第17話 花弁
ハーンブルク連邦による宣戦布告から2週間後、ついにハーンブルク連邦軍による攻撃が始まろうとしていた。
対するコンストリア帝国軍は、全兵力のうちの9割以上を国境沿いに派遣しており、ハーンブルク連邦軍の大規模な上陸が予想される港や海岸線沿いは特に厳重な防衛体制がしかれていた。ざっと、40万人近くの兵士や戦士が待機しており、コンストリア上層部は可能な限りの大軍を揃え、ハーンブルク連邦軍の襲来に備えた。
コンストリア帝国が防衛体制を整え終えた頃、空母を除く第一艦隊と第二艦隊が海岸線付近で待ち構える敵部隊に大ダメージを与えるべく、出撃を開始した。指揮を取るのはもちろんユリウスで、そうそうたるメンバーによる大規模な作戦であった。
「改めて見ても凄い大艦隊だね〜これなら敵がどんな相手でも負ける気がしないよ。」
「えぇそうね。私も同意見だわ。」
この世界で最強の艦隊との呼び声が高い第一艦隊と第二艦隊が揃っているのだ。まともな戦艦すら保有していないコンストリア帝国軍に遅れをとるわけがなかった。もちろん、兵器の質だけじゃない、ハーンブルク海軍の兵士たちは全て正規兵であり、練度においても世界トップクラスの実力を誇っていた。
「さて、僕たちは、僕たちに与えられた役割をこなすとしようか。」
「えぇそうね。天才が創り上げた、世界最大規模の“囮作戦“を。」
兄であるレオルドから伝えられた作戦を思い出しながら、二人はコンストリア帝国に向けて出発した。自分たちに与えられた役割をこなすために・・・・・・
*
「ようこそいらっしゃっいました、レオルド様。既に準備を整っております。」
「あぁ、想像していたよりもずっと暑いな、熱中症対策は大丈夫か?」
「はい、細かいインターバルで休憩を挟むように心がけておりますっ!」
「そうか・・・・・・」
ここからは直接的な指示が必要になるので、俺は途中ゼオン獣王国、ファルティオン王国で休憩を挟みつつ、ここハーンブルク連邦軍の最前線基地へとやってきた。初の長距離フライトという事でかなり緊張したが、空の旅はかなり満足だった。
だったのだが・・・・・・
「海ならテラトスタでも見れますけど、ここは別格ですね♪」
「空の旅も楽しかったですが、ここはまた違った雰囲気を味わえますね。」
・・・・・・何か聞こえた気がするな。
【これで負けたら、後の歴史家に大いに笑われますね。】
だってさ、しょうがないじゃん。
ユリウスはカレンを連れて行っているのに、自分たちは連れて行ってもらえないのはおかしいって言われて、断れる人いる?
【相変わらず、奥様方に甘いですね、マスター】
そんなわけで、急遽6人でじゃんけん大会が行われる事となり、勝利したヘレナとクレアが俺に付いて来たというわけだ。
俺は、このようになった理由を思い出しつつ、自分の実力じゃ回避は無理だったなと、納得した。まぁ、アイが少しお怒り気味な気がしなくもないが、スルーする事にした。
「初めての亜人国家への旅行が、こんな形になるとはな・・・・・・」
「約束を守ってくださった事にはもちろん感謝しておりますが、次はちゃんとした旅行がいいですね。」
「違いないな。」
綺麗な海を眺めつつ、そろそろ現実に戻らなければならない時間であることを自覚した。ハーンブルク連邦の都市とは違い、街灯が1本もないため、夜は一切行動ができなくなる。つまり、いつもの作戦とは違い、今回の作戦にはタイムリミットがあるのだ。
「とりあえず俺は、その旅行を楽しむための仕事に行ってくる。」
「お気をつけて。」
「大丈夫だ。基本はこの島にいるからな。そっちこそ、護衛の言う事にはちゃんと従えよ。」
「ふふふ、わかっていますよ。」
少し心配な気もしたが、ヘレナなら彼女なりに行動してくれるだろう。
妻たちと別れた俺は、自分のやるべき事をこなすために行動を開始した。作戦局へと移動した俺は、前線基地を支えてくれていたメンバーに軽く挨拶をして中に入ると、早速待ちわびていた通信が届いた。
「来たのか?」
「はいっ!先ほど第一艦隊から、コンストリア帝国一の港の目視に成功したとの報告が入りました。」
「「「おぉ〜!」」」
既に制海権は確保してあるとはいえ敵地、油断はできない。通信員からの報告は、参謀達に少しばかりの安堵を与えた。張り詰めたままでは、必ずミスがでる。
その場にいた全員の注目を集めた俺は、段階を進めることを宣言した。
「ユリウス達ならば、きっと上手くやってくれるはずだ。これより作戦を、第二フェーズへと移行する。」
「「「了解っ!」」」
「さぁ、用意していた3枚目の切り札の出番だ。」
*
直後、25機の大規模人員輸送機がハーンブルク連邦軍の前線基地を順番に飛び出した。敵に対空砲火が可能な兵器は一切無く、平和で快適な空の旅であった。
地表では、10万を超える大軍が海岸防衛を行なっていたが、航空機はまるでそれらを嘲笑うかのようにその上を超えていく。
いくつもの川や森林を超え、目的地へとひたすらに真っ直ぐ進む。
それはまさに、盤をひっくり返すような、構想外の作戦であった。
「降下開始ー!」
まるで、宙を舞う桜のように、空中に咲いた花は、次々と降下を始めた。
第一空挺部隊
3枚目の切り札が、コンストリア帝国の帝都へと襲いかかった。
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どうでもいい話
いつか、パラシュートか、ハングライダーを体験してみたいなー
バンジージャンプは嫌
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