第5話 sideフィーナ4

「ハーンブルク領が最強たる最大の理由は何だと思いますか?」


シュヴェリーンの中心バビロン宮殿、そこの展望デッキから、私とお姉様はハーンブルク領の夜景を眺めていた。

シュヴェリーンの都心を一望できるこの場所は、私とお姉様が最も好きな場所だ。ハーンブルク軍に用事が無い日も、私たちは心を落ち着かせた時などに、よくここに来ていた。


「・・・・・・やはり、他国とはかけ離れた圧倒的な技術力でしょうか。」


「それもありますが、最大の理由ではありません。」


少し考えた私は、自分の経験の中で最も可能性が高い選択肢を伝えた。ハーンブルク領で暮らして早2年と少し、私はそれなりにこの領に慣れたつもりであったが、どうやら私の回答はお姉様の想像する最大ではなかったようだ。


「では、何が・・・・・・」


「それは、他国にはない高レベルの教育システムを領民であれば誰でも受けられる事です。それによってさまざまな技術を発展させ、同時に後世に残す事が可能となっております。」


「確かにここでは、一般の領民なのに他国の貴族と同等以上の能力を持つ人間が多数いますからね。」


私は、ハーンブルク領の運営の心臓部とも言える人々、官僚達の顔を思い出しながら答えた。レオルド様の方針で、官僚は全て実力によって採用されており、世界トップクラスの超人達が多く在籍している。彼らの出自はバラバラで、元々は貧しい孤児院の孤児だったという者もちらほらいた。

つまり、全く学力や財力の無い孤児でも、努力次第では領の中枢を担う人物になれるという事が証明された。


勉強ができなくても、サッカー選手になるという道もある。今や、ハーンブルク領で最も人気な職業であり、多くの人々が心を奪われていた。


「ここは、本当に別世界ですね。」


もはや、それぐらいしか言葉が見つからなかった。文化、価値観、生活、娯楽、社会、全てが他の国とは大きく異なっている。

人々の生活は豊かであり、凄まじいぐらいに活気に溢れていた。既に日が落ちた今でも、街を明るくする大量の光が存在しており、このような美しい夜景が楽しめる。


そして今、ハーンブルク領は新たな段階へと階段を上ろうとしていた。


ハーンブルク連邦王国


まだ名前と国王しか発表されていないその新たな王国に、世界中が注目していた。私も、ある程度レオルド様から内容を教えてもらったが、それは今までの常識を覆すような内容であった。

新体制の確立は、もう確定していた。


「いったいどのような未来が訪れるのでしょうか・・・・・・。」


「わかりませんが、きっと良い国が出来上がると思います。私はレオルド様の事を信じていますから。貴女もそうでしょ?フィーナ」


「私は・・・・・・」





人間の指標に基づくと、私は亜人の一種である吸血鬼族という種族に分類される。

とは言っても、見た目や身体能力はほとんど人間と変わらない。普通の人間よりも少しだけ牙が長くて、血を吸う事を好むというだけ。もちろん、血液を吸わなくても普通に生活できるし、稀にではあるが血を飲むのが嫌いな吸血鬼もいる。

また、基本的にどの種族の血液でも吸う事ができる私たちではあるが、もちろん好き嫌いは存在する。一般的には若い者の血が好まれる場合が多く、私もその1人だ。


そして最近の私には、好物とも言える血が存在した。


「レオルド様〜血を吸ってもいいですか?少しでいいので〜」


「え?血?昨日もあげたじゃん。」


レオルド様の血を吸うと、何故か酔ったような感覚になり、身体がとても気持ちよくなるのだ。以前お姉様から、好きな人の血を飲むと、それ以降その人以外の血を吸えなくなるという話を聞いた事があったが、その言葉の意味がよくわかった。

これはまるで麻薬だ。

頭の中がダメになる。


「今日は凄くたくさん働いたので疲れちゃって〜、ご褒美を要求します。」


「はぁ〜仕方ないな〜まぁ良いよ。ほら、おいで。」


そう言って彼は、私から視線を逸らした。許可を貰えた私はゆっくりと彼のもとに近づくと、ソファに座る彼に身を預けるように正面から抱きついた。

お風呂上がりの大好きな彼の匂いで、頭がおかしくなりそうになった。


「毎回思うんだけど、もっとマシな吸血方法は無いのか?」


「ないです!」


「はぁ・・・・・・」


「では、いただきまーす///」





「あの子、レオルドと二人きりになると、私たちの中で一番積極的になるわよね。」


「以前にも一度覗いてしまった事があるのですが、凄かったです・・・・・・」


「吸血鬼族は、家族の繋がりというモノを極端に大切にする種族なんです。だからその、そっちの方面も・・・・・・」


「実は吸血鬼じゃなくて、サキュバスなんじゃないの?」


「そ、そんな事は・・・・・・」


「今日は私とイレーナの日でしたが、譲りましょうか。」


「え、えぇ、そうね。」


私はその日、レオルド様の寝室と廊下の間にある扉が少し開いている事に気が付かずに夜を楽しんだ。


____________________________

どうでもいい話


ちゃんと夫婦です。

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