第7話 無駄
「つまりは、『コンストリア帝国』をいかにして無力化するかが今回の作戦の根幹だな。それと、既に実用化されている兵器で有れば自由に軍を編成して構わないが、国民からの徴兵は基本無し、使えるのはハーンブルク連邦王国の正規軍のみだ。他に質問はあるか?」
「既に実用化されている兵器ならば自由に使えるとの事ですが、兵器の補充などは許可されていますか?」
「駒の開発は無理だが、駒の補充や改良ならば可能だ。ただし、戦艦を大量に作れと言われても無理だ。そこは考慮してくれ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
俺が指標を指し示すと、先ほどの男は俺に敬礼を返してから持ち場に戻った。話を聞いていた他の将校達もそれぞれ頷くと、再び思考を開始した。それぞれが、自身の最善を思い描く。
わずか数時間で作戦がまとまるわけもなく、数十回ほど質問に答えた所でその日はそれで解散となった。戦争は、戦場が広くなればなるほど、より難解になっていく。どの方面から攻めるかだけでなく、各地にある危険や心配事を1つ1つしらみ潰しに消していく事が求められる。今までは、アイというチートで片付けていた事を人の手で行わなければならないと言う事だ。
まぁ、時間がかかるのは仕方ない。
俺はその間に、今回の作戦を実行する上で重要なキーになるであろう兵器の視察に行く事にした。
*
「やあやあレオルド様、お待ちしておりました。」
「そうか、待たせて悪かったな。」
「いえいえ、このアイン、レオルド様のためならば100年でも1000年でも待たせていただきます。」
「流石に待ち過ぎだわ。」
相変わらずの狂人っぷりを発揮するアインといつものやり取りをしつつ、研究所内部へと入って来た俺は、現在改良中の新兵器の視察を行った。
「こちらが、レオルド様に紹介しようと考えていた『A-3』通称ーナイトメアでございます。」
「これが?」
「はい、以前紹介した『A-2』人員輸送機よりも最高速度は劣るものの、航続距離が大幅に長い機体でございます。」
「具体的には?」
「そうですね、給油無しでここから『ジオルターン』まで往復できるぐらいですかね。流石に2往復は不可能ですが、風に乗れれば1.5往復ほどできると思われます。」
「素晴らしいな・・・・・・」
俺は、今回の作戦でキーとなるであろう機体を素手で撫でた。現在、航空機の開発は全てハーンブルク研究所に丸投げしており、俺は要望だけを伝える体制に以降していた。
ハーンブルク連邦王国の準備で忙しくて顔を出せていなかった事もあるが、俺は軍人関連同様研究関連も、俺やアイ抜きで回るようにしようと考えていたためだ。
「いかがでしょうか・・・・・・」
「期待以上だよ、アイン。正直なところ、驚きが隠せない。」
「もったいないお言葉をいただき感謝します。」
アインはそういうと、深々と頭を下げた。本当にこいつはやってくれる。もちろん、他の研究メンバーにも感謝しているが、アインだけは特別だ。彼は本当に、昔から色々な所で助けられている。
機体の説明を聞き、この新型機の実戦投入を想定した俺は、早速アインに次の指示を与えた。
「まだ確定はしていないが、近いうちにこいつに出番が訪れるかもしれない。いつ始まってもいいように、できるだけ早く量産体制に移行できるように準備してほしい。」
「了解致しました。何機ほど必要でしょうか。」
「多ければ多いほど良いが、30機ほど欲しいかな。」
「了解致しました。できるだけ早く量産体制に移行できるように準備致します。」
「あぁ、頼んだ。」
当初の予定では、旧型機である『A-2』を使う予定であったが、新型機である『A-3』が活躍する時が来るかもしれない。
「ところでアイン、もう一つの方は?既にできていると聞いたが・・・・・・」
「はい、こちらでございます。」
「そうか、早速案内してくれたまえ。」
「承知致しました。」
軍人的な話し合いを終えた俺は、製作をお願いしていたもう一つの兵器のもとへ案内させた。
【ずいぶんとワクワクしていらっしゃいますね、マスター】
日本人ならば当たり前だろ?
【そういえばそうでしたね・・・・・・】
この兵器は、言うならばハーンブルク軍の秘密兵器だ。そして、現状ではあまり使い物にならない兵器でもある。
「いかがでしょうか。これが『X-0』戦闘機、通称ーゼロセンでございます。」
「おぉ〜」
航空機を作るなら、やっぱり戦闘機を作りたいという俺のわがままの元に作られたロマン戦闘機。
ゼロセンだ。
「スピードと航続距離を両立させた、まさに夢の機体でございます。レオルド様が提唱された航空機同士の戦闘では、ほぼ確実な勝利をもたらせてくれるでしょう。」
「流石はアインだっ!」
この機体は世界最高の機体であり欠陥機だ。
他の航空機と闘えば、ほぼ間違いなく勝利する事ができる世界最高の機体であるが、今のところこの機体に出番はない。
ハーンブルク連邦王国以外の国々には、そもそも航空機が存在しない以上、戦闘機なんてものは必要無いのにも関わらず無駄に高性能な機能がついているという、まさに欠陥機であった。
「ところでレオルド様、こちらの航空機も実戦に投入されるのでしょうか。」
「あ、あぁ、多分な。」
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どうでもいい話
やっぱりロマンは、求めないとですねー
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