第2話 歓迎

「何だ、出迎えは無いと思っていたが、思った以上手厚い歓迎じゃないか。」


【読みが外れましたね、マスター。】


最近ハーンブルク領で人気のホワイトチョコをかじりながら俺の相棒は呟いた。

というか何処から持って来んだよそれ・・・・・・


【航行中、敵の海軍と接する機会が無かったのは、このためなのでしょうね。】


行方がわからなかったゼオン獣王国の海軍がここにいたのは、悪く無い知らせだ。

知らない間に、ハーンブルク領の都市や軍港を攻撃されるよりはずっとましだ。今のうちに船を潰しておけば、相手の行動を制限する事もできる。


「いかがいたしますか、レオルド様」


「迷うな・・・・・・」


余計な海戦をせずに、ゼオン獣王国に上陸作戦を仕掛けたいという気持ちもあるが、ゼオン獣王国の船をそのままにするのもあまり美味しくない。


【ここは二手に別れましょう、マスター。幸いこの艦隊には、陸上を専門とした部隊と水上を専門とした部隊が乗艦しております。速やかに橋頭堡を確保し、現在運用可能な全陸上部隊を送った後、海上部隊だけで付近の敵艦隊を片付けましょう。】


「よし、それで行くか・・・・・・全員聞いたな、敵艦隊を牽制しつつポイントEに強襲上陸を行う。全員準備しろっ!」


「「「了解っ!」」」


俺の指示で、第一艦隊と第四艦隊の乗組員達は全員行動を開始した。

おそらく今頃、ゼオン獣王国の守備隊は大慌てだろう。自国の軍隊が攻めに行ったと思ったら、とんでもない数の軍隊が攻め込んで来たのだ、きっと対応に追われているだろう。


さて、今回の作戦はとても簡単だ。

主砲や副砲を撃ちまくって、上陸部隊を送り込むだけ。ちなみに俺は今回、この戦争における唯一の敗戦要素を潰すために、上陸部隊の一員として地面に足を踏む事になっている。


【A班そのまま。B班、10の12。C班、7の-6。D班、-15の20。】


「「「了解」」」


アイは、少し怠そうな様子で砲手達へと指示を出した。船速や風向などを計算し、それぞれに完璧な指示を出していく。

命中率は95%ほどであるが、第一艦隊と第四艦隊の計12隻から与えられる砲撃を全て計算した上で、適切な指示を出していく。

今までは、アイが俺を経由して指示を出していたが、最近はアイが直接指示を出している、そちらの方が効率が良いし楽だからだ。


【最初からこうしておけば良かったのですよ、マスター】


・・・・・・まぁ確かに否定はしないけどね。

でも、指示を出すのはこの中だけにしろよ。お前の存在は、まだ一部のエリートしか知らないのだから。


【わかっていますよ。私はどんな時でもマスターを裏から支え続けます。】


ほんと、俺にはもったいないぐらい頼もしい相棒だな・・・・・・

俺は、部下達に軽く指示をしながら、心の中でアイと会話をする。アイの並列思考の凄さが良くよくわかる。

そして、そんな事を考える暇があるほどハーンブルク海軍には余裕があった。

ハーンブルク海軍とアイのコンビネーションは脅威的で、スペインの無敵艦隊も真っ青になるレベル命中率を出し続けた。


それによって、敵海軍の中から逃亡兵が出始めた。船の上にいると、砲撃の格好の的となってしまう事に自覚した彼らは、次々と海へと逃げていった。幸い、ここは岸が近いので溺れ死ぬような事は少ないが、その分だけ戦力が削がれていく。

そして、前が開けば・・・・・・


「そろそろだな・・・・・・マウントシリーズの富士、北岳、穂高の3隻に対して出撃命令を出せっ!同時に、レインシリーズと黒船は揚陸部隊のカバーを行いつつ前進、風穴をこじ開けろっ!」


「「「了解っ!」」」


俺の指示で、今か今かとその時を待っていた全揚陸部隊が上陸を開始した。俺が上陸目標地点にしたポイントEは、比較的遮蔽物が少ない砂浜で、上陸にするにはもってこいの場所であった。


「座礁には十分気をつけろよっ!」


「「「はいっ!」」」


どんどんと上陸に成功し、海岸線沿いにいた防衛部隊は壊滅状態となった。ハーンブルク軍の勢いは止まる事を知らず、次々と蹂躙していった。ハーンブルク軍は大隊ごとに攻撃を開始し、この初撃だけで1万近い死傷者と捕虜を獲得した。


また、付近の村や街も占領したが、そこの町民や村民は既に逃げた後であった。


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どうでもいい話


ちょっと少なめでした。次話は多分長くなります。

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