第2話 宴会

「いい天気ですね・・・・・・」


「あぁ、びっくりするぐらい良い天気だな。まるで台風が過ぎ去った後のようだ・・・・・・」


俺は、降水量の多いハーンブルク領では珍しい、雲一つない青い空を見上げながら、思わずそんな事を呟いた。つい最近までずっと遠征続きだった事もあり、久しぶりにハーンブルク領の空気を吸えた。ここにいるだけで、少しだけ心が楽な気がする。あとは桜が咲いていれば宴会としては完璧であったが、残念ながら季節が違うので桃色の花は見えない。


ハーンブルク軍の軍人達にも、交代で長期休暇を与えた。ここ最近は、戦争続きだったので、できるだけ楽をさせたいと思ったからだ。また、裏方として働いてくれたハーンブルク領の公務員やSHSメンバーに対してももちろんお休みを与え労った。


これで完璧かなと一安心したが、俺は大事な人たちの事を忘れていた。


【やりきった感を溢れさせている所申し訳ないのですが、何やら不満そうにしている方がまだ5名ほどいらっしゃいますよ。】


え?誰の事だよ。


【あちらに・・・・・・】


あ、あ〜確かに最近考えて居なかったわ。

言われて、すぐに意図に気がついた。確かに最近、ほったらかしとは言わないが、構ってあげられない日々が続いていた。というわけで俺たちは、家族でピクニックをしていた。

最初は、お嫁さん達5人+アイで行こうかなと思っていたが、お父様とお母様が加わり、8人での旅行となった。首都シュヴェリーンから北東からおよそ十数km、かつて戦争の舞台にもなった『ドレスデン』へとやって来ていた。

かつては、国境の守りの要としてハーンブルク領の中で最も堅い要塞の一つに数えられていたが、今ではその面影が全くと言っていいほど見られない、ただの観光都市となっていた。

この辺りは山岳地帯という事もあり、温泉だったり美しい光景だったりがたくさんあり、多くの観光客が集まっていた。


「はぁ〜もう10年以上経つのか・・・・・・」


「懐かしいですね、レオルド様。」


芝生の上で寝っ転がった俺の隣で、ピクニック用として持って来たランチパックを開けたクレアは、そんな事を呟いた。確かに懐かしい思い出だ、あの時はまだ初陣であった事もあり、凄く緊張したのを覚えている。


「懐かしいですね、皆様。」


「私もあの頃の事はしっかり覚えているわ。思えば昔から、貴方はずっと規格外だったわね。初陣から8倍の兵力差をひっくり返すんだから。」


ヘレナとイレーナの幼馴染コンビは、笑い合いながらクレアの作ったサンドイッチを美味しく食べていた。

話の種は、どうやら俺の事らしい。


「ふふふ、レオルドは昔から凄かったですよね。母である私も、昔から驚かされてばかりでした。」


「俺も昔から、驚く事の連続だったな。まさかこんなに若くして、家督を奪われるなんて思ってもいなかったぜ。」


「奪ったというよりは、押し付けたの間違いだろ?」


「はっはっはっ、確かにそうかもな。」


真っ昼間から、ハーンブルク領の中でも一、二を争う高級ワインをボトルで飲むお父様は、大声で笑いながらそう言った。


というか、どんだけ飲むんだよこのおっさん・・・・・・

昔、少しでもお父様の事をかっこいいと思ってしまった自分がアホみたいに思えてくる。


ちなみに、アルコールが入っているのはお父様とお母様とお嫁さん達たちだけで俺は飲んでいない。


「へ〜そんな事があったんですね〜ところでレオルド様〜私だけ置いてけぼりなんですけど〜」


俺まで酔ってしまったら、この酔っ払い達の面倒を見る人がいなくなってしまうからだ。特にユリアは、さっきからお父様と同じぐらい飲んだいた。


「私も構って下さいよ〜レオルド様〜」


「大丈夫だよ。ユリアとの思い出は、これから一緒に作って行こっ」


「れ、レオルド様・・・・・・」


優しく抱きしめてあげると、ユリアは珍しくだらしない顔をしながら俺の胸に頭を擦り付けて来た。どうやら、俺たちがユリアと出会う前の話で盛り上がっていた事に不満を持っているのだろう。俺は、そんな可愛いお嫁さんの頭を優しく撫でる。

他のお嫁さん達の視線に気付いていないフリをしながら彼女をあやしていると、不意にお父様が立ち上がった。


「よ〜し、それじゃあレオルド、俺と模擬試合でもしようぜ。」


「え?」


「模擬戦だよ模擬戦、ここは親子水入らずで語り合おうぜ、剣で。」


・・・・・・一体どういう思考回路をしたら、俺と模擬試合をするという行動に移るのか、疑問しか出てこない。きっと、アルコールのせいで馬鹿になっているのだろう。いや、何なら元からかもしれない。

だけど、誘われた以上、応えるのが筋というものだろう。

俺は立ち上がると、お父様に向けてこう言った。


「いいよ、久しぶりに本気でやろうか。」


「面白くなって来た〜」


「「「頑張って〜」」」


お母様やお嫁さん達からの熱い声援が、俺とお父様の意識を覚醒させ、集中力を高める。


「あ、言っておくが、魔力を使うのとアイに助けを求めるのは反則だからな、じゃあ始めっ!」


「え?あ、ちょっ!」


「はっはっは〜、どうした?お前の力はこんなものか〜?」


「やってやるっ!」


その後、日が暮れるまで、俺達はぶっ通しで楽しんだ。お父様と戦ったあとは、お母様、イレーナ、ユリア、クレア、アイともそれぞれ戦った。

ちなみに、魔力とアイを封じられた俺は、ほぼ全員に負けた。


______________________________

どうでもいい話


いつか言おうとしていた設定


魔力とアイが無いレオルドは貧弱。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る