第12話 募集

 最初は、絶対勝てるという話を信じて船に乗った。


 戦士募集の知らせがかかったのは今から3ヶ月前、危険に晒された同胞を救うための戦士を募集するという話が回ってきた。

 危険な動物や商人の護衛のために、国や商人が戦士の募集をするというのは聞いた事があったが、非常に人気が高く俺の住む田舎の街まで回って来る事はほとんど無かった。

 しかもその話は、かなりの好条件であった。約半年間の遠征である事を除けば、莫大な報酬と戦死した場合の家族への手当が約束されており、ローリスクハイリターンな内容であった。同胞を救うために人間の国の一つと戦争するという話であったが、依頼内容によればほぼ確実に勝てるという話であり、俺たちはそれを疑わなかった。俺たちにとって人間は身体能力でも魔法力でも劣る劣等種であり、亜人国家の中で一、二を争う大国である帝国の勝利を信じて疑わなかったのだ。当然、好条件な内容に疑いを持つ者もいたが、依頼者が国という事もあり、街に住む若者の多くが参加を希望した。もちろん、男だけではなく女も多くいた。


 国の役員に参加する事を伝えた数日後、ついに出発の日が来た。俺たちは馬車で帝国一の港へ連れていかれると、そのまま船に乗せられた。


 船は、東へ東へと進んだ。

 船に乗った時から覚悟はしていたが、かなりの遠征である事にはすぐに気がついた。そもそも俺は、帝国の東側には海がある事は知っていたが、海の向こう側に何があるのかは知らなかった。そしてこの頃から、嫌な予感が漂い始めた。


「俺たち、何処に連れて行かれるんだろうなぁ・・・・・・」

「さぁ、軍人様に聞いても何にも教えてくれなかったしなぁ・・・・・・」

「だ、大丈夫だって、俺たちは帝国軍だぜ?どんな敵でも余裕だろ。」

「そ、そうだよな・・・・・・」


 船の上という事もあり、もちろん離脱者は出なかった。俺たちも、海に放り出されたら2度と生きて帰れない事は知っていたし、途中で離脱した者は脱走兵とみなされ、報酬は没収された上で罰金を払うという決まりだったため、誰も船を降りなかった。


 船の上での生活は地獄であった。

 まず困ったのは水だ。1日あたりの水の量は決められており、追加の配給は一切無し、水が原因で喧嘩が発生する事は日常茶飯事であった。そのため適度に雨が降った日は天国のように感じたが、嵐の日は地獄はもっと辛かった。船が沈没したら全員溺死という事もあり、全員が力を合わせ、必死になって船を守った。そして、船なんて一度も乗った事が無い俺のような元農民の多くは、激しい酔いに襲われた。風の噂で、船に乗ると酔うという話は聞いた事があったが、それは想像以上に辛かった。


 だが十数日が経過すると、俺たちの間に仲間意識が芽生えた。少しずつ娯楽を見つけ、賭け事や交尾なんかをして辛さを紛らわせた。俺が乗った船には未婚の男女が多くおり、多くの夫婦も生まれた。

 苦しい事も多かったが、その中で小さな幸せを幾つも見つけた。


 だが、本当の悪魔はここからであった。数十日が経ち、ここでの生活も慣れ始めた頃、甲板に出ていた仲間の1人が、大声を上げた。


「お、おいっ!アレを見ろっ!」

「な、何だあれは・・・・・・」

「鳥か?だが鳥にしては大きいな・・・・・・」

「海にはあんな生き物もいるのか。」


 ここ最近、仲間の船と鳥や魚しか見ていなかった俺たちは、聞こえて来る謎の爆音に注目した。今までに聞いた事のない爆音を鳴らす鳥のようなものであり俺たちはそれが何かわからなかった。


 だが、それはすぐに水平線の向こう側に消えた。しばらくの間、俺たちはその話で持ちきりであった。だが、誰もそれが何だったのかはわからなかった。


「何だったんだろうな、アレは・・・・・・」

「さぁ・・・・・・」

「新種の鳥とかじゃないだろうか。」


 その時は、考えても仕方がないという事で終わった。だが、俺たちはそこで気がつくべきだった。いや、そもそもこの船に乗る前に疑うべきだった、自分たちが戦う相手が誰で、どんな相手なのかを・・・・・・

 そしてツケは、すぐにやって来た。


「何だアレは・・・・・・」

「さっきと同じやつか?」

「だが、さっきよりも多いような・・・・・・」


 先ほどは1機だけであった例の鳥が、たくさんの仲間を引き連れて戻って来た。詳しくはわからなかったが、少なくとも20羽以上はいるだろうか。だんだんとシルエットが大きくなって来ている事から、真っ直ぐこちらに向かって来ている事がわかった。

 だんだんと音が大きく聞こえるようになり、俺たちは呆然とそれを眺めた。


「こっちに向かっているようだな。」

「ぶつかったりしないよな・・・・・・」

「アレは一体・・・・・・」


 その巨大な鳥は、だんだんと高度を落としならがこちらに近づいてくる。

 そして、その鳥が隣の船の真上を通った直後、鳥は何かを落とした。その何かは、真っ直ぐ船の上へと落ちた。


 その何かが船に直撃した直後、凄まじい爆風が俺たちを襲った。続けて、周囲の船も次々と爆発した。

 俺たちは、何が起こったのか全くわからなかった。一体何が起きたのか、誰1人として理解できなかった。


 そして、俺たちの乗る船にも、同じものが投下された。

 俺は、それを視界に捉えた。

 ゆっくりだが確実に、こちらの方に近づいていき・・・・・・


___________________________

どうでもいい話


私の、唯一とも言える作家仲間に段落を変える時は1マス下げた方がいいと言われたので、試してみました。

どうですかね、こっちの方が読みやすい?

今さら?

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