第4話 sideヘレナ8
ちょっとHなヘレナです。
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「こっちですよ、レオルド様〜」
「あ、あぁ・・・・・・」
私は、夫の手を引っ張りながらジオルターンの街を走る。様々なお店が立ち並ぶメインストリートを、私は彼と2人きりで駆け抜けた。
昔は人口1万人程度の小さな港町であったジオルターンは、今では70万人ほどの人々が暮らす大都市となっていた。様々な鉄道の終着駅にもなっており、今日も多くの人々がこの街を訪れていた。
長かった遠征が終わり、やっとひと段落つけるようになった。レオルド様が遠征中、ずっとシュヴェリーンでお留守番だった私への埋め合わせとして、今日は私がレオルド様を独占する日にしてもらった。
イレーナ達に行って来ますと告げた私たちは、今日はお昼過ぎから2人きりでデートの予定だ。
もちろん護衛はいるが、今日は特別に目立たないようにしてもらっている。デートを邪魔されたく無いからだ。
「ふふふ、どうですか?似合ってますか?」
「あぁ、似合っているよ。メガネ一つでこんなに変わるもんなんだな。」
「レオルド様も似合っていますよ。黒髪のレオルド様もかっこいいですっ!」
「ヘレナも可愛いよ、本当に。」
「ふふふ、ありがとうございます。」
私たち2人は、それぞれ正体を隠すために軽く変装をしていた。お揃いで茶色い伊達メガネをかけ、私はそのままで、レオルド様は髪の毛を黒く染めていた。
レオルドの紫色の髪は、西方統一同盟の盟主の証だ。この髪を見せるだけで、人々はその者がハーンブルク家の人間である事がわかる。
正体がバレるわけにはいかないので、髪色を私と同じ色に染めている。
「見てみて、レオルド様。新婚夫婦というより、兄妹みたいじゃない?」
「ははは、確かにそう見えるかも。」
鏡に写った私たちは、まるで兄妹のようにも見えた。なんだか不思議な感じだ。
良い事を思いついた私は、くるっとレオルド様の方を向くと、甘えるように抱きついた。
「ねぇねぇお兄ちゃん、お菓子買って〜」
「すぐそこにアイスクリーム屋があったはずだから、そこに寄るか?」
「うんっ!連れてって〜」
話を合わせていたわけではないが、今日は久しぶりにお互いに子供に戻って楽しむ事にした。レオルド様と歩幅を合わせながら、一直線にアイスクリーム屋を目指した。
「前に来た時と比べて、1つあたり600マルクから450マルクに値下げされているな。」
「お兄ちゃんがインフラを整備したおかげで、輸送費が減ったんだと思うよ。」
「鉄道関係は、俺じゃなくてユリアの担当だけどな。」
私は抹茶味で、レオルド様はバニラ味を注文し、2人揃って近くの公園のベンチに腰を下ろした。食べ歩きもいいが、こうして2人で会話を楽しみながら食べるのも悪くない。
「というかその口調、いつまで続けるつもりなんだ。」
「お気に召しませんでしたか?」
「まぁ嫌とは言わないけど・・・・・・」
「ふふふ、これからも定期的にやりましょうか?」
「き、気が向いたらな・・・・・・」
エリナお義母様に教わった上目遣いでレオルド様のお顔を覗き込むと、彼は少し照れながら視線を逸らした。
どうやら、満更でもないらしい。
レオルド様は姉2人、弟1人の4人姉弟で、妹という存在に慣れていないのだろう。私は心の中で、またやる事を決意する。
「気を取り直してレオルド様、夫婦らしく食べさせ合いでもしませんか?」
「あぁいいぞ。」
「じゃあいきますよ、あ〜ん。」
私が合図をすると、レオルド様は目を瞑って口を開けた。
自分のアイスを咥えた私は、口移しで彼の口の中に抹茶アイスを運んだ。同時に、思わず深くねっとりとしたキスをした。
「ちょ、おい。」
驚いた顔をする彼の表情がよく見える。
「私、ずっとお留守番だった。」
「ヘレナ・・・・・・」
全体重をかけて、彼を押し倒す。まだデートは始まったばかりだけど、私の心はもう既に限界であった。兄妹ごっこをして、気を紛らそうと思ったが、どうやらあまり効果は無かったようだ。
「ねぇ、もう一回、もう一回しよ?」
「ここ、公共の場だぞ。」
「いいからいいから、見せつけよ。」
再び顔を近づけると、彼の口に自分の舌を入れた。普段の私なら、絶対にしないような行動に自分でも驚きつつも、心の思うままに身体を動かす。
最初は、驚いた表情だったレオルド様も、少しずつ私を受け入れてくれた。お互いが求め合うような甘いキスをかわす。
息が続かなくなり、少し離れた私は、お留守番であった時に考えていた事を伝えた。
「ねぇあなた、私、私たちの愛の結晶が欲しい。」
「それって・・・・・・」
「アイちゃんを使って、出来ないようにしている事は聞いたよ。なら、もちろん逆もできるよね・・・・・・」
もしかしたら、私は面倒な女なのかもしれない。だけど、1年近く私をお留守番にさせたレオルドの方が悪い。きっとそうだ、そうに決まっている。
「まぁ、出来ない事はないけど・・・・・・」
「じゃあ決まりだね。早速作りに行こっ、あなた。」
「お、おい、まだ昼の2時とかだぞっ!」
「いいの、行こっ!」
時間なんて関係ない、私は私の気持ちを全力で彼にぶつけるだけだ。
これからも、戦力にならない私は、きっとお留守番となるだろう。だけど、愛の結晶ができればきっと、その寂しさが和らぐと考えたのだ。
その後、私たちはたくさん愛し合った。この時を、どれだけ待った事か・・・・・・
10ヶ月後が待ち遠しい。
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どうでもいい話
ヘレナのイラストは、サポーター限定近況ノートから見れたりします。
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