第11話 加入
レオルドと獣王の対話は、亜人語で行われております。
より、物語に没頭したい方は脳内変換しながら、お読み下さい。
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ゼオン獣王国軍の動きが止まった。
勢いに乗る彼らであったが、ゼオン獣王が決闘に敗北した事を知ると、兵士達は次々と投降した。
断る理由の無いハーンブルク軍はそれを受け入れ、およそ7万の兵士がそのまま捕虜となった。ちなみに、約2ヶ月にわたる戦争の結果、ゼオン獣王国は2万5000人、ハーンブルク軍も2000人ほどの死傷者を出す結果となった。
また、ゼオン獣王国軍の降伏を受け、北方のパラス王国軍は撤退した。ただでさえ、ハーンブルク軍の軍事介入によって劣勢に立たされていたのにも関わらず、ゼオン獣王国軍が降伏したとなれば、勝ち目が無いと判断したのだろう。
同時に、他の地域のパラス王国軍は進撃を止めた。しかしこちらは撤退する気が無いらしく、その場に居座ったままであった。
「パラス王国の動きが読めないわね・・・・・・」
「そうか?話は意外と単純だと思うぞ?」
「と、言うと?」
あの決闘の翌日、すっかり元気になったイレーナを交えて、俺たちは今後の作戦について考えを共有するために地図を囲んだ。
「奴らは、こっちが交渉のテーブルを用意するのを待っているんだ。今この場で交渉が始まれば、ガラシオル帝国の東部の大半はパラス王国が実効支配している事になっているから、交渉で有利に立てる。確信はできないが、おそらくこんな所だろ。」
「それはちょっと、楽観的すぎるんじゃないかしら?」
戦争とて、外交手段の一つだ。話し合いで解決できるなら、それに越した事はない。
パラス王国が戦争を仕掛けた目的は大きく分けて2つ。
1つ目は、相手は人間の国家だからだ。つまり感情論から、戦争を望んだという事だ。
そして2つ目は、経済的な成長を期待したからだ。他国から支援を受けてでも戦争をしたい理由、それはガラシオル帝国の広大な領土と進んだ技術を手に入れようと考えたからだ。それさえ獲得できれば、国にとってプラスになると判断したのだ。
実際、技術を盗む事ができれば、それは大きなアドバンテージだ。まだ技術が発達していない亜人国家に対して売れば、ボロ儲けする事ができる。
だが、この時彼らに新たな選択肢として交渉が生まれた。例えガラシオル帝国を滅ぼせなくても、ハーンブルク領と交易を結べる事ができるようになれば大きなメリットになる。
「多分だけど、パラス王国はそろそろ限界なんだよ。アホみたいに戦争を長引かせているからな、戦費が膨れ上がっているはずだし・・・・・・」
「だからそう考えたのね、納得したわ。」
つまり、領土を拡大させる事に成功した彼らは、これ以上攻め込む意味を失ったのだ。
後は、時間稼ぎさえすれば何とかなる、そう判断したのだ。
「この事を鑑みると、俺たちが取るべき手段は一つしかない。」
【それはずばり、ゼオン獣王国をこちら側に引き入れるという作戦です。】
隣に座るアイは、周りの将校達に説明しながら、今後の展開を伝えた。世界や人類と亜人のバランスを考えれば、これが最も楽で正確な提案であった。
全員に、作戦を共有する。
「この方針で行こうと考えているが、何か質問や心配事はあるか?」
「無いわ。」
「無いです。」
「ありません。」
「じゃあ、これで行こう。」
「「「了解っ!」」」
*
ハーンブルク軍は、撤退を始めた。
もちろん、パラス王国への妨害工作はこれからも続ける予定だが、ハーンブルク軍が表舞台に立って戦争をする事はもう無いだろう。
弾薬などを残さず回収を終えた部隊から順に、輸送船に乗り込んだ。
そこから彼らは、バケツリレー方式で『デュークス島』や『トモタカ』を経由して本国へと向かう事となる。
「戦争は終わったのか。」
「えぇ、貴方が倒れた直後、周囲にいた貴方の部下が全体に停戦命令を出しました。」
「そうか・・・・・・」
決闘から2日後、今日まで気を失っていた獣王がやっと目を覚ました。傷はかなり深かったが、アイのコントロールされた斬撃と治療があったため死に至る事は無かった。
その日は一日お休みを与え、翌日ついにハーンブルク領とゼオン獣王国の間で、講和会議が行われる事となった。
「何か言いたい事はあるか?」
「我らは敗軍の将、覚悟は既にできております。」
「そうか、では要求を言おう。」
どうやら獣王は、既に覚悟を決めていたようで、俺から一切目を逸らさずにこちらを見つめていた。
獣王の後ろに控える戦士達も、取り乱すような事はせず、ただじっとこちらを見ていた。
そして俺は、おそらく彼らが想像していなかったであろう内容を提案した。
「ゼオン獣王はそのままゼオン獣王国の国王を継続してもらおう。そして、ゼオン獣王国には、西方統一同盟に加入してもらう。」
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どうでもいい話
あれ?章が終わるんじゃ・・・・・・
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