第3話 協商

「全て問題無し、か・・・・・・」


「レオルド様、そろそろ時間でございます。西方統一同盟の盟主として、この世界を平和へとお導き下さいませ。」


「わかった、それでは行くとするか。」


ゼオン獣王国との講和会議から、10ヶ月が経過した。戦争による特需景気も落ち着きをみせ、久しぶりの平和が訪れたハーンブルク領であったが、領内は戦争前と比べて大きな変化をみせていた。

まず、長らく計画されていたシュヴェリーンとジオルターンを繋ぐ長距離鉄道が開通した。鉄道の動力には、現在ハーンブルク領各地で注目を集めているディーゼル機関が採用され、同時に石油の価格が少し高騰した。西方統一同盟内の油田地帯のほとんどの利権を確保していたハーンブルク領は、各国にパイプラインを張り巡らせ、世界の石油価格をコントロールした。最初は、石油の真価を隠す方向で動いていたが、内陸部の油田地帯から沿岸部もしくはハーンブルク領に石油を運ぶコストが高すぎたので、公表して各国に協力体制を取らせた。まぁ、ヘイトは溜め過ぎない方がいい。


次に、シュヴェリーンとサーマルディア王国の王都サーマルを繋ぐ鉄道が誕生した。

シュヴェリーン級の大都市は流石に無いが、サーマルディア王国内には人口が10万人以上の大都市ならいくつか存在しており、それらを繋ぐ鉄道を作ったというわけだ。ほぼ全ての鉄道が、ハーンブルク領の4大都市であるシュヴェリーン、テラトスタ、ジオルターン、リバスタを終点としており、順調にその地位を高めていった。

他にも、ハーンブルク領から旧式の鉄道を購入するという形式で路線が誕生しており、西方統一同盟内の移動がかなり楽になった。


そしてついに、ラジオ放送の24時間制が始まった。以前までは、重要な伝達や時報、ニュース速報などに利用していたラジオ放送に番組が誕生した。

録音機能装置はまだ完成していないので、全て生放送であるが、ラジオを付ければ楽しめるという体制がスタートした。領民からの要望を取り入れつつ、サッカーの実況解説や、歌、演奏などの娯楽放送が行われるようになった。

同時に、ラジオ受信機の小型化が実現した。現代のラジオよりは大きいが、それでも家庭用としてラジオ受信機が発売された。

ちなみに、想像の数百倍の売り上げを叩きだし、物価が高騰してしまった事は今回の反省であった。


他にも様々な変化が起きたが、一つ大陸におけるパワーバランスを決定付ける大きな変化が起きた。それは、ガラシオル帝国を含む大陸内全ての人類国家が西方統一同盟への参加を表明した事だ。それだけではない、ヴァステリア共和国とゼオン獣王国の亜人国家の中でもそれなりの影響力を持つ2国が西方統一同盟への仲間入りを果たしたのだ。


「今日は集まってくれてありがとう、諸君。早速だが、先日行われた南方での戦争の結果から報告させていただこう。」


ジオルターンに『西方統一同盟』各国の代表を集めた俺は、パラス王国との戦争の報告会を行った。ユリウスのいるジア連邦共和国などから、少なくない食料支援を受けていた俺は、ハーンブルク領の代表として感謝を伝えると同時に、ゼオン獣王国で行われた講和会議の内容を正確に伝えた。

ちなみに、新規参入したこの3国は、次会から会議参加するという事で今日は不参加だ。


「もう既に耳に入っていると思うが、ガラシオル帝国、ゼオン獣王国、ヴァステリア共和国の3国が西方統一同盟への参加を表明した。そして、大陸北西部に位置する7つの国家から、西方統一同盟へ加入したいという打診が来た。」


この発表は、世界に衝撃を与えた。

まず、ヴァステリア共和国を通していくつかの国家や種族、民族から西方統一同盟の参加を打診された。特に、西方統一同盟と国境を接する国々の多くが、ヴァステリア共和国とゼオン獣王国に接近した。


「具体的な取り決めの内容はまだ決まっていないが俺としては加入を認める方向でいる。単純に仲間を増やしたいというのもあるが、俺は彼らの存在が人類と亜人の架け橋になってくれる事を期待している。いい加減、つまらない事で血を流し合う時代は終わりにしたいんだ。」


俺の発言に、各国代表は温かい拍手で賛同してくれた。


だが、俺の発言とは反対に、大陸中が戦火の渦に巻き込まれる前兆がポツポツと起き始めていた。


ヴァステリア共和国と親しい国々は、西方統一同盟に対して好印象を抱いたが、西方統一同盟の国境から遠い国々の多くは危機感を露わにした。

そして彼らは、新たな派閥を誕生させてしまった。名は『東方亜人協商』というらしい。表向きは加盟国間での貿易を自由に行おう、というものであったが、明らかに西方統一同盟に対抗するための組織であり、当然の事ながら軍事面での取引も行われていた。

『東方亜人協商』には、亜人国家の中で最大の国力を誇る『ファルティオン王国』を中心に20ほどの亜人国家が参加を表明した。

そしてその中には、パラス王国も含まれており、終わったはずの戦争は、静かに息を吹き返そうとしていた。


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どうでもいい話


居ないと思うけど大学受験生の皆様、前期試験頑張って下さいっ!

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