第10話 趣味

レオルド・フォン・ハーンブルク 殿


今後の東方亜人協商と西方統一同盟について話し合いをしたいです。よろしければ、この手紙が貴方の手元に届いた日から2週間後、この手紙を持参してパラス王国と神聖チータ帝国の国境とヒィルワ川が交わる地点にお越しください。


ファルティオン王国代表

フィーナ・フォン・ファルティオン



受け取った手紙はとてもシンプルな内容であった。

パラス王国内にあるハーンブルク軍の仮拠点に到着すると、俺は部下の一人から一通の俺宛の手紙を受け取った。ゼオン獣王国経由で、昨日届いたらしい。


「これが昨日届いたものですか?これは、サイコロが良い方向に転がったという事ですか?」


「まあそうだな。それも、かなりいい方向に転がってくれたみたいだ。」


俺は、じゃんけんに勝ち今回の旅に同行する事になったクレアの疑問に答えた。まぁ、旅と言えるほど愉快なものではない。

戦後処理と俺にしかできない仕事、つまり各国との交渉を行うために俺はここにやって来た。

なのだけど・・・・・・


【まさか、先を越されることは思いませんでしたね・・・・・・】


ほんとそれな。

ここは俺が、華麗にファルティオン王国を誘い出す予定だったのに・・・・・・


【何ですかそれ・・・・・・】


冗談だよ冗談。


「それで、いかがするおつもりなのでしょうか、レオルド様」


「もちろん受けるつもりだ。というか、もともとこちら側から誘う予定だったからな。手間が省けたといったところだ。」


「わかりました。ではそのように、取り計らっておきます。」


「何で普通に働いているんだよ、クレア」


とここで、俺は思わずクレアにツッコミを入れた。というかその俺が昔作ったメイド服、久しぶりに見たな・・・・・・


「他の皆様には仕事がありますが、私にはありません。だからこういう時ぐらい、私も貴方の役に立たせて下さい、あなた」


「・・・・・・わかった。じゃあ今回の旅は、昔みたいに戦闘メイドとして働いてもらうかな。」


「はい、ご主人様♪」


そう答えると、クレアはにこやかに笑った。うん、普通に可愛い。


【マスター、そういう趣味がお有りなのですか?ちょっと引きました。】


いや違うから。


【ですが、子持ちの妻にメイドの格好をさせるとか、そう言った方向の趣味を持っているとしか・・・・・・】


アイなら俺の心読めるんだから、そんなわけ無い事ぐらい分かるだろうが。


【バレました?】


当たり前だ。

ふざけていないでさっさと行動を始めるぞ。


【yes,master】





フィーナ・フォン・ファルティオン、名前はもちろん把握している。現ファルティオン国王の妹で、国王が最も信頼していると言っても過言ではない人物だ。

そして彼女は亜人の一種、吸血鬼族の人間だ。


吸血鬼族がどのような人種なのか、正直なところ俺はよく知らない。理由としては、単純に数が少ないからだ。俺が把握しているこの世界の吸血鬼は、ファルティオン王家姉妹だけだったりする。探せば他にも居るかもしれないが、それほど数が少ないのだ。


そんなわけで、俺は吸血鬼の情報を集めつつ、ハーンブルク領の今後について改めて考えた。あっという間に時間だけが過ぎていき、ついにその日がやって来た。

仮の滞在場所にしてあったパラス王国の旧王都を出発した俺は、そこから真東へと進み待ち合わせの場所を目指して進んだ。

ちなみに、今日までの間にあらゆる面倒事は片付けており、俺は万善の状態で交渉に望む事ができた。


クレアのおかげで仕事が捗った・・・・・・


【・・・・・・】


冗談だって。


【私はまだ何も言っていないですよ?】


でも言いたそうな顔をしてたじゃん。

ごめんって。


【まぁそんな話は置いといて、何やら手厚い歓迎のようですね、マスター】


呼び出したのは向こうなのにな、どうしたものか・・・・・・


交渉が行われると思われる小さな建物を見つけた俺は、ゆっくり歩いてそこに向かっていた。

メンバーには俺、クレアの他に20名ほどのSHSメンバーを連れており、中々に大人数でやって来たわけだが・・・・・・

目的の小屋まで50mほどに差し迫った所で、ファルティオン王国兵と思われる亜人達に囲まれてしまった。

彼らの手には武器が握られており、クレアを含めSHSメンバーもそれぞれライフルのトリガーに指をかけた。


おいおい、部下に俺が今日ここに来る事伝えていないのか?


「皆さま、武器を下ろして下さい。」


すると、小屋の方から凛とした女性の声が聞こえた。その言葉を聞いた亜人達は、一斉に武器を下ろした。

なるほど、これは自分こそがファルティオン王国軍のリーダーであるという事を俺に伝えるためのパフォーマンスらしい。

そして彼女は、にこやかに笑いながら俺に挨拶をした。


「初めまして、レオルド・フォン・ハーンブルク様。私はファルティオン国王の妹、フィーナ・フォン・ファルティオンです。以後お見知り置きを。」


「どうもフィーナ殿、レオルド・フォン・ハーンブルク、人間の国のしがない領主だ。」


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どうでもいい話


どうも、しがない作家です。

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