第3話 side フィーナ2
「お姉様、残念なお知らせが届きました。」
「聞いております、例のパラス王国の事ですよね。」
「はい、その事です。ついに、戦争が始まったそうです。」
姉妹たちが住む国、ファルティオン王国にも戦争が始まったという情報はやってきた。戦場からかなり距離があるので、既に開戦から2か月以上経過したということになる。
私たちは、最近の悩みの種であったこの戦争が、ついに始まったという知らせを受けて、揃ってため息をついた。
「お姉様が、あんなにも強く訴えていらしたのにどうして・・・・・・」
「彼らを責めても仕方がないですよ、フィーネ。きっと、私の呼び掛けに背いてでも戦わないといけない状態になったんですよ。」
「お姉様・・・・・・」
ここ数日、お姉様は何とかして、パラス王国とガラシオル帝国間の戦争を回避できないかと、真剣に頭を悩ませていた。様々なパターンを脳内でシミュレーションし、最善の道を模索しようとしていた。
だけど、その苦労は全て水の泡になった。
どちらが先に攻撃したか、まだはっきりしたわけではないが、どちらにせよもう後戻りはできない状態になった。しかも、知らせが私たちのところに届くまでの間に、戦況はだいぶ変化しているはずだ。今頃は、どうなっているかわからない。
「本当なら、今すぐにでも援軍を送りたいところですが、今回はそうもいかないんです。」
「西方統一同盟が関係しているからですか?」
「えぇ、私たちが下手に干渉しても、戦争の拡大を招くだけです。かと言って、干渉せずにいればパラス王国は敗北へと追い込まれるでしょう。」
それは、お姉様が以前から懸念していた事だ。仮に、私たちファルティオン王国がパラス王国に対して武器支援などを行った場合、どのような事が起こり得るか。
まず間違いなく、パラス王国と親しい国はパラス王国に対する様々な支援を行うだろう。そしてそれに対抗するように、西方統一同盟の国々はガラシオル帝国を支援するようになる。
そうなれば、人類史に残る壮絶な戦争になる事が予想された。
「ですがお姉様、確かにお姉様が危惧する事も心配ですが、助ける事を渋った結果、東方亜人協商の結束力に傷をつけるのも危惧すべきではないでしょうか。」
「それもありますね・・・・・・」
お互いが最悪を想定して、それを回避するように動く、だからこそ起こる連鎖。私には、この連鎖を止めれそうになかった。
ハーンブルク軍の強さは、よく知っていた。
ゼオン獣王国を圧倒した兵器の質、技術、そして軍艦、ハーンブルク軍が参戦を決めれば、パラス王国など一瞬で滅んでしまうだろう。
「お姉様、やはり私たちファルティオン王国の参戦は避けられないのでしょうか・・・・・・」
「悲しいけれど、私たちが参戦しないわけにはいかないですね。」
「そうですか・・・・・・」
どうやら、戦争は避けられないようだ。私たちは、東方亜人協商の盟主として、パラス王国を放置する選択は取れなかった。
できる事といえば、ハーンブルク軍をはじめとした西方統一同盟が本格的に軍事介入する事を遅らせる事ぐらいだろうか。
でもそれは、先延ばしでしか無い。どちらかが倒れるまで、殴り合いが続くだろう。
こうなった以上、和平はほぼありえない。
だけど、可能性が完全になくなったわけでは無い。
「ではお姉様、一つお願いがあります。」
「フィーナのお願いなら何でも聞きますよ。」
お姉様は笑顔を作ると、微笑みながら尋ねた。だけどその顔には、少しだけ疲れが見えた。どうすれば戦争を回避できるか、最近は四六時中考えていたせいで疲れが溜まっているのだろう。
「私を援軍の総大将に任命して下さい。」
「フィーナ?」
「私は、ハーンブルク家当主レオルド・フォン・ハーンブルクとの対話、これしか戦争を止める手立ては無いと考えています。」
「それは・・・・・・」
「だからお願いします。私をファルティオン王国の代表として、送り出して下さい。」
私は真剣に訴えた。これは、ずっと考えていた展開だった。
お姉様が何かしらの奇策でこの危機を回避できたら良し、できなければこの身を差し出してでも戦争を回避する。これが、私の考え出した最終手段であった。
「貴女を失ったら、私は悲しいです。だから絶対に、生きて帰って来ると約束して下さい。」
「お姉様・・・・・・。絶対に生きてここに戻ってくると約束します。」
「わかりました。貴女を援軍の総大将に任命します。」
その翌日、私はお姉様に見送られながらファルティオン王国の王都を旅立った。
私のこの行動が、少しでも良い方向に転がるように。
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どうでもいい話
増える予感が・・・・・・
何とは言わないけど・・・・・・
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