第5話 寿司


大陸中の問題を一つずつリストアップしていたら、いつの間にか日が暮れていた。その日はそれで一旦解散となり、俺はイレーナとともに自室へと戻った。

ファルティオン王家姉妹が久しぶりの再会をたのしんでいる間、俺はイレーナと共に二人きりの状況を満喫していた。

かなり疲れが溜まっていた俺たちは、海で採れた新鮮な魚とハーンブルク領産のお米から作られた寿司を楽しんだ。ハーンブルク領では中々お目にかかれない高級魚や珍味を、緑茶と共に頂く。これぞ至福の時間だ。


「ほんと、仕事終わりに食べるお寿司は最高ね。」


「だろ?いや~シュヴェリーンから寿司作りセットを持ってきといて良かった~」


「ホントこういう所だけは天才的な才能を持っているわよね、あんた。」


そう呟きながら、イレーナは目の前に置かれたトロを摘んだ。

あ、最後の一つだったのに・・・・・・

俺のトロちゃんが〜


【・・・・・・追加でいくらか握りましょうか?マスター】


「流石アイ、もう4つほど頼むよ。」


「あ、なら私ももう4つちょうだい。ネタは何でもいいわ。」


【了解です、マスター、イレーナ様】


ちなみに、先ほどまで食べていた寿司は全てアイが握ってくれたやつだ。もちろん全てプロ級、いやプロだ。


美味しいお寿司を食べ終え一息入れる事にした俺達は、明日の交渉に向けて意見のすり合わせを行う事にした。


「とりあえずは、この山を解決するための方針を決めなきゃだな・・・・・・」


「どちらが主導になるかって話よね。」


「あぁ・・・・・・」


机の上に置かれた地図には、たくさんのバツ印が書かれており、その全てが今後戦争の火種となるかもしれない地点であった。

問題が起きないようにするための政策は一旦置いといて、とりあえずリストにある地点をどのような方針で潰していくかを考えた。方向性は大きく分けて3つ、ハーンブルク家が主導するか、ファルティオン王国が主導するか、それとも場所や分野に応じて振り分けるか。それぞれにメリットとデメリットがあり、どれを選ぶかによって今後の対応が変わってくる。


「まず、ファルティオン王国単独が主導で事を進めるのは論外だ。認めれば西方統一同盟内でのハーンブルク領の発言権が徐々に減少し、何もしなければファルティオン王国が世界のリーダーとなるだろう。ハーンブルク領の力はもちろん残るが、将来的にどうなるかはわからない。」


「じゃあ、私たちがやるか、場所か分野に応じて振り分けるかのどちらかってことね。」


「そういう事だ。」


現状を共有して、今後の方針や明日の話し合いをイメージする。


「行きの船でも説明したが、今のところ俺はハーンブルク領主導でやるべきだと考えている。」


「ちゃんと覚えているわ。国際的な影響力の話よね。」


「あぁ、今後俺たちが『世界の警察』になるならば、最も重要になるであろう事柄は国際的な影響力だ。まぁ、それをどう上手く掴むかが、一番難しいんだけどな。」


西方統一同盟の加盟国が一つになるのすら難しいのだ、それが世界に広がるとなれば簡単なわけがない。今の西方統一同盟だって、突出した力を持つハーンブルク領があるからこそまとまっていると言っても過言ではない。

それは、東方亜人協商だって同じだ。ファルティオン王国が矢面に立って行動を起こしたから、周辺の国々が動いたのだ。


今のハーンブルク領に求められている事は何か、それを見極める事が大切だ。


「私も基本的にはあなたの意見に賛成だわ。でも、ファルティオン王国側がこれに同意するとは思えないわ。これは相手の立場になって考えればわかる事よ。」


「まぁ確かに、簡単には彼女らも首を縦に振らないだろうな。」


ファルティオン王国とハーンブルク領、この2大勢力が手を取り合う事が平和への一番の近道な事は間違いない。

だけどそれには、大きな障害があった。


それは、各国の教育レベルと価値観だ。


種族や国、住んでいる地域が違う以上、仕方がない話なのかも知らないが、教育レベルと価値観は国によって大きく違う。

当たり前のように鉄の農具と蒸気機関が使われている地域もあれば、未だに木の農具が使われている地域だってあるし、そもそも貨幣制度が導入されていない地域だってある。

他にも、生活リズムや文化、宗教なんかによっても大きく違う。


だから、簡単には比べられないし、求めているものだって違う。


「じゃあどうやって私たちの案を通すつもりなのよ。」


「簡単だ、ファルティオン王国を一度滅ぼせばいい。」


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どうでもいい話


最近、時間にルーズな日々が続く今日この頃

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