未来編

第1話 結末

 コンストリア帝国の帝都へと降り立った第一空挺部隊は、わずか4時間で帝都を完全に制圧した。第一空挺部隊というのは、ハーンブルク陸軍の中でもエリート中のエリートが集められた部隊であり、作戦はかなりスムーズに行われた。首都機能を全て停止させた上で、皇帝と軍務卿などの重要人物を全て拘束、それによって勝敗は決着した。

 決着の知らせが入り次第、第二陣第三陣が次々と送り込まれ、帝都は完全にハーンブルク連邦の占領下となった。安全が完全に確保されたところで、俺自身がコンストリア帝国の帝都に降り立った。

 仕事をするなら、俺自身が直接出向いた方が断然楽だからだ。今後二度と同じような反抗ができないように、徹底して国を作り変えた。大変だったのは間違いないが、放置してまた暴走するよりはだいぶマシだった。


「ほんと、俺ぐらいだろうよ、チート持ちで転生したのにこんな苦労しているの、わりとまじで・・・・・・」


【きっと、探せば見つかると思いますよ、マスター】


「見てみろよこの書類の量を、何処に行っても俺を待ち構えてやがる。」


【ハネムーンと称して最前線に妻たちを連れて来た男にはちょうど良い罰だと思いませんか?】


「罰って言っちゃってるじゃねーか。」


【気のせいです。】


 俺は、何処に行っても戦後処理という面倒事をする羽目になる体質のようで、今回も例に漏れずアリ地獄に落ちかけていた。だが、今回の俺はいつもとは違う点があった。


「ヘレナ、漁業に関する資料をまとめたものが完成しました。こちらに置いておきますね。」

「ありがとうございます。では次は、林業のデータをお願いします。」

「わかりました。」


「二人とも、ほんと助かるよ。」


「覚悟はしていましたけど、凄く大変な作業ですね、レオルド様。」

「私はレオルド様のお役に立てて、嬉しいですよ。」


 ここぞという時にいつもいないイレーナとは違って、ヘレナとクレアは俺の手伝いをしっかりとしてくれた。


【そんな事を言っていると、イレーナ様に怒られますよ、マスター】


 ・・・・・・まぁ、イレーナのおかげで助かっている部分があるのは事実だな。


【ツンデレ夫婦ですね。】


 やかましい。


 作業は、想像よりもずっと早く終わった。ヘレナとクレアが手伝ってくれた事ももちろん大きかったが、自分たちとは全く関係がない異国の地だった事もあり、何のしがらみもなしに自由に国を弄れた事も大きい。俺の采配で民族ごとに領土と主権を与えて独立させ、コンストリア帝国の国力の分散に成功した。多少、帝国の貴族たちから反感を買ってしまった気がしなくもないが、それ以上の国民からの支持を受ければ解決する話だ。民主主義において多数派の意見というのは絶対であり、なんの問題もなかった。

 そして・・・・・・


「終わった〜〜」


「お疲れ様でした、レオルド様。」

「お疲れ様です。」


「始める前は一生終わらないんじゃないかなって思っていたけど、意外となんとかなったな。」


 積み上げた書類を見上げながら、俺は達成感に浸っていた。おそらくだが、これが俺の最後の大仕事になるだろう。というか、これが最後の大仕事であって欲しい。もういい加減、戦争という人類史上最悪の過ちをこれ以上繰り返すわけにはいかないのだ。


 そのために俺は、コンストリア帝国を見せしめにしたのだ。全ての亜人国家に対して、ハーンブルク連邦や世界統一連合に対して背を向けた国がどのような未来を辿ることになるか、この一件で嫌でも理解することになっただろう。

 もちろん、そう簡単に平和な世界が転がってくるとは思っていない。だが、できるだけ戦争が起きない世界を目指そうとは考えている。そして、それを実現する最も早い手段はハーンブルク連邦の世界における地位を絶対的なものにすること。


「レオルド様が一生懸命に頑張ったからですよ。」


「ほんと頑張ったよな〜」


「これで、終わりにするつもりなんですよね、レオルド様。」


 俺の隣へとやってきたヘレナは、俺の左手を優しく両手で握った。どうやら彼女は、今回の遠征の目的と重要性を理解していたようだ。そしてだからこそ、今回の遠征についてきたのだろう。

 とりあえず、俺の役目は終わった。あとは、居残り組がバラバラになったこの国をいい感じにまとめ上げてくれるだろう。


「さてと、そろそろ帰るかな〜」


「どうせなら、このままファルティオン州に旅行に行きませんか?」


「・・・・・・それは名案だな。」


 戦争のことしか頭になかった俺は、ヘレナの意見で気が変わった。


「ど〜せなら、他のみんなも呼んでハネムーンにするか。ファルティオン州の観光なら、ファルティオン州に世界一詳しい姉妹がいるしな。」


「はい、皆さんも呼んで、楽し見ましょうか。」


 堅苦しい話から一転、まるで俺へのご褒美のような楽しい話が舞い込んできた。



 ___________________________

 どうでもいい話

 レオルドの下に楽しい話が舞い込んできたように、私の下にも嬉しい話が舞い込んできました。

 なんとこの作品は今話をもちまして300話達成しました〜!

 そして同時に、400万PV達成です!

 これも全ては、読者の皆様の支えがあってこそです。

 本当にありがとうございます。

 これは余談ですが、現在カクヨムでは推し活応援月間が行われているそうです。余談ですが。

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