第2話 旅行
ハーンブルク連邦では現在、ハネムーンラッシュが起きていた。ユリウスとクレアが結婚記念にハワフ島を訪れた事をきっかけに全国的に広がり、今ではブームになっていた。新婚夫婦はもちろんのこと、既に結婚して何年も経っている夫婦もハネムーンに行ったりしていた。ちなみに、旅行先はだいたいシュヴェリーンか、ジオルターンか、テラトスタだ。鉄道網の発達によって、シュヴェリーン州ハーンブルク州ジオルターン州ジア州の4州間の移動がかなり楽になった結果、気軽に行けて楽しめるということで人気を博している。
そして、人は影響されやすい生き物であり、俺の嫁さんたちも例に漏れず全員がハネムーンを希望していた。特にヘレナは、亜人国家に行ってみたいらしく、かなり前からハネムーンに行くならファルティオン州が良いといっていた。と、いうわけで今回俺たちは、ファルティオン州に観光に行く事になった。
「ここがファルティオン州か・・・・・・」
「大きな街ですね・・・・・・」
以前来た時は仕事が第一の目的だったため、観光なんてしている暇はなくゆっくりできなかったが、今回は色々と楽しめそうな気がした。
世界は狭くなった。ハーンブルク鉄道の開通によって、連邦国民は1日あればハーンブルク連邦の様々な大都市に気軽に移動できるようになった。また、大都市にある飛行場から、世界中にあるハーンブルク連邦の空港に行く事もできる。航空機の一般利用はまだ始まっていないが、それもおそらく時間の問題だろう。ちなみにアイは、5年以内に旅客機が完成して、定期便が運行されると予想していた。どのような未来が訪れるかはわからないが、まだまだ発展する余地は多いに残っていると思う。
軍事用の航空機から地上へと降りると、ハーンブルク連邦にお留守番組であった4人が出迎えてくれた。戦勝パーティーやら何やらで遅くなった分、彼女達の方が早く着いたようだ。
「「お疲れ様でございます、レオルド様。そしてようこそ、獣の都フォルテへ。」」
「出迎えありがとリーシャ、フィーナ。とても似合ってるよ。」
白と黒の色違いの豪華なドレスに身を包んだリーシャとフィーナは、上品に頭を下げた。思わず見惚れてしまうほど美しく、そして可愛らしい。どうやらこの衣装は、ファルティオン王国に伝わる伝統的な衣装を俺の好みになるようにアレンジした物らしい。
うん、very good!
「お疲れ様ね、レオルド」
「長い間お疲れ様でした、レオルド様」
リーシャとフィーナの頭を優しく撫でていると、背後から声が聞こえた。何度も聞いた事がある声質から、それが残りのお留守番組であるイレーナとユリアのモノだと言う事はすぐにわかった。
「・・・・・・」
「な、何か言いなさいよっ!」
「レオルド様、私たちもご感想などを頂けると嬉しいです・・・・・・」
振り返るとそこには、可愛らしい2匹の子猫、いや猫耳のコスプレをつけたイレーナとユリアがいた。
「何やってんの・・・・・・」
「な、何よ。なんか文句あるの?」
「いや、無いです。めっちゃ可愛いです。」
「そ、そう・・・・・・」
ストレートに彼女を褒めると、照れたイレーナは自慢の赤い髪に生えた猫耳を撫でながら視線を逸らした。何というか、そんな照れた姿も可愛らしい。この世界にもコスプレ文化があった事にも驚いたが、それ以上にイレーナと猫耳が似合いすぎる。一体誰がコスプレなんてものを流行らせたのだろうか。
【誰なのかは私も分かりませんが、おそらく起源はメイドのコスプレからかと。】
一体誰がそんな事を・・・・・・
【どこの戦闘メイド好きでしょうね。】
・・・・・・これからは毎日この格好でいてもらおうかな。
「ハーンブルク連邦の一部になったとはいえ、まだ人間は全く住んでいません。そこで、リーシャさんと相談して亜人と似た格好をして過ごそうという話になりました・・・・・・」
「な、なるほどな・・・・・・。」
ま、まぁ理屈は通っているか・・・・・・
ちなみに、この案はユリアの提案であり、衣装を作ったのもユリアらしい。ユリアは、お嫁さんたちの中で最も手先が器用で、よく手芸などを嗜んでいる。
「それで、俺の分は?」
「レオルド様の分はこちらでございます。」
「これは・・・・・・吸血鬼?」
「はい、レオルド様は珍しい紫色ですので、色々と考えましたがやはり亜人の中で最も位が高いとされる吸血鬼族が適任かと。」
ユリウスに手渡されたのは、吸血鬼のコスプレセットだった。というか、亜人の中には位とかあるんだな。まぁ統率を取るためには必要なのだろう。
異世界に来てコスプレって、とは思ったが俺がファルティオン州で新婚旅行していると周囲にバレたら色々面倒なので、俺は素直にそれを着た。
【幸いファルティオン州ならば、マスターの姿を直接見た事がある者はごく僅かなので簡単には見つからないと思いますが、用心するに越した事はありません。いい判断かと。】
俺も同意見だ。たまには、夫婦でお忍びデートというのも悪く無い。
「どう?似合ってる?」
「はい、とても似合っておられますよ。」
この衣装の作成者であるユリアはそう言うと、少し照れながら笑った。
続いて俺と同じ遠征組であるヘレナとクレアも、それぞれウサギの耳と熊の耳のカチューシャを身につけた。それぞれ、二人を意識して丁寧に作られた一品であり、とても似合っていた。
「2人も可愛いよ。」
「「あ、ありがとうございます。」」
最初は恥ずかしそうにしていた2人だが、俺が一声かけると、嬉しそうに顔を赤らめた。
その後俺たちは、リーシャ&フィーナの案内でフォルテを楽しんだ。
ちなみに、俺たちの正体は一瞬でバレた。何故なら、リーシャとフィーナの分の衣装を用意し忘れたからだ。要するに、俺たちがアホだった。
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どうでもいい話
旅行好きの佐々木サイ、今猛烈に温泉旅行に行きたい。
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