第16話 祝福
「・・・・・・奮発したわね、レオルド。いったいいくらぐらい使ったのよ。」
結婚式当日、お気に入りのドレスに身を包んだイレーナは、結婚式場を目の前にして思わずそんな事を呟いた。
「う〜んと、領内予算の2%ぐらいかな。」
「はっ?!ちょっとそれって、私たちの一年分生活費よりも高額なんじゃ・・・・・・」
「ユリウスとカレンの思い出に残る結婚式になって欲しいからな。お金は惜しみなく使わせてもらった。貯めていてもあんまり意味ないからな。」
俺は肯定しつつ、これほどの費用を注ぎ込んだ理由を話した。領内予算の2%というのは、ざっとサッカースタジアム2000個分ぐらいだろうか。まぁ、後悔は一切していない、それどころか良い買い物だったとさえ思う。
【明らかな使いすぎですね、マスター】
経済を回したんだよ。
俺はこの世界で一番の金持ちだ(多分)。俺がお金を使って経済を回さんでどうすんだよ。
【お金の出所がマスターの資産からであった事だけが救いですが・・・・・・】
流石にハーンブルク領の税金は使って無いよ。
「ふふふ、レオルド様は優しいお兄さんですね。きっとユリウス様やカレンさんもお喜びになると思いますよ。」
隣を歩くヘレナは、俺をフォローしながらそう言った。妊婦という事で少し歩きづらそうにしていたが、そこは俺がしっかりと支えてあげていた。
「こらヘレナ、こいつのしている事を全肯定しちゃダメよ。すぐ調子に乗るんだから・・・・・・」
「別にいいじゃないですか、イレーナ。」
「もうヘレナったら、やたらとレオルドに甘いんだから・・・・・・」
イレーナは、少し呆れるように呟いた。するとすぐに、ヘレナのカウンターを放った。
「それは貴女もですよ。」
「・・・・・・まぁ否定はしないわ。」
「ふふふっ。」
「ちょっと、何笑ってるの?!」
「い、いえ、何でもないですよ。」
「もうっ!」
・・・・・・何というか、永遠に見ていられるな。
【愛されてますね、マスター】
いつもこんな感じのやりとりをしているが、内容はほとんどの確率で俺の事なのはいかがなものか、まぁ悪い気はしない。
*
「「「ご結婚、おめでとうございま〜す」」」
タキシードを着たユリウスと、純白のウェディングドレスに身を包んだカレンの新郎新婦は、多くの人々に祝福されながらこちらに向けて手を振っていた。
今回の結婚式には、ハーンブルク領やジア連邦共和国などの国々から多くの人々が参加していた。もちろん、俺の家族やジア連邦共和国の議員達は全員参加していた。参加人数だけを比べれば、俺の時よりも多いかもしれない。
既に、誓いの言葉や誓いの口付け、指輪の交換などは行われており、2人の左手の薬指には俺が作った美しい結婚指輪が輝いていた。
ユリウスの意向を汲んで、サイズは違うが同じアクアマリンが使われており、注目を浴びていた。我ながら、自信作だ。
そして今は、披露宴会が行われていた。
リアドリアの中で最も大きなホールを貸し切って行われた。
「改めて結婚おめでとう、ユリウス、カレン。幸せになれよ。」
「ありがとう兄さん。」
「ありがとうございます、レオルド様」
幸せでいっぱいの新婚夫婦は、このパーティー会場の中で最も位が高い俺の所に最初に来た。
俺がユリウスと軽く会話をしている間、ヘレナ達はカレンにお祝いを告げていた。
「こんにちは、カレンさん。ご結婚おめでとうございます。」
「ありがとうございますクレアさん。いや、お義姉さん、と呼んだ方がいいですかね・・・・・・」
「どちらでも嬉しいので、呼びやすい方でいいですよ、カレンさん。」
「では、お姉さん、と呼ばせていただきますね。」
「わかりました。王女様が私の妹になるなんて、人生何があるかわからないですね。」
未だに、その正体を隠したまま過ごしているカレンには、親が居ない事になっていた。そこで、クレアと同じようにこういう時に頼りになるアインの養子に一度なり、その上で結婚する事となった。
最初は、ジア連邦共和国内の優秀な人の養子になる予定だったが、本人がアインの養子になる事を希望した。理由を聞いたら、クレアがいるかららしい。
そんなわけで、カレンは亡国の王女から世界一の発明家の娘になった。
「少し、羨ましいですね・・・・・・」
「そ、そうね・・・・・・」
「私たちも姉妹に入れてもらうのはどうですか?」
ヘレナとイレーナの気持ちを汲み取ったユリアは、彼女達が食いつきそうな案を出した。
3人は顔を見合わせ合った後、頷いた。
代表して、ヘレナがカレンに話しかけた。
「私達も仲間にいれてくれませんか?」
「えぇ、いいですよ。皆んなで5人姉妹になりましょ。」
「賛成です!」
そして5人の姉妹は、嬉しそうに笑った。
「良い笑顔ですね・・・・・・」
「あぁ、俺たちでこの笑顔を守っていかなきゃだな。」
「ですね、兄さん。」
その様子を見ながら、俺とユリウスはこの笑顔を守る事を誓った。
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どうでもいい話
pc買っちゃいました。
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