第10話 地下

ハーンブルク領の首都シュヴェリーン、世界を見れば西の端にある小さな街でしか無かったこの場所は、今では合計で600万人近い人口を抱える大都市圏となっていた。

これはサーマルディア王国全体の人口の約半分であり、文句なしで世界最大の都市となっていた。

そんな大都市シュヴェリーンでは最近、ある問題が発生していた。人口の過密による地価と物価の上昇、シュヴェリーンとテラトスタ、リアドリア、サラを鉄道網の誕生によってある程度緩和されていたが、それも限界が近づいて来ていた。

そこで、人々の生活を一新させる新たな交通手段が必要になった。


「開通まで、もう少しってところ・・・・・・」


「以前聞いた話では、完成まで早くても3年は必要と聞きましたが・・・・・・」


早速視察をする事になった俺は、暇そうにしていたクレアを連れて視察に行く事にした。


「移民が増えた影響で労働者数が急激に増えてな、マンパワーでゴリ押したそうだ。まぁ、技術力が格段に上がったのも理由の一つだがな。」


「領民の皆様に愛されているようですね。」


今回の工事は公共事業という事もあり、様々な企業や人々の強力の下で行われた。大量の物資や機械が導入されており、ハーンブルク領全体が協力して行われた一大事業であった。


ハーンブルク領の生活を一新する、新たな公共交通機関、それは地下鉄道だ。


シュヴェリーン駅を中心に、4線8方向に路線を伸ばす予定だ。何処かの世界では、同じ都内を走っている地下鉄なのに別々の会社が運営しているという異常事態が起きているそうだが、ハーンブルク領内を走る鉄道は全てハーンブルク領が運営する事になっている。


「地下道というだけでも驚きなのに、まさか地下に鉄道を通すとは・・・・・・」


「地上には鉄道を通すだけの土地が無いからこうして地下に鉄道を通しているんだよ。」


「なるほど・・・・・・」


「この計画は、シュヴェリーンと領民の生活を大きく変えるぞ。」


「そんなになんですか?」


「あぁ、これまでシュヴェリーン内の移動は徒歩や鉄道、馬車が中心であったが、それが地下鉄に変わる事になる。これによって、利便性は格段に向上する事になる。」


【交通網の発達は、都市の急激な発展を招く事になります。シュヴェリーンとハーンブルク領は、新たな時代に進む事になるでしょう。】


人の移動が活発になれば、その分だけ都市は発展する。都心であるシュヴェリーン駅周辺を中心に、副都心や駅周辺などの発展も見込める。


「このまま発展させれば、東の都を超えるかもな・・・・・・」


「東の都ってファルティオン王国王都のフォルテの事ですか?」


「あ、いや、何でもない。今のは忘れてくれ。」


「はい、わかりました・・・・・・」


今はまだ、天と地ほどの差があるが、百年後にはあるいは・・・・・・





それからおよそ3ヶ月後、バビロン宮殿にてヘレナ達と元ファルティオン王家姉妹による顔合わせが行われる事になった。


俺は緊張で夜しか眠れず、1晩ぐっすり眠っても緊張は全く解れなかった。既に、姉妹がテラトスタに上陸したという報告は受けており、その時は刻一刻と近づいていた。

おそらく今は、ハーンブルク鉄道でこちらに向かっている頃だろう。


「ふふふ、緊張していらっしゃるようですね。」


「ヘレナはしていないのか?」


「何も心配するような事はありません。私たちは迎える立場なのですから、堂々としていましょう。」


「・・・・・・そうだな。」


【情けないですね、マスター】


ほっとけ。


姉妹がハーンブルク領に到着する前日、姉妹と俺の婚姻が発表された。俺が亜人と結婚するのはこれが初めてであり、同時にハーンブルク家が人間と亜人を公平視するという発表も行われた。ここ最近、領民達から注目されていた亜人問題は、今回の発表によってある程度収まりがつく形となった。

もちろん、亜人との協調路線に反対する者もいたが、今回の結婚をきっかけに納得してもらう事にした。確かに亜人の中には人間を忌み嫌う者もいる、だがそれはほんの一部であり、人間に対して友好的に接してくれる者もいるのだ。

そして今回は、顔合わせと共に今後の話し合いも行われる予定だ。でもまずは・・・・・・


「ようこそシュヴェリーンへ、2人とも。」


「お久しぶりですレオルド様。」

「本日はお招き頂きありがとうございます、レオルド様。」


「まずは自己紹介と行くか。こっちが俺の妻のヘレナ、イレーナ、ユリア、クレアだ。」


4人はそれぞれ、順番に軽く挨拶をした。続いて俺は、姉妹の方を向いた。


「そしてこっちが、ファルティオン王国から来た、リーシャとフィーナだ。」


「初めまして、元ファルティオン王国女王のリーシャです。」

「妹のフィーナです。」


自己紹介が終わったところで、予定通り正妻であるヘレナは前に出た。


「こんにちは、リーシャさん、フィーナさん、歓迎します。」


___________________________

どうでもいい話


ヘレナ

イレーナ

クレア

ユリア

リーシャnew

フィーナnew

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