第10話 策略
「コンストリア帝国がうちに戦争を仕掛けて来るかもしれないだと?」
「はい、現地に潜入中の部隊の一つが、兆候を掴みました。」
その日、キックオフ2時間前になったので、そろそろ贔屓チームであるRSWの最終節の応援に行こうと考えていたところ、ハーンブルク連邦警察から驚くべき情報が届けられた。
いつもならSHSが持ってくることが多いので少し違和感を覚えたが、そういえば最近SHSが連邦警察に統合されたことを思い出した。どうやら、名前が変わっても仕事をしっかりと行ってくれているようだ。
「詳しく聞かせてくれ。」
「はい、コンストリア帝国は現在、長期遠征の計画を立ており、近いうちにハーンブルク連邦王国に対して攻撃を仕掛けると思われます。予想される敵兵力は最低でも50万人以上、侵攻予想ルートや攻撃目標は分かっておりませんが、軍艦が多数用意されていることを考えると、かなり長距離かつ大規模な作戦だと思われます。」
俺は、部下の話を聞きながら思考を巡らせた。あまりにも突然の行動、おそらくハーンブルク連邦王国が誕生したことに対して強い焦りを感じたのだろう。
そして、ハーンブルク連邦王国がまだバラバラなうちに楔を打ち込もうと考えたのだろう。どのような目的なのかはわからないが、まずは予想される攻撃ルートの分析から始めることにした。
「連邦警察としては、どう考えている?参考程度でいいから教えてくれ。」
「具体的な候補地を挙げるとしたら、ゼオン獣王国や旧ファルティオン王国などが考えられます。他にもジオルターンなども考えられますが、距離と規模の関係から、まずはその辺りが標的になると考えられます。」
「なるほどな・・・・・・」
お前はどう思う、アイ。意見を聞かせてくれ。
【確かに、それらの攻撃目標地を攻撃される可能性は、ある程度考えられます。50万という大軍を敵が運用するという事はハーンブルク連邦軍のように大量の軍艦がない限り、まず間違いなく陸路による攻撃が必要になります。】
大量の輸送船を使って一気にテラトスタを攻撃、という可能性がない事もないが、それはまず不可能だ。大量のハーンブルク海軍が待ち構える海域を、大量の人員を乗せたコンストリア帝国の軍艦が、突破できるとは思えない。仮に突破できたとしても、大量の砲門と陸軍が待ち構えており、制圧は不可能だろう。
それに、中途半端にハーンブルク領の本拠地を攻撃すれば、報復攻撃の可能性もある。コンストリア帝国目線で考えれば、徹底的に叩いておかなければ意味がない。むしろ、中途半端な攻撃は悪手だ。
【以上の点を考えれば、やはりゼオン獣王国が最も可能性が高い攻撃目標だと考えられます。敵が、ハーンブルク連邦王国を降伏させることを目標にするならば、それが最も可能性が高いと思われます。】
目標、か・・・・・・
アイの言葉に引っ掛かりを覚えた俺は、考察を開始した。
確かに、この国を降伏させるなら、陸上から大規模な軍隊を持って攻撃するのが得策なはずだ。
だが、この目的が違うとしたら?
勝利ではなく、引き分けを狙っているとしたら・・・・・・
「案外、ハワフ島からくるかもな・・・・・・」
「ハワフ島ですか?!」
「あぁ、兵数、兵器の質、兵士の練度、技術力などほぼ全てが格上の相手国に攻め込むとしたら、相手は短期決戦を選ぶはずだ。」
物事を考えるときは、まずは相手の立場になって考える。基本的なことではあるが、この考え方はかなり重要だ。
「短期決戦を選ぶとしたら、敵は最短ルートで攻めてくるはずだ。そうなると敵は、ハワフ諸島を飛び石のようにつたいながらこちらを攻めてくると予想される。」
【興味深い可能性ですね・・・・・・。確かに、ゼオン獣王国や旧ファルティオン王国のフォルテが狙われたとしても、時間さえ稼げばほとんどの確率で世界統一同盟加盟国からの援軍が到着して長期戦になる事が予想されます。しかし、マスターのおっしゃる飛び石作戦であれば・・・・・・】
敵が俺たちに勝つ確率が0.1%から1%ぐらいまで上がったな・・・・・・
まぁ、それでも相当な不運が重なったらの話だが・・・・・・
「敵がレオルド様のおっしゃる飛び石作戦を実行してくる可能性が十分にあるという事ですか・・・・・・」
もしハワフ島の占領に成功し、かつ大部隊を輸送させるための船が揃えば、あとは好きな場所に橋頭堡を築き、一気にシュヴェリーンを攻撃すると言う作戦を取る事ができる。テラトスタ周辺の海岸は厳重な警備体制が敷かれているが、ハーンブルク連邦王国北部やサーマルディア王国方面から集中攻撃を受ければ、万が一の事が起こってしまうかもしれない。
「かなり低いが確かに存在する可能性だ。徹底的に潰しておくぞ。」
「了解致しました。すぐに軍部と協議を始めます。」
ハワフ諸島に大量のレーダー探知機を設置して置かなきゃだな・・・・・・
起こりうる可能性は全て潰すのが俺のスタイルだ。
絶対に負けるわけにはいかない。
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どうでもいい話
カクヨムコン9、終了しましたー
私、佐々木サイの結果は全敗でした。頑張ってレベルアップします!
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