第6話 合併
「そんじゃ、再開といくか。」
「はい、そろそろ再開しましょうか。」
翌日、朝食を取り一息入れた後、昨日と同じ場所で交渉が再開した。交渉は、昨日と比べてお互いがリラックスした状態で始まった。
「んじゃ、まずはそちらの意見から聞かせてくれ。」
「わかりました。私達は、ここゼオン獣王国を境に南側を私達、北側をハーンブルク家が主導で統治するという案を提案させていただきます。」
「シンプル・イズ・ベストって事だな。」
「はい。ガラシオル帝国領をどうするかの協議が必要になると思いますが、わかりやすく行動を起こしやすいと考えております。」
ファルティオン王国側の提案は、最も単純で、最も公平な選択であった。西方統一同盟の問題はハーンブルク領が解決し、東方亜人協商の問題はファルティオン王国が解決するという案であった。
しかし、一見シンプルで良さそうにみえるこの案には、2つの欠点があった。
1つ目は海だ。問題というのは、もちろん海の上も含まれる。貿易をすると上で起こった問題や漁業問題、今はまだ問題になっていないが、近い将来必ず石油や天然ガス、レアメタルなどの利権で揉める国が現れる。これから先は、石油の時代だ。当然、天然資源の需要はどんどん高まっていくだろう。
2つ目は、根本的な問題が解決しない点だ。ファルティオン王国の目標は、全ての亜人が安全に暮らせる世界を作る事だが、俺の目標はハーンブルク領が大陸における絶対的な優位性を見出す事だ。そして、ハーンブルク領が絶対的な優位性を見出していないという事は、戦争が起きる可能性があるという事だ。戦争とて外交手段の一つ、各国政府機関には自国が勝利する可能性があって初めて戦争という選択肢が生まれる。
つまり、不十分なのだ。この案では、公平さを優先させるあまり、両陣営が目的を達成できない状態になってしまう。
だから・・・・・・
「じゃあ次はこちらの番だな。俺達は、ハーンブルク領とファルティオン王国の合併を提案する。」
「「え?」」
俺の言葉に、ファルティオン王家姉妹は全く同じ顔になりながら驚いた。なんかちょっと可愛い。
「具体的には、ファルティオン王国の王都とその周辺が分離独立してハーンブルク領と合併、残った部分は別の国として誕生させる。」
「・・・・・・」
「・・・・・・本気で言っているのですか?」
「あぁ、もちろん本気だ。」
ハーンブルク領とファルティオン王国の一部を切り取って、新たな連邦国家を誕生させる。これが、俺とアイが考え出した結論だった。
先ほどの、敵国が反抗を起こす気ならないほどの差をつける。
それは、西の支配者ハーンブルク領と、東の支配者ファルティオン王国が手を組んで、『世界の警察』になるというものだった。『世界の警察』の影響力を、世界各国に対して最も与える事ができる選択だ。
「何が目的なんですか?」
「世界各国の軍事力の大幅に縮小だ。」
「軍事力の縮小ですか・・・・・・」
連邦国家となった場合でも、それぞれの州が独立した司法、行政、立法を抱える予定であり、今の体制とほとんど変わらない。しかし軍事面だけは、今までとは大きく異なっている。個人や貴族が独自の軍隊を持つ事が禁止され、国として軍隊を抱える事になる。つまり、ハーンブルク領とファルティオン王国が両方の賛成があって初めて軍隊を動かせる体制を作るというわけだ。
この案は、以前ハーンブルク領がサーマルディア王国から追放されそうになった際に考えたジア連邦共和国に加入するという案を改良したものだ。
だいぶ前に作った物だが、内容は今の自分が見てもよくできて言えるものであった。
「以上の理由から、俺はハーンブルク領とファルティオン王国の合併を提案する。もちろん、今の俺の案がそのまま通るとは思っていない。だが、頭に入れておいてくれ。」
俺の発言を、正面から受け止めた二人は、思わず顔を見合わせた。
「・・・・・・少し考える時間をください。」
______________________________________
どうでもいい話
ちょっと短くなっちゃった・・・・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます