第15話 新婚
「聞いたよ兄さん、前に話していた航空機がついに完成したんだって?」
「あぁ、結構前の話だけどな・・・・・・」
確か航空機のお披露目をしたのは2ヶ月ぐらい前だったはずだ。つまりそれだけ、ユリウスと最近会っていない事になる。
「そうかそう言えば、最近は会う機会が極端に減っていたな。」
「連絡なら、電信を使った方が楽だしね。言い方は悪いけど、会う必要が無くなったんだろうね。」
技術の進歩は、人と人の距離を大きく縮めた。今までは1ヶ月近くかけて進んだ道のりをわずか1日で移動する事ができるようになったり、遠く離れた相手と気軽に連絡を取る事が可能になった。
だか、その技術の進歩によって、ユリウスやファリア姉さんといった、シュヴェリーンの外に住む姉弟達と会う日が極端に少なくなっていた。
だけど今日は、ここに来る理由があった。
「忘れてた、まずはおめでとうだったな。」
「おめでとうございます、ユリウスさん、カレンさん。」
「ありがとう兄さん、ヘレナ義姉さん」
「ありがとうございます、レオルド様、ヘレナ様。」
いつもよりもだいぶ近い距離でくっつきながら、二人は少し照れ臭そうに答えた。
結婚を決めたのは、ついこの間だそうだ。元々は盟主の弟と亡国の王女という関係であった2人は、いつの間にか男女の関係になっていた。
あれだけ近くに一緒にいて、まぁ発展しない方がおかしいのかもしれない。
「いつかくっつくんじゃないかとは思っていたが、予想より遅かったな。」
レオルドは今20歳、1歳年下のユリウスは19歳であり、この国での婚期を考えれば少し遅めと言えた。だけど全然遅いわけではなく、むしろちょうど良いぐらいとも言えた。
「何処かのお兄さんが戦争ばかりやっていたせいでタイミングが無かったんだよ。実際、恋人になったのは結構前だよ。」
「ぐっ!お前、俺しか兄いないだろ。」
「あはは、バレた?」
【それを言われては、言い返せませんね。実際、彼らの協力があったからこそあのような壮大な作戦が立てれたと言っても過言ではありません。】
ユリウス達は、俺が思っていた以上によくやってくれた。主に、食料面でのジア連邦共和国はかなり大きかった。
そのお礼も込めて、俺は弟の結婚式を盛大に祝うと決めた。
「じゃあ早速結婚式の日程だけど、1ヶ月後の土曜日にリアドリアで、って事でいい?それともシュヴェリーンでやりたい?まぁ他の所でも良いけど・・・・・・」
「う〜んどうしよっか、カレン」
「シュヴェリーンで結婚式っての素敵だと思うけど、私はやっぱり
「うん、僕も結婚式をするならここがいいなって思ってた。お願い兄さん、難しいかもしれないけど、やっぱ僕はここで結婚式を挙げたいかな。」
2人は初々しく顔を見合わせながら、そんな事を言った。本当に、仲のいい新婚夫婦って感じだ。
俺の天使が、誰かの夫になってしまうのは少し寂しい気がしなくもないが、リアドリアなら2時間ほどで行けし、カレンなら信用もできる。
そして何より、俺もユリウスがサラージア王家の血を引くカレンと結婚すれば、ハーンブルク領とジア連邦共和国の繋がりがさらに強固なものとなる。まぁ、今のカレンは身分を偽りながら生活しているので、他の人は気が付かないがいざという時に良いカードになるだろう。
だから、俺もお母様も今回の結婚には賛成だった。
「人生でたった一度の晴れ舞台だ。盛大に楽しめるように用意してみせるよ。」
「お願いしますっ!兄さんっ!」
「お願いします、レオルド様」
「あぁ・・・・・・」
一体どのような結婚にしようか、他人の結婚式を計画するのは初めての事だが、きっと成功するだろう。
*
1ヶ月という月日は、あっという間に経過した。
俺は、ユリウス達に対して長期休暇を出して、ジア連邦共和国一周旅行に行かせた。新婚旅行という事で、存分に羽を伸ばして来いと言った。
リアドリアから鉄道で東に進み、ジオルターン、サックナを経由してリアドリアへと戻って来るルートだ。
とても楽しい新婚旅行だったと、御礼を言われた。
その間、ついにヘレナの身体に、妊娠の影響が出始めた。子供を作る決意をしてからおよそ3ヶ月と少し、激しいつわりに襲われ、苦しそうにする日々が続いたが、ユリウス達が戻って来た時にはある程度落ち着いた。
俺も、初めての経験であったためかなり慌てたが、そこは経験者であるお母様がしっかりと対応してくれた。
とりあえず俺は、栄養のあるものや前世の知識を活かして、妊婦に良い料理を作りまくり、ヘレナを労った。
そしてついに、結婚式の日がやって来た。
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どうでも良い話
今回は少し少なめでした。次話が最終話で、その次からは新章に入ります。
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