第7話 sideアキネ2

ハーンブルク領の南、海を挟んだ大陸南西のガラシオル帝国とパラス王国の国境沿いでは、今日も血で血を洗う戦争が続いていた。


戦争が始まった原因を正確に覚えている者はもういないだろう。


最初は、簡単な小競り合いからであった。



それがいつの間にか、人間と亜人という絶対的な違いを名目に終わらない戦争が始まった。


争いが争いを呼び、かつては複数の国々が乱立していた大陸南西側では、ガラシオル帝国とパラス王国という2大強国が誕生させていた。


何度か休戦協定が結ばれるものの、いずれも終戦には至らなかった。


そして今では、殺した殺されたの憎悪から戦争が行われているに等しい状態であった。



『亜人のくせに』

『人間の分際で』


戦い、殺し、殺され、憎み合う中で生まれていく差別。


誰にも止めることのできない悲劇の連鎖であった。





「お初にお目にかかります、ガラシオル皇帝殿」


「うむ、ようこそ我が帝国へ、使者殿」


レオルドが弟ユリウスの下へ遊びに出掛けている間、ハーンブルク領からの使節団がガラシオル帝国の首都『ベネサ』へと訪れ、ガラシオル皇帝との面会を行なっていた。

ハーンブルク家からは、じゃんけんで勝ったアキネを中心とした使節団が第4艦隊の計6隻と共にベネサを訪れていた。

ハーンブルク海軍の軍艦は、大きさと迫力の両方でベネサ周辺停泊していたガラシオル帝国の軍艦を上回った。

そんな事もあってか、ハーンブルク家からの使節団は決して下に見られる事なく、ガラシオル皇帝と面会する事ができた。両陣営の代表はそれぞれ武器を装備した上で、会議が行われた。


「まずは手土産として、ハーンブルク領産の塩と砂糖を大量にお持ちいたしました。」


「其方らの塩や砂糖は、我が国で採れる如何なるものよりも質が良い聞いている。言い値で買わせて頂こう。」


「ありがとうございます。ですが、本日お持ちした分のお代はけっこうでございます。ガラシオル帝国内の商人のために持って来たのではなく、ガラシオル帝国とハーンブルク領の友好関係を深めるためにお持ちしましたので・・・・・・」


「そうか、ならば、ありがたく頂こう。」


「わかりました。」


レオルドの方針で、使節団が黒船に積んでいた大量の物資のほとんどは、ガラシオル帝国に無償で譲渡する事となった。

理由はもちろん、代金よりも友好関係を優先したからだ。

戦争が続き、弱体化しているとはいえ、ガラシオル帝国は大国だ。陸続きであればギャルドラン共和国を圧倒できるだろう。まぁ、今のギャルドラン共和国は西方統一同盟の一国なので、戦争となれば統一軍やハーンブルク軍が軍事介入するので勝ち目はほぼ無いが・・・・・・


また、もちろんハーンブルク側から見ても、ギャルドラン王国は決して無視できる存在では無かった。

ガラシオル帝国は、大陸南西部における唯一の人間の国家であり、ガラシオル帝国が敗北した場合、ハーンブルク領を含む西方統一同盟の国々は、すぐさまこれに対する対策をしなければならない。


そしてもう一つ、ガラシオル帝国には無視できない点がある。それは、鉱山資源だ。

SHSの調査チームの報告では、巨大な油田こそ無いものの、ガラシオル帝国領の特に西部の方には沢山の鉱石が埋蔵されていると考えられており、これらの資源をより多く確保したいと考えたためハーンブルク家が動いたと言っても過言ではない。

大陸西側のほぼ全ての資源を必要となれば独占できる状況にあるハーンブルク家であるが、市場と資源の確保は多ければ多いに越した事はない。



簡単な挨拶をしつつ、まずは簡単な小話から入る。亜人や戦争の話は避け、お互いの気が休まるように努める。

そして、少し議論が進んだ段階で本題へと入った。


「では、そろそろ本題へと入りましょうか。」


「うむ、そうしよう。ガランダ、あとは頼む。」


「かしこまりました。」


ガラシオル帝国の合図で、背後に控えていた20代ぐらいの若い男がガラシオル皇帝の隣に座った。

黒く短い髪に、眼鏡越しに見える黒い目、そして全身真っ黒い服を着た彼は、堂々とした様子で構えた。


「どうも初めまして、ガラシオル帝国において宰相の座についております、ガランダと申します。どうぞお見知り置きを。」


「丁寧な挨拶をありがとうございます。ハーンブルク家直属諜報部隊SHS所属のアキネと言います。こちらこそよろしくお願いします。」


丁寧な挨拶をされたので、こちらも丁寧に返す。私は目の前に座る男からオーラを感じとり、何となく身構えた。


「今回、ハーンブルク領の方々と正式に会談を行いたいと思った理由は1つしかありません。それはずばり、大規模な武器の輸入を行いたいと考えているからです。私はあまり品質については詳しくないのですが、塩や砂糖と同様でハーンブルク領産の鉄は我が国で作られたどの鉄よりも良質であると聞き及んでおります。そのため是非とも、我が国に輸入していただけないでしょうか。」


「なるほど、それはこちらとしてもありがたい話ですね。鉄ならば、現在輸出規制はかけられていないので、可能だと思います。どのぐらいの規模を想定しておりますか?」


「そうですね、多ければ多いほどありがたいですが、以前送って頂いた鉄剣が10万本分ほどあると助かります。もちろん、送料についてはこちらが出させていただきます。」


「船で輸送しなければならないので一度に全てとはならないかもしれませんが、それぐらいであれば十分可能です。」


私は、ハーンブルク側の利益を計算しながら答えた。すると、表情が少し緩んだガランダは、笑顔で話を進めた。


「ならば前回同様物々交換といきましょうか。あなた方の要求は、以前と同様でよろしいですか?」


「お願いします。」


「わかりました、では次の話題へと参りましょうか。」



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どうでもいい話


これ以上嫁を増やすか否かの問題に突入、

増やした方が物語としては面白くなりそうだけど、キャラ管理がね大変すぎる。

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