第9話 sideセリカ&アキネ2

 こんばんはセリカ君。

 先日、ハーンブルク連邦が管理する研究所の一つから、ハーンブルク連邦軍の新兵器の設計図が盗まれた。

 この設計図が国内外で暗躍するテロ組織に渡れば、これまでに類を見ない大規模なテロ行為が行われることが予想される。もちろん当局としては、このような事態を易々と見過ごすわけにはいかない。

 そこで今回君に与えられた任務は、新兵器の設計図を奪還する事だ。

 72時間以内にメンバーを集めてチームを作り、この任務を遂行せよ。

 例によって、君もしくは君のメンバーが捕えれ、あるいは殺されても当局はいっさい関知しない。

 このメッセージは5秒後に自動で消滅する。

 成功を祈る。


「・・・・・・」


「その様子じゃ、私たちの休暇は当分先のようね。」


「えぇ、そうね。」


 私は、その場で思わずため息を吐いた。この任務が終われば休暇を貰えるという話であったが、どうやらその話はどこかに消えたみたいだ。

 ほんと、全ての犯罪組織は、その身勝手に付き合わされる私たちの身にもなって欲しいものだ。おかげさまで、私たちはほとんど無休で色々な国々を飛び回る羽目になっている。


「それじゃあ今回も、サクッと解決しちゃいますか。」


「はいっ!頑張りましょう!」



 *



 トリアス教国滅亡を受けて、ハーンブルク領に出稼ぎに来た私たちは、そのままハーンブルク連邦に住みつく事になった。最初は、持ち前の武力を生かして軍人として活躍していたが、ある時上官から転属を提案された。聞かされた転属先は、ハーンブルク領諜報機関通称“SHS“、誰もが憧れるエリート機関であった。以前、領土が拡大したため活動範囲が広くなり、人手不足になったためSHSが新たなメンバーを募集しているという噂を聞いた事があったが、まさか元敗戦国の人間である私たちにまで声がかかるとは思わなかった。

 姉妹で話し合った結果、私たちはSHSに入る事にした。最初は慣れない事も多かったが、少しずつ仕事にも慣れ、私たちは様々な方面で活躍した。

 そしてそれは、SHSが解体され、連邦警察となった今でも・・・・・・


「こちらホルス、ターゲットが表に出てきた。全員、襲撃用意。」


 私たちは、無線と呼ばれるレオルド様が極秘に開発した装置を使ってコマンダーから指示を受け、行動している。『ホルス』というのはもちろんコードネームで、私たちは基本的にコードネームでお互いを呼び合っている。『ホルス』は私たちの司令塔で、実行役である私たち姉妹に対して最適の指示をくれる。

 イヤホンから伝えられた情報を元に、襲撃地点へと移動した。


「そろそろだわ。」


 指示された方を見ると、標的と思われるアタッシュケースを持った男が駅から出てきた。アタッシュケースの大きさを考えると、おそらくあの中に今回盗まれた設計図が入っているのだろう。周りに目を向ければ、男の護衛と思われる奴らが2、いや3人いる。全員、無関係のフリをしているが、独特の雰囲気までは残念ながら抜けていない。まずは、周りの奴らの排除が最優先だろう。

 ここは人通りが多いので、男たちが裏道に入るタイミングを待つ。

 裏道に入った、今だ。


「あの〜すみません。道に迷っているのですが・・・・・・」


 迷子を装ったアキネが、ターゲットへと近づく。我が妹ながら、素晴らしい演技力だ。ターゲットとその護衛、4人全員がアキネの方に視線が移ったタイミングで、後ろからゆっくりと近づく。


「急いでいるので。」


 そして、護衛の一人がアキネのことを振り払おうとしたタイミングで私は前に出る。右手にはハンドガン、左手にはスタンガンを装備する。できるだけ、殺さないようにという話であったがここは屋外だ、銃声が聞こえてしまうため銃はできるなら使いたくない。上手くターゲットに近づいて、スタンガンを使って一撃で相手を沈める事を狙う。


「あの、駅はどっちでしょうか・・・・・・」


 アキネは引かずに、さらに一歩前へと踏み込む。それによって、護衛達の注目が、さらに高まる。

 それこそ、音を消して背後から忍び寄る私に気づかない程度には・・・・・・


「駅?駅なら向こうだが・・・・・・」


 アキネの出した駅というワードは、標的がアキネの言葉を無視せずに教えてくれえるかもしれないギリギリのライン、教えてもらうことが目的ではなく、脳のリソースを一瞬でも奪う事が目標だ。

 敵が振り返った直後、領域の外側から相手を戦闘不能へと追い込む。


「ぎゃあぁぁあ!」


 護衛たちが武器を取り出す前に、一人ずつ確実に沈める。そして、二人目を沈めたタイミングで最後の護衛は標的を守るように正面に立ち塞がった。

 全て計算通りだ。護衛の視線から、完全に男が消えた。

 こうすれば、囮役であった私の妹が、標的を自由に攻撃できる構図が出来上がる。


「し、しまった!」


 気づいた時には、もう遅いのだ。



 *



 こんばんはセリカ君。

 君が奪還した設計図を持ち帰って調べたところ、サーマルディア王国王都サーマルを拠点して活動している犯罪組織『インジケート』がサーマルとリバスタ間の線路を爆破しようとしているという情報を掴んだ。SHSはこの事を重大な脅威と捉え、『インジケート』の壊滅を計画した。

 そこで今回君に与えられた任務は、敵のアジトの正確な位置を特定する事だ。

 48時間以内にメンバーを集めてチームを作り、この任務を遂行せよ。

 例によって、君もしくは君のメンバーが捕えれ、あるいは殺されても当局はいっさい関知しない。

 このメッセージは5秒後に自動で消滅する。

 成功を祈る。


「どうやら、続きがあるみたいだね、お姉ちゃん。」


「えぇ・・・・・・」


 任務を成功させたと思ったら、今度はサーマルに行かなければならないらしい。

 今更ながら、SHSはやりがいはあるがブラックな職場だ。

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 どうでもいい話

 正直忘れていた人多そう。まぁ、私もだけど。

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