おまけ ハーンブルクに足りない物
あんまりよく覚えていませんが、未公開のまま残っていましたので公開しておきます。
時系列的には、第一部と第二部の間あたりだと思います。
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「何か足りない気がする・・・・・・」
仕事終わり、疲れ切った身体を癒すためにバビロン宮殿の中にある自慢のお風呂を楽しんでいた俺は、ふとそんな事を思った。
いったい何が足りないのかはわからなかったが、思わずそんな言葉が飛び出た。それを聞いて、隣で一緒に湯舟に浸かっていたクレアが、不思議そうに尋ねた。
「いったい何が足りないんですか、レオルド様」
自らの身体を使ってアピールしながら、クレアは少し不満そうに尋ねた。俺は急いで彼女の誤解を解く。
「クレアじゃなくて、このお風呂がなんか物足りない気がするんだよ。」
「ふふふ、わかっていますよ。ですがレオルド様、以前も同じような事を言って、お風呂場の近くに常に牛乳を用意させましたよね。まだ何か足りないんですか?」
「風呂上りの牛乳は格別だろ?それは人類共通なはずだ。」
「まぁ確かに、私もそう思いますが・・・・・・」
先日、いつもの突然の思い付きで、自宅のお風呂の近くに牛乳を設置するように命じた。幸い、牛乳という飲み物の存在はこの世界に存在し、すぐに確保できた。その結果、いつの間にか領民の間にもお風呂上りに牛乳を飲むと良いという情報が広まり、牛乳の需要が一気に伸びた。同時に、都市内の銭湯の数が上昇して、領民の清潔さが上がり、病気が減った。
うん、良い事しかない。
【マスターにあこがれる領民が多かったがために、良き文化として定着しましたね。想像以上です。】
俺もそう思う。
お風呂に入る文化とか、手を洗う文化とか、歯を磨く文化とかってやっぱり俺が頑張って広めないとだな、と思っていたが思ったよりも簡単に広まった。ハーンブルク領の広告部が、学校や新聞などを使ってそれらの行為の必要性を広めたりしているらしい。
俺も顔を出す事があるが、最近はハーンブルク領のイベント担当であるお母様とユリアが管理している。
最近では、講習会やイベントなんかも企画しているらしい。
さて、話を戻そう。
「何が足りないんだと思う?」
「わからないです・・・・・・正直、私は毎日お風呂に入れるだけでも十分幸せだと思っていたので・・・・・・」
「う〜む、わからん。」
アイ、何かわかるか?
【おそらくですが、サウナではないでしょうか。】
それだっ!
というか、分かっていたなら先に言ってよアイっ!
【聞かれませんでしたので・・・・・・】
おいおい
流石に今日用意するのは不可能だと判断した俺は、その日は早く寝る事にし、翌日は朝から領内を走り回った。
流石に我が家にはサウナ室を作る場所が無かったので、ハーンブルク家が経営する銭湯に直行、サウナ室の建設をすぐにやらせた。
流石に、1日で完成する事は無かったが、持てる最大限の力を発揮して、工事をさせた。
思ったよりも早く完成し、まずはお試しという事で俺とお母様とクレアの3人でサウナを体感しに行った。
もちろん、一般客は男女別だが、俺たち3人は特別に一緒に入った。
これでお母様に好評だったら、すぐにでも自宅に造られる事になるだろう。そんな事を考えていると・・・・・・
「これ、いいですね、レオルド・・・・・・」
「最高ですね、レオルド様・・・・・・」
「楽しんでいただけているようで何よりです・・・・・・」
うん、知ってた。
多分こうなるだろうなって思ってた。
【流石マスターのお母様ですね。】
どうやらお疲労がお溜まりになっていたようだ。
「これ、我が家にも必要ですよね、クレアさん」
「そうですね、お義母様」
「だそうですよ、レオルド」
2人とも、絵に描いたようなハマりっぷりである。
「お母様、ですが問題が・・・・・・」
「何が問題なのですか?」ふ
「あの、作る場所が無いのですが・・・・・・」
もう一度いうが、場所が無いのだ。お風呂場は、入浴中無防備になる事からバビロン宮殿の内部にある。よってお風呂場の周りにはそれぞれ部屋があり、作る場所が無いのだ。
というわけで俺は、自宅に作る事を諦めていたわけなのだが・・・・・・
「では、隣の使っていない執務室を取り壊して、サウナ室にしましょう。できますね?」
「は、はい、できますけど・・・・・・」
「では2週間以内にお願いしますね。」
「りょ、了解です。」
その日から、俺は再びサウナ作りに勤しみ、何とか納期に間に合わせる事ができた。もちろん、水風呂の方も忘れてない。
最近では、ほぼ毎日のようにお母様が利用するようになっている。
数ヶ月後、ハーンブルク領中のほぼ全ての銭湯が自身の風呂にサウナを設置するほど大流行した。
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どうでもいい話
良ければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。わりと切実に・・・・・・
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