第12話 sideエリナ9
「エリナ様、レオルド様より電報が届きました。」
「読み上げて下さい。」
「わかりました。」
同じお留守番組であるヘレナと共に、ハーンブルク領の本土を統治していた私の元に、私の自慢の息子でありハーンブルク家現当主であるレオルドから、連絡が来た。
一旦手を止めて、報告を聞く。
「ゼオン獣王国はハーンブルク領に対して降伏し、戦線から離脱。獣王との講和会議の結果、手筈通りゼオン獣王国の西方統一同盟への加入に成功した。ヴァステリア共和国の使節団との交渉が終わり次第帰国する。との事です。」
「内容はそれだけでしたか?」
「は、はい。間違いありません。」
報告を聞き終えた私は、手に持っていた紅茶のティーカップをゆっくりと地面に置いた。私たちは張り詰めていた肩の力を抜きリラックスした。
「相変わらず、大事な部分の報告が抜けておりましたが、どうやらあの子は無事のようですね。」
「ふふっ、レオルド様らしいですね。」
戦勝報告も嬉しいが、何より嬉しいのはレオルドとイレーナが無事であったという報告だ。何も言って来ないという事は、無事なのだろう。
不安が大きかった分、安堵感も大きかった。
特に今回は、レオルドや私の計算違いもあり、その対応にかなり苦戦した。ガラシオル帝国へ援軍として派遣された兵士達がピンチという報告を受けてすぐさま物資を武器支援を行ったり、想像よりも戦争が長引いているという話を聞いて、防寒具を送ったりした。
12時間毎に定期連絡は受けていたが、心配であった事は確かだ。
「広告庁に、戦果を公表するように通達して下さい。それと、兵士達が帰って来る事を考えて、やるべき事を各自で行うようにお願いします。」
「承知致しました。」
過去に行ったどの戦争と比べても、今回の遠征はまず間違いなく最も過酷なものだった。
少なく無い戦死者や重傷者を出し、大量の武器や食料を消費した。
戦争は、ハーンブルク家が単独で行ったものでは無い。同盟国であるジア連邦共和国やエルフ共和国、ハーンブルク領に所属する様々な企業や商会などからの多大な支援を受けていた。
それに対する御礼や兵士に対する給料も払わなくてはならない。他にも、活躍した将校へ勲章を授与したり、パーティーに招待したりと、やらなきゃいけない事はたくさんある。
「レオルドが戻ってくるのはまだ先の話となると思いますが、他の兵士達は帰ってくるようなので、歓迎の準備を進めましょうか。」
「「「了解っ!」」」
私の声に、その場にいた全員が頷いた。
そして、部下達が出て行くと、私とヘレナだけが残った。
「あの長かった戦争が、ついに終わるのですね・・・・・・。」
「えぇ、あの子の話では、ゼオン獣王国に他の亜人国家との交流の窓口になってもらうそうです。これにより、私たちと亜人達の間に交渉という手段が生まれました。まだ、文化交流や意識改革など、やらなければならない事は多いですが、確実に良い方向に向かっていると思いますよ。」
やらなければいけない事は、確かに多い。だけどそれ以上に、なんだか楽しい未来が待っているという予感があった。
明日を楽しみと思えるような生活にしたいものだ。
「また、忙しい日々が戻って来そうですね。」
「ふふふ、そうですね。」
私たちは、レオルド達が帰って来る事への喜びを共有した。
*
「レオルド様〜っ!」
「イレーナ様〜っ!」
「ハーンブルク領万歳っ!」
レオルドとイレーナ率いる第一艦隊以外の艦隊が帰還してから数ヶ月が経過した。予想よりも少し長くなったが、ついに今日彼らが帰って来た。
今や、世界最強の無敵艦隊という呼び声もある、ハーンブルク海軍第一艦隊は、堂々とテラトスタ軍港へと帰港した。
噂を聞きつけた、多くの領民がテラストタへと駆けつけ、改めて終戦を祝った。
レオルドは、お留守番していたヘレナと先に帰って来ていたクレアとユリアに囲まれながら、久しぶりの愛する人達との再会を喜んでいた。
4人全員とハグをしながら深いキスをすると、今度は一歩引いた所で待っていた私のところへとやって来た。
「ただ今戻りました、お母様」
「おかえりなさい、レオルド。」
キスはしなかったが、私もレオルドとしっかりとハグをした。久しぶりの息子の匂いに、安心感が溢れた。
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どうでもいい話
次回はおそらくヴァステリアとの話し合いになります。時系列が前後します。
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