第10話 王妃

「やぁレオルド〜、親愛なる僕の義弟よ〜わざわざこっちに会いに来てくれるなんて嬉しいじゃないか〜」


「・・・・・・何でいんだよ。」


「何を言っていんだい弟よ。」


「お前こそ何言ってんだよ。」


ハーンブルク鉄道に揺られる事約1日、シュヴェリーンを出発した快速列車は、サーマルディア王国の王都サーマルへと到着した。

王都へと辿り着いた俺たちは、そのままサーマル内に放置してあったハーンブルク家の屋敷へとやって来たわけだが、面倒な先客がいた。


「何を言ってもいるんだいレオルド、呼び出したのは君だろう?」


「確かに、俺はお前を呼んだが、呼んだのは今日じゃねぇーよ。というか、俺が王城に行くって話だったろ?」


「あ〜そうだっけ、ごめんごめん、間違えちゃったみたいだ。」


「白々しい奴め。」


う〜む、相変わらずのウザさだ。どうやら腕は鈍っていないようだ。


【実は少し楽しんでませんか?マスター】


んな事、思ってねぇわ。


【男性のツンデレは需要ありませんよ。】


やかましい。


俺がアイと会話しているうちに、行動を共にしていたヘレナとイレーナのサーマルディア王国組はこのアホ王子と軽い挨拶をしていた。ヘレナとクルトは、同母兄妹という事もあり、仲が良い。イレーナとはそんなに仲が良いわけではないようだが、普通に挨拶はしていた。


本当は明日の予定であった話し合いを今日へと前倒しにし、このアホ王子を家の中へと招き入れる事にした。まぁこの状況で帰れと言ったところで、まともに帰ってくれるはずがない。

それに、少し気になる事もあった。


「護衛の数が少し多いな、何かあったのか?」


「っ!よく気付いたね、レオルド」


「昔から、気配を読むのは得意でな、半径100m以内なら何とかなる。」


「へぇ〜そりゃあ凄いね。」


本当は俺じゃなくてアイの力だけど、まぁ俺の力みたいなものだ。だから気がついた、今日は護衛の数がいつもよりずっと多い。ざっと100人はいるかもしれない。

護衛対象はおそらく、俺とこのアホ王子なのだろう。


「もちろん理由はあるんだろ?」


「うん、もちろんあるよ。」


俺が尋ねると、クルトは険しい顔をしながら現在の王都の様子と共に答えた。


「最近王都では、お父様が退位する可能性があるという情報が出回り、色々と騒ついている。そんな状況での君の入国だ、様々な派閥が君に注目している。万が一にも、サーマルディア王国の貴族が君の暗殺を企てたとなったら、ただ事じゃないからね。念のため、厳重な警備体制を整えさせてもらったよ。」


「なるほど、それで・・・・・・」


言いたいこと事はわかった。確かに、俺というカードはどの派閥にとっても、是が非でも欲しいカードなのだろう。そしてそれ以上に、敵の派閥に入って欲しくないと考えているだろう。

それに、クルトは言及しなかったが、俺の事をあまりよく思っていない者たちも数多くいるはずだ。

普段はバビロン宮殿にいるため手出しできない状況だが、今は王都におり、暗殺者達にとっては絶好の機会と言えなくもない。

流石に、そこまでの馬鹿はいないと思うが、用心はすべきだろう。


「じゃあそろそろ本題に入ろうか、僕にお願いしたい事があるって聞いたけど、何かな。」


「単刀直入に言わせてもらう。お前に、国王になってもらいたい。」


「っ!」


「予想していなかったわけじゃないだろ?」


「うん、頭の片隅で、もしかしたら、とは思ったよ。」


クルトはそう言うと、目頭を抑えながら考え込むように上を向いた。


「レオルド様、本当にクルトお兄様をサーマルディア王国の国王に推薦するおつもりなのですか?」


「あぁ、このまま俺たちが介入せずに静観を続けた場合、ほとんどの確率で次期国王はサルラックになり、ハーンブルク家はサーマルディア王国から除外される。」


「そんな・・・・・・」

「本気なの?レオルド」


具体的な内容を伝えていなかったヘレナとイレーナは、驚きの声をあげた。彼女達は、俺と出会うまでは王城で暮らしていた存在だ。2人とも、それぞれ思うところがあるだろう。


「あぁ、お父様からの情報だが、少なくとも現国王はハーンブルク家の独立を望んでいるそうだ。」


「お父上が?!何故そんな事をっ!」


「俺も詳しい理由は知らないが、他の貴族からハーンブルク家の除名を要求されたんだと思う。もしハーンブルク家が除名されたら、俺たちは新しく国を作らなきゃいけなくなる。」


国作りなんて、全体に面倒だ。考えなくてもわかる。

そのため俺は、何としても回避したいと考えた。


「と言うわけで、クルトには是非国王になってもらって、ハーンブルク家を除名すべきと主張する貴族どもをまとめて葬ってほしい。」


「いやいや、簡単に言うけどね、第一僕に味方してくれる貴族は少ないんだよ?正直、歩の良い賭けとは思えないね。」


「頼むよクルト。万が一ハーンブルク領が独立して国を作るって事になったら、国王は俺で、ヘレナとイレーナは王妃って事になるかもしれないんだぞ?」


「私が王妃、ですか・・・・・・」

「王妃・・・・・・」


「俺は国王なんてなりたく無いぞ。」


ちょっとお二人さん、王妃に憧れるのはわかるけど、辞めてね?


【少し揺らいでますね。】


おいおい。


「わかった。ハーンブルク王国が見てみたい気もするけど、可愛い可愛い義弟の頼みだからね、できる限りな事はやってみるよ。」


「よし。」


その後俺たちは、今後の事についての話し合いを始めた。


___________________________

どうでもいい話


ハーンブルク王国ルートも面白そうだな〜

(成立の可能性あり)

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