第10話 支援
「さて、今のままだと圧倒的に人も時間も足りないわけだけど、やっぱりガラシオル帝国としては焦土作戦しか無いんかね。」
数日後、ハーンブルク領の主だったメンバーを呼び寄せた俺は、大陸南西部全体の地形図を見せながら、会議を行った。
それぞれが持ってきた情報や作戦なんかを照らし合わせながら、何が最善なのかを話し合った。
「国境沿いを流れる河、その少し西にある山脈で防衛するしかないんじゃない?」
「ま、そうなるだろうね。今まではガラシオル帝国側が優勢だったけど、同じ亜人国家から支援を受けたとなれば、話は変わってくるだろうな。」
新たな情報として、同じ亜人国家である
『ゼオン獣王国』
『神聖チータ帝国』
『ヴァステリア共和国』
から同じ亜人国家であるパラス王国に対して食糧支援と武器供与が行われている事が判明し、ガラシオル帝国側は一気に劣勢に立たされた。このような支援があった原因として、アイはこのように判断した。
【十中八九、ハーンブルク家の躍進と西方統一同盟の誕生が原因でしょう。特に、ギャルドラン共和国と距離が近い『ゼオン獣王国』と『神聖チータ帝国』は危機感を感じていると考えます。どちらが持ち出した話かは分かりませんが、今後人類側との決戦があると考えたこの3国が援軍を送っても不思議ではありません。】
まぁ、近い将来俺たちと戦うかもって考えたこの3国が、打倒人間のためにパラス王国に対して支援してもおかしい話じゃないんだよな。
【その通りです。そして、ここ最近のパラス王国の劣勢も原因の一つだと考えます。ガラシオル帝国の皇帝が変わってから、帝国は一気に前線を押し上げており、このまま行けば海に面していないのに海軍があるという残念な国が誕生してしまうかもしれません。】
前世でもあったぞ、それ。
【実際、リトア王国が同じような状況ですけどね。】
まぁでもあの国は、海軍が必要なぐらい大きな河があったので仕方ないと思うけど・・・・・・
「というわけで、裏方から支援だけしてても勝てない、かと言って話し合いによる解決も不可能な状態になり始めている事は全員わかったと思う。そこで、俺たちも行動を起こす必要がある。」
「それは、本気で行くって事でいいのよね。」
俺の説明を聞いたイレーナは、確認するように尋ねた。
結婚後も、イレーナは第一線で活躍しており、ハーンブルク軍における参謀長の地位についている。
実質的な軍のトップは俺だが、名目上のトップはイレーナだ。
「あぁ、ただ最初からじゃない。あくまでガラシオル帝国からの支援要請を受けてからだ。それまでは、いつものように裏方に徹するつもりだ。」
「ハーンブルク軍お得意の、いいとこ取りをするって事ね。」
「褒めているのか?それ。」
「褒めているわよ。」
「まぁいいや。で、具体的な話に移るけど、参戦要請を受けるまでー『フェイズ1』での行動と、要請を受けた後ー『フェイズ2』での動きを話し合いたいと思う。」
イレーナの言葉をスルーしつつ、俺は議題を全体と共有した。今のところ得ている情報と今後の予測などを話す。
全て話し終えると、少し遠いところに座っていたお母様が珍しく口を挟んだ。
「今回の戦争は、今までのような直接ハーンブルク領に影響があるものではなく、人間と亜人の勢力争いと言ってもいいかもしれません。下手をすれば、大陸東側に住む全亜人から恨まれる存在になってしまうかもしれません。その事を考えた上で行動してほしいと考えております。」
お母様は、会議室にいた全員を見回しながら言った。その言葉は重い。
誰も何も言えなくなってしまったからか、お母様は俺に話を振った。
「レオルド、最終的な目標も共有しておいた方が良いのではないですか?」
【目標を明確にして、全員の足並みを揃える事は大切です。今ここにいるメンバーに隠す必要はないので、言ってしまっても問題ないと思います。】
俺がどうしようか考える前に、アイからアドバイスが飛んできた。俺も同意見だったので、お母様に返事をしつつ、発表した。
「今のところの最終目標は、大陸の中央部に位置する国ーゼオン獣王国の占領だ。」
俺がそう告げると、会議室内が騒めいた。それぞれは、事前に配られた資料に目を通しつつ、ゼオン獣王国占領の意味を考える。
すると、その内の1人が代表して尋ねた。
「どうしてこのようなところを?」
「あそこは、俺たちがいる大陸の北側とガラシオル帝国なんかがある大陸南側を唯一陸路で繋ぐ戦略的重要地だからだ。抑えておけば、今後かなり優位に立ち回れる。」
「ですが同時に、かなり防御が厚いところなのでは?」
「その通りだ。だから作戦としては、戦争の混乱に乗じて、ゼオン獣王国に強襲上陸し、一気に占領するという作戦を行う。まぁ、それまでのプロセスが上手く行ったら、だけどな。」
「なるほど・・・・・・」
【亜人の知能指数がどのぐらいかはわかりませんが、ゼオン獣王国領の重要性に気づいていない者はいないと考えられます。そのため、入念な準備と計画が必要になります。決して容易ではないでしょう。】
現在ハーンブルク家が直接動かせるのは、ハーンブルク軍6万とジア連邦軍4万のみだ。
場合によっては、西方統一軍も動かせるが、その場合ギャルドラン共和国と国境を接しているヴァステリア共和国との全面戦争に発展する可能性があるので今回はあまり期待できない。
西方統一軍には、国境付近でヴァステリア共和国を引き付ける役割を担ってもらう予定だ。
「全員気を抜かないように。」
「「「了解っ!」」」
そして俺たちは、今後のハーンブルク領の動きを決定した。
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どうでもいい話
相変わらず微妙なところで第1章が終わりそうな予感
まぁ私らしくていいか。
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