第3話 sideフィーナ4

アイスブレイク、場の雰囲気を和ませたり、相手との関係づくりを進めたりするコミュニケーション方法の一つ。以前レオルド様が話していた、職場や学校、ワークショップ、歓迎会などさまざまな場で活用されている技だ。


本番のアイスブレイク術を、私は初めてこの前で見た。この茶番によって、私やお姉様の緊張はかなりほぐれただろう。


「じゃあ改めて、俺はこの交渉で、これからの世界の行く末について話し合いたいと思う。」


そして、その直後に行われた彼の宣言、このダブルパンチによって、私たちは完全に当初の予定を狂わされてしまった。


ファルティオン王国は大陸の東の端にあり、世間では『極東の大国』とも呼ばれている。我が国にはおよそ1000年の歴史があり、今現在では亜人国家における絶対的なリーダーとなっていた。故に、今までに行われたあらゆる戦争や交渉はどれも格下との間で行われており、少なくとも同格、場合によっては格上との交渉は私達の代では初めての出来事であった。


交渉の相手は大陸における西の覇権者レオルド・フォン・ハーンブルク。わずか10年で西方統一同盟を作り人類の頂点に立った男、しかも彼は私たちよりも年下、いつ聞いてもおかしな話だ・・・・・・


「具体的にはどうするのですか?」


「粗作業にはなるが、大陸各地に埋まっている領土問題やら政治問題やらを順番に解決するのが一番単純だろうな。」


「1つずつ全部、ですか?」


「あぁ、もちろん全部だ。これぐらいの苦労で平和が手に入るなら安いもんだろ?」


「それで、平和・・・・・・」


平和、それは誰もが憧れる夢。だけど、その言葉の裏には必ずと言っていいほど棘がある。おそらく、何かしらのデメリットが・・・・・・

お姉様とレオルド様の会話を聞きながら、私はすぐにそのデメリットに気がついた。


「その、平和でいられる期間というのはどれぐらいなのでしょうか。」


「っ!どうやら気が付いたようだな・・・・・・ざっと10年ってとこだろうな。」


「10年・・・・・・」


「とはいっても、10年というのはおおよその数字だ。それよりも早くなる可能性もあるし遅くなる可能性もある。こういった手段もあるって話だ、まぁ俺は賛成はしないがな。」


いくらレオルド様がすごくても、やはりそれぐらいが限界なのだ。大陸は広い、そのすべてをコントロールする事は不可能に近い。計算外というのは必ず起きるものだ。


「どうする?その10年のために、汗水垂らして働きたいと思うか?しかも、自分たちではなく他国のために。『世界の警察』は、かなり面倒だと思うぞ。」


彼は、人間の本性というものをよく知っている。私たちがこのような選択をとった場合どうなるか、そして取らなかった場合はどうなるか、それを計算しているはずだ。

私とお姉様の目的はただ一つ、大陸中の同胞の安全を守る事だ。

そしてそのために、どの選択をとるのが最も効果的か、判断する必要があった。

彼の話にはおそらく嘘はない。

亜人達の間に問題があるように、人間たちの間にもおそらく問題がある。つまり彼の提案は、私たち姉妹とハーンブルク家が『世界の警察』になるという事だ。

『世界の警察』レオルド様が先ほど使った言葉だが、その通りだと思う。

仮に私たちが『世界の警察』になったとしたら、その選択にはもちろん責任がついて回る。その選択によっては、時には最悪の結末が訪れる可能性も・・・・・・


「それはなんとも、難しい話ですね・・・・・・」


「まぁたしかに、難しい話ではあるな。俺だって正直、西方統一同盟の面倒をみなきゃいけないのは大変だしな。それが世界全体に広がるのはだいぶ面倒だ。」


「そう、ですよね。」


たしかに、考えただけでも骨が折れる仕事だ。しかもそれは、所詮確率を上げる作業でしかない。確実の保証はどこにもないのだ。

果たしてそれだけの労力を投じてまで優先すべき事なのか・・・・・・


「代案とかは無いのでしょうか・・・・・・」


「正直言ってこの問題は、簡単に解決できる話じゃない。確率を下げるための努力はできても、断つのは不可能だろうな。」


「そうですか・・・・・・」


私やお姉様がどれだけ考えても思いつかなかった話だ、そう上手くはいかない。

私たちは、何を優先するべきか・・・・・・


私が考えている間に、お姉様は先に決断していた。


「レオルド様の、『世界の警察』になるという話、お受けしようと思います。」


「そうか・・・・・・なら、サッカーだな。」


「「はい?」」


「ここでもサッカーなのね・・・・・・」


______________________________________

どうでもいい話


遅くなりました~

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