第9話 新世
「レオルド様、イレーナ様、おやすみのところすみません、まもなく、終点のシュヴェリーンでございます。」
「着いたか・・・・・・」
「現在の時刻は、午後6時でございます。報告によりますと、既に駅前に馬車が用意されているとのございます。」
「分かった。」
車掌に促されて、俺はゆっくりと目を開けた。どうやら、嫌な事は寝て忘れろ現実逃避は失敗に終わったらしい。
【まぁ、無理でしょうね。】
うん、やっぱり・・・・・・?
まぁ分かっていたけどね〜
とりあえずこいつを起こすか・・・・・・
「おーい、起きろ〜着いたぞ〜。」
「んっ・・・・・・」
隣に座るイレーナの肩を少し揺すり、起こそうと試みる。サーマルディア王国の王都であるサーマルを通り過ぎた辺りまでは起きていたが、リバスタを過ぎた辺りから俺の左肩に頭を乗せながらぐっすりと寝ていた。
まぁ、ほぼ丸一日電車に乗っていた事になるので、疲れが溜まっていても仕方がない。
「おーい、シュヴェリーンに着いたみたいだぞ〜」
この寝顔を見ると今起こすのは少し忍びない気はしたが、終点なら仕方ないので少し強めに彼女の肩を揺すった。
「おはよう、あなた。」
「っ!あ、あぁおはよ。」
寝起きなイレーナは、にこやかに微笑みながら答えた。うん、めっちゃ可愛い。
こいつ、寝起きの時と夜は無駄に可愛いんだよな〜時間制ツンデレ的な。
「なんか今、失礼な事考えていなかった?」
「いや、気のせいだぞ。イレーナはそのままでいてくれ。」
「え、えぇ・・・・・・」
それからしばらくして、俺たちを乗せた列車は予定通りにシュヴェリーン駅へと停車した。領民達から暖かい出迎えを受け、そのまま馬車に乗り換えた俺達はバビロン宮殿へと直行した。
*
「あぁ〜、久しぶりの風呂は最高だ〜!」
軍艦や鉄道での移動が続いていたため、長らくまともな風呂に入れていなかったので、今日は久しぶりの息抜きとなった。
普段なら夕食を食べた後に風呂に入るが、今日は我慢できなかった。
誰もいない浴槽を、1人で満喫しようと思ったのだが・・・・・・
「気持ちいいですね、あなた。」
「あ、あぁそうだな・・・・・・」
俺の隣にピッタリくっつきながら腰を下ろしたヘレナは、自分の肩に軽くお湯をかけながら呟いた。お察しの通り、現実逃避作戦その2は失敗したようだ。
俺は、正直に全て話す事にした。
「東方亜人協商との話し合いは全て終わった。それで、その、ファルティオン王家姉妹と結婚する事になった。」
「そうですか・・・・・・」
俺は、何て反応をすれば良いかわからず、少し黙った。するとヘレナは、俺が困っている事を察したのか、俺の不安を解消させる言葉をかけてくれた。
「今度、紹介して下さいね。」
「・・・・・・怒らないのか?」
「ふふふ、怒りませんよ。私はどんな決定だとしてもレオルド様に従うつもりです。だから、堂々として下さい。」
「ヘレナ・・・・・・」
俺は、顔を上げて彼女の方を見た。そこには、どんな時でもいつも俺を支えてくれる愛する妻がいた。あぁそうだ、俺はヘレナを幸せにしようと頑張っていたんだ。
「ですが、私に一言声をかけてくれても良かったんじゃないですか?レオルド様。」
「うっ・・・・・・」
「レオルド様の方から声をかけたと聞きましたよ。次からは、先に教えて下さいね。」
「え?次?」
「レオルド様の事だから、もう1人ぐらい増えそうですね。」
「いやいや、多分もう増えないから・・・・・・」
俺のツッコミに、ヘレナは「どうでしょうか」と呟きながら微笑んでいた。どうやら、全然信用されていないようだ。
だが、これでひとまず東方亜人協商の件は方向が決まった。後は、俺の努力次第だ・・・・・・
「あ、そう言えばレオルド様、もう既にご存知かと思いますが、様々な方面からレオルド様を心配する声がかかっておりますよ。」
「そうか・・・・・・」
「はい、ですから顔を見せてあげてくださいね。」
「あぁ・・・・・・」
今回の交渉によって、様々な事が決まった。まず、ファルティオン王国を含むいくつかの亜人国家の解体が行われた。亜人は基本的に、種族ごとに固まって暮らしている。そこで、種族ごとに自治権を与える方向で合意した。
そのため、多くの多種族国家は領土が削減され、ファルティオン王国も例に漏れず元の領土の半分以下となった。
そして、ファルティオン王国の王都『フォルテ』とその周辺は独立し、ハーンブルク領に加入する事になった。まぁ、加入という表現が正しいかどうかはわからないが・・・・・・
それはともかく、ハーンブルク領が発表したこれから先の未来に関する発表は世界各国に衝撃を与えた。
世界は、新たな時代へと進み始めていた。
____________________________________
どうでもいい話
いつの間にかコメント数が1000件超えてました。
ほとんど誤字報告だけど(笑)
完結までに400万PV超えるといいな〜
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます