第13話 観点
「第一攻撃隊から打電、ワレ、先制攻撃二成功セリ。敵ノ被害甚大、味方被害ナシ、コレヨリ帰還スル。との事です!」
「おぉー!!!」
「よっし!」
「成功だっ!」
通信員の報告に、先ほどまで張り詰めたような息苦しさがあった参謀本部が、一気に明るくなった。先ほど、ユリウスが第一攻撃隊への出撃命令を出したという報告を受けてから約30分、俺たちはようやく一息入れる事ができる状況になった。
「よくやったと伝えてくれ。」
「了解っ!」
敵の船に対空砲が一切積まれていない事は、先ほどの偵察機によってすでに確認済みであり、パイロットの腕次第ではあるが、敵に甚大な被害を与える事に成功した。今回攻撃を行ったのは、ハーンブルク空軍が誇る第一航空隊だ。全弾命中とまではいかないが、かなりのダメージを相手に与える事に成功したと思われた。
「さて諸君、第二次攻撃隊への追撃命令は出すべきかどうか、忌憚のない意見を聞かせてくれ。」
俺が意見を求めると、すぐに返事が返ってきた。
「レオルド様、ここは第二攻撃隊に追撃を行わせるべきと具申いたします。」
「理由は?」
「敵は現在、第一艦隊の射程圏内にいます。新兵器である航空機の有用性は今回の第一次攻撃で証明されました。私はこの機会に敵を壊滅状態まで追い詰めるべきだと考えております。」
彼の意見を聞きつつ周りに目を向けると、将校たちはその場で黙って肯定した。どうやら、全員意見は一致しているようだ。
「逆にレオルド様、第二次攻撃を躊躇する理由が何かあるんですか?」
「まぁ、普通に考えたら第二次攻撃をするべきなのだがな、おそらく第二次攻撃を実行すれば、敵艦隊は完全に壊滅する。そうなればほぼ間違いなく敵兵は全員その場で死に、戦後敵兵士の家族や友人から恨まれることになる。果たしてそれを容認するかどうか、だな。」
「つまりレオルド様は、戦後を見据えた上で判断するべきと考えているって事ですか?」
「俺は一応政治家だからな、立場上そう言うことも考えなくちゃならない。まぁ、軍人である君たちに問うべき話じゃなかったかもしれないけどな。」
「確かにそうなると、敵への降伏勧告や敗走兵の救出などはするべきですね。」
「俺が言いたいのは、そう言うことだ。」
「なるほど・・・・・・」
昔俺たちは、ナパーム弾を使って敵をまとめて焼き払うなどといった事を行なった事があったが、それは絶対に負けられない戦いであり、敵国を滅ぼすつもりで戦っていたからだ。だが、今のハーンブルクの状況は、以前とは状況が大きく異なる。第一次攻撃が成功した以上、この戦争の負け筋はほぼなくなった。
あとは落とし所をどこにするかだ。
ハーンブルク、そして世界統一同盟にとって優位な状況を作り出すためにはどうすればいいか、そのあたりを考える必要がある。
【落とし所を間違えれば、第二、第三のコンストリア帝国を作り出すだけです。しっかりと、見極めましょう。】
「一つ聞きたい、艦隊決戦をするとして、うちの第一艦隊は無傷で敵を降伏させる事ができると思うか?」
「確実の保証はできませんが、あの第一艦隊が船を失うような事はあり得ないと考えております。」
参謀の中で、ハーンブルク海軍について詳しい将校の一人が落ち着いた口調で答えた。彼は、第一艦隊の乗組員の選出に携わったメンバーのひとりであり、信頼もされていた。
「じゃあ俺は、より犠牲者の少ない艦隊決戦をしようと思う。作戦行動中の全部隊に、そのように通達してくれ。」
「「「了解っ!」」」
「それと、第二艦隊とともに行動中の例の新型艦を出撃させろ、あれの性能も試しておきたい。」
「了解しました。すぐに、ユリウス様に通達します。」
俺の一言で、全員の方向性が固まると、それぞれが動き出し始めた。
当初の予定とは少し違う結果になったが、うまい具合に落とし込めそうだ。
【せっかく多数決で決まりそうな展開であったのに、結局レオルド様の一言で押し切ってしまいましたね。】
いいんだよ、そこは。
【まさに鶴の一声ですね・・・・・・】
何にも面白くないから。
【おいおい。】
俺のセリフ取るなよ。
さてあとは彼らに期待するとしようか・・・・・・
*
「ユリウス様、レオルド様から伝達です。第二次攻撃は中止、艦隊決戦にて敵艦隊を降伏に追い込めとの事です。」
「なるほど、兄さんはすでに戦後の事を見据えていると言うことか・・・・・・」
「それと追加で、第二艦隊と行動をともにしている新型艦を実戦に投入せよ、とのことです。」
「了解した。兄さんにそう伝えてくれ。」
「はっ!」
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どうでもいい話
好評だったので、段落下げ実施することにします。
それより前の話も、暇があればやリます。(300話分直すのに、一体何時間かかるのやら。)
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