁かれることとなった。


「どう?少しは気晴らしになった?」


「なったよ。まぁ、ちょいと物足りなくはあったけどな。」


「ただの海賊に、何を期待しているのよ。」


「悪かったな。でも、どーせなら、せめて対空砲火ぐらい欲しかったな〜」


「死ぬ危険性がある作戦だと、ヘレナやレンは参加を許さなかったと思うわよ。」


「確かに・・・・・・」


 ___________________________________

 どうでもいい話

 立場って難しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る